宅建業法 実戦篇
営業保証金の過去問アーカイブス 平成16年・問35 営業保証金
宅地建物取引業者A (甲県知事免許) が本店と2つの支店を有する場合,Aの営業保証金に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成16年・問35) |
1.「Aは新たに2つの支店を設置し,同時に1つの支店を廃止したときは,500万円の営業保証金を本店のもよりの供託所に供託し,業務を開始した後,遅滞なくその旨を甲県知事に届け出なければならない。」 |
2.「Aが2つの支店を廃止し,その旨の届出をしたときは,営業保証金の額が政令で定める額を超えることとなるので,その超過額1,000万円について公告をせずに直ちに取り戻すことができる。」 |
3.「Aが営業保証金を取り戻すために公告をしたときは,2週間以内にその旨を甲県知事に届け出なければならず,所定の期間内に債権の申出がなければその旨の証明書の交付を甲県知事に請求できる。」 |
4.「Aは営業保証金の還付がなされ,甲県知事から政令で定める額に不足が生じた旨の通知を受け,その不足額を供託したときは,2週間以内にその旨を甲県知事に届け出なければならない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「Aは新たに2つの支店を設置し,同時に1つの支店を廃止したときは,500万円の営業保証金を本店のもよりの供託所に供託し,業務を開始した後,遅滞なくその旨を甲県知事に届け出なければならない。」 |
【正解:×】 ◆支店の事業の開始時期−供託した旨の届出後 新たに設置した支店で業務を開始する前に,その支店について営業保証金を供託した旨の届出をしなければなりません(宅建業法26条2項,25条5項)。 本肢では,業務を開始した後に,供託した旨を届け出ているので,誤りです。 |
●同時に新設と廃止がある場合の営業保証金 |
肢1の正誤は支店での事業開始時期が決め手になりますが,新たに2つの支店を設置し,同時に1つの支店を廃止したときの営業保証金の供託については,2つの見方があるようです。 1) 26条1項では<新たに事務所を設置した場合は当該事務所について営業保証金を供託しなければならない> としているので,新たに設置した支店二つについて営業保証金1,000万円を供託し,廃止した事務所についての営業保証金は,公告をした上で取り戻しになる。 2) 新たに2つの支店を設置し,同時に1つの支店を廃止したときは,結局,本店,支店3になるので,差額の500万円を供託すればよい。 この2説のどちらかが,現在市販されている過去問集では掲載されています。 ●類題 : 【1つの支店を廃止して,別の支店を新たに設置した場合】平成9年・問34・肢3, |
2.「Aが2つの支店を廃止し,その旨の届出をしたときは,営業保証金の額が政令で定める額を超えることとなるので,その超過額1,000万円について公告をせずに直ちに取り戻すことができる。」 |
【正解:×】 ◆支店廃止による営業保証金の取り戻し 支店の廃止により営業保証金の額が政令で定める額を超えることになったときは,還付請求権者に一定期間内に申し出るべき旨の公告をして,申し出る者がいなかったときに,取り戻すことができます(宅建業法30条)。 本肢では,「公告をせずに直ちに取り戻すことができる。」としているので,誤りです。 |
3.「Aが営業保証金を取り戻すために公告をしたときは,2週間以内にその旨を甲県知事に届け出なければならず,所定の期間内に債権の申出がなければその旨の証明書の交付を甲県知事に請求できる。」 |
【正解:×】 ◆取り戻しの手続 営業保証金の取り戻しをしようとする者が公告をしたときは,遅滞なく,公告した旨を免許権者に届け出なければなりません(営業保証金規則8条3項)。 本肢では,「2週間以内」としているので,誤りです。 なお,上記の届出をした者は,公告に定める期間内に,還付請求権者の申出がなかったときは,その旨の証明書の交付を免許権者に請求することができるので,後半部分は正しい記述です(営業保証金規則9条1項)。⇒宅建業者は,この証明書を供託物払渡請求書に添付する(営業保証金規則10条1号)。 |
4.「Aは営業保証金の還付がなされ,甲県知事から政令で定める額に不足が生じた旨の通知を受け,その不足額を供託したときは,2週間以内にその旨を甲県知事に届け出なければならない。」 |
【正解:○】 ◆営業保証金の不足額の供託 営業保証金の還付がなされ,免許権者から政令で定める額に不足が生じた旨の通知を受けたときは,その日から2週間以内にその不足額を供託し(宅建業法28条1項,営業保証金規則3条,4条), また,供託した日から2週間以内にその旨(不足額を供託した旨)を免許権者に届け出なければなりません(宅建業法28条2項)。 |