宅建業法 実戦篇
宅建業者の過去問アーカイブス 平成15年・問39 クーリングオフ
宅地建物取引業者Aが,自ら売主となり,宅地建物取引業者でない買主との間で締結した宅地の売買契約について,買主が宅地建物取引業法第37条の2の規定に基づき売買契約の解除 (以下この問において「クーリング・オフ」という 。 ) をする場合に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成15年・問39) |
1.「買主Bは,20区画の宅地を販売するテント張りの案内所において,買受けを申し込み,契約を締結して,手付金を支払った。Bは,Aからクーリング・オフについて書面で告げられていなくても,その翌日に契約の解除をすることができる。」 |
2.「 買主Cは,喫茶店で買受けの申込みをした際に,Aからクーリング・オフについて書面で告げられ,その4日後にAの事務所で契約を締結した場合,契約締結日から起算して8日が経過するまでは契約の解除をすることができる。 」 |
3.「買主Dは,ホテルのロビーで買受けの申込みをし,翌日,Aの事務所で契約を締結した際に手付金を支払った。その3日後,Dから,クーリング・オフの書面が送付されてきた場合,Aは,契約の解除に伴う損害額と手付金を相殺することができる。 」 |
4.「買主Eは,自ら指定したレストランで買受けの申込みをし,翌日,Aの事務所で契約を締結した際に代金の全部を支払った。その6日後,Eは宅地の引渡しを受ける前にクーリング・オフの書面を送付したが,Aは,代金の全部が支払われていることを埋由に契約の解除を拒むことができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
●注意 |
申込者等が,宅地又は建物の引渡しを受け,かつ,その代金の全部を支払ったときは,『買受けの申込場所』や『申込の撤回等を行うことができる旨を書面に交付して告げられたか否か』に関係なく,申込者等はクーリングオフによる契約解除をすることはできません(宅建業法37条の2第1項第2号)。
本問題では,引渡しや代金全額の支払はないものとして考えないと,解答を導くことができません。 |
1.「買主Bは,20区画の宅地を販売するテント張りの案内所において,買受けを申し込み,契約を締結して,手付金を支払った。Bは,Aからクーリング・オフについて書面で告げられていなくても,その翌日に契約の解除をすることができる。」 |
【正解:○】 ◆テント張りの案内所 引渡しや代金全額の支払はないものとして考えます。 テント張りの案内所は土地に定着していないため,『事務所等以外』に該当し,申込の撤回等ができる旨及びその方法について書面を交付して告げられた日から起算して8日を経過する日までは,クーリングオフの規定による契約の解除をすることができます(宅建業法37条の2第1項第1号,土地に定着した案内所は事務所等に該当する⇒施行規則16条の5第1号ロ)。
本肢の場合は,書面で告げられていないため,起算日が確定していないため,上記の期間制限は適用されず,いつでも契約の解除をすることができます。 |
2.「 買主Cは,喫茶店で買受けの申込みをした際に,Aからクーリング・オフについて書面で告げられ,その4日後にAの事務所で契約を締結した場合,契約締結日から起算して8日が経過するまでは契約の解除をすることができる。 」 |
【正解:×】 ◆クーリングオフできる期間−書面で告げられた日から8日を経過する日までの間 買受けの申込場所が喫茶店なので,『事務所等以外』に該当し,申込の撤回等ができる旨及びその方法について書面を交付して告げられた日から起算して8日を経過する日までは,クーリングオフの規定による契約の解除をすることができます(宅建業法37条の2第1項第1号)。 本肢では,「契約締結日から起算して8日が経過するまでは契約の解除をすることができる。 」としているので,誤りです。
|
3.「買主Dは,ホテルのロビーで買受けの申込みをし,翌日,Aの事務所で契約を締結した際に手付金を支払った。その3日後,Dから,クーリング・オフの書面が送付されてきた場合,Aは,契約の解除に伴う損害額と手付金を相殺することができる。 」 |
【正解:×】 ◆クーリングオフされたときに,損害賠償や違約金の請求をすることはできない
クーリングオフ【買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除。『申込みの撤回等』という。】は,申込者等がその旨の書面を発したときにその効力を生じます(宅建業法37条の2第2項)。 クーリングオフされたときは,宅建業者は,申込みの撤回等に伴う損害賠償や違約金の支払を請求することはできないので,「相殺できる」とする本肢は誤りです。
▼申込みの撤回等が行われた場合,宅建業者は,申込者等に対し,速やかに,買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければなりません(宅建業法37条の2第3項)。 |
4.「買主Eは,自ら指定したレストランで買受けの申込みをし,翌日,Aの事務所で契約を締結した際に代金の全部を支払った。その6日後,Eは宅地の引渡しを受ける前にクーリング・オフの書面を送付したが,Aは,代金の全部が支払われていることを埋由に契約の解除を拒むことができる。」 |
【正解:×】 ◆代金全額の支払だけならば,クーリングオフできる 申込者等が,宅地又は建物の引渡しを受け,かつ,その代金の全部を支払ったときは,申込者等はクーリングオフによる契約解除をすることはできなくなります(宅建業法37条の2第1項第2号)。 しかし,本肢では,代金全部の支払をしているだけであり,まだ引渡しは受けていないので,買主Eはクーリングオフの規定による契約解除をすることができます。 「代金の全部が支払われていることを埋由に契約の解除を拒むことができる」とする本肢は誤りです。
|