宅建業法 実戦篇

宅建業法の過去問アーカイブス 平成14年・問44 小問集合

営業保証金・みなし宅建業者・50条2項の届出・報告


次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成14年・問44)

1.「営業保証金の供託は,金銭のみならず,一定の有価証券をもって行うこともできるが,営業保証金の不足額の供託は,金銭により行わなければならない。」

2.「宅地建物取引業者が廃業届を提出し,免許の効力を失った場合であっても,その者は廃業前に締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては,なお宅地建物取引業者とみなされる。」

3.「宅地建物取引業者 (国土交通大臣免許) が,宅地建物取引業法第50条2項の規定に基づき業務を行う場所の届出を行う場合,その所在地を管轄する都道府県知事を経由しなくても直接国土交通大臣に対して行うことができる。」

4.「宅地建物取引業者 (甲県知事免許) が,乙県内で宅地建物取引業をいとなんでいる場合,乙県知事は,取引の業務について必要な報告を求めることができるが,当該宅地建物業者の事務所に立ち入り,帳簿の検査をすることはできない。」

【正解】

× × ×

1.「営業保証金の供託は,金銭のみならず,一定の有価証券をもって行うこともできるが,営業保証金の不足額の供託は,金銭により行わなければならない。」

【正解:×

◆供託の方法

 営業保証金の供託の方法は,「金銭のみを供託」,「金銭+有価証券を供託」,「有価証券のみを供託」の三つのうちのどれでもよいので(宅建業法25条1項,3項),金銭により行わなければならないとする本肢は誤りです。

 営業保証金の供託は,<新規開業>,<支店等の設置>,<還付による供託金の不足額の供託>,<主たる事務所の移転による最寄の供託所の変更(二重供託)>,<営業保証金の変換>と五つの場面がありますが,どの場合も,金銭でのみ供託しなければならないということはありません(宅建業法25条1項,3項,26条2項,28条3項,29条2項,施行規則15条の4の2)

有価証券の額面の評価額

 国債証券  額面全額
 地方債証券
 政府保証債
 額面金額の90/100
 その他の債権  額面金額の80/100

2.「宅地建物取引業者が廃業届を提出し,免許の効力を失った場合であっても,その者は廃業前に締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては,なお宅地建物取引業者とみなされる。」

【正解:

◆みなし宅建業者

 廃業の届出があったときは,その時点で免許は効力を失います(宅建業法11条2項)

 しかし,免許が失効しても,廃業前に締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては,その者又はその一般承継人は,なお宅地建物取引業者とみなされ,宅建業法の規定が適用されます。

取引を完全に結了するまでは営業保証金を取り戻すことはできない(宅建業法30条1項本文中の有効期間の括弧書内)ことにも,注意してください。

●条文確認
(免許の取消し等に伴う取引の結了)
第76条  第3条第2項の有効期間が満了したとき、第11条第2項(破産手続開始の決定・解散・廃業)の規定により免許が効力を失ったとき、又は宅地建物取引業者が第11条第1項第1号若しくは第2号に該当したとき(死亡・合併による消滅)、若しくは第25条第7項(供託した旨の届出をしないことによる免許取消)、第66条(免許取消処分)若しくは第67条第1項(所在不確知による免許取消)の規定により免許を取り消されたときは、当該宅地建物取引業者であつた者又はその一般承継人は、当該宅地建物取引業者が締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては、なお宅地建物取引業者とみなす。

3.「宅地建物取引業者 (国土交通大臣免許) が,宅地建物取引業法第50条2項の規定に基づき業務を行う場所の届出を行う場合,その所在地を管轄する都道府県知事を経由しなくても直接国土交通大臣に対して行うことができる。」

【正解:×

50条2項の届出−国土交通大臣免許業者−

× その所在地を管轄する都道府県知事を経由しなくても,直接,国土交通大臣に届出を行うことができる。
その所在地を管轄する都道府県知事を経由して,国土交通大臣に届出を行う。

 宅建業者は,契約行為等を行う案内所・展示会場・出張所(事務所以外で継続的に業務を行うことができる施設を有する場所)〔専任の取引主任者を置く義務のある場所。〕を設置する場合は,あらかじめ,その業務を開始する10日前までに,50条2項の届出を,免許権者及びその所在地を管轄する都道府県知事に届け出なければなりません(宅建業法50条2項,施行規則19条3項)

●50条2項の届出内容
所在地,業務内容,業務を行う期間,専任の取引主任者の氏名

 国土交通大臣免許業者の場合,国土交通大臣及び当該場所の所在地を管轄する都道府県知事に対して届け出ますが(宅建業法・50条2項,施行規則19条3項)

 国土交通大臣への届出は,その届出に係る業務を行う場所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して行います(宅建業法・50条2項,78条の3第2号)

4.「宅地建物取引業者 (甲県知事免許) が,乙県内で宅地建物取引業をいとなんでいる場合,乙県知事は,取引の業務について必要な報告を求めることができるが,当該宅地建物業者の事務所に立ち入り,帳簿の検査をすることはできない。」

【正解:×

◆報告及び検査

 都道府県知事は,当該都道府県の区域内で宅建業を営む者に対して,宅建業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは,その業務について必要な報告を求め,又はその職員に事務所その他その業務を行なう場所に立ち入り,帳簿,書類その他業務に関係のある物件を検査させることができます(宅建業法72条1項)

都道府県知事が報告を求め,または,検査をすることができるのは,その都道府県の区域内で宅建業を営む宅建業者に限られますが,国土交通大臣は,日本国内で宅建業を営むすべての者に対して,報告を求め,または,検査をすることができます。


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