宅建業法 実戦篇
業務上の諸規制の過去問アーカイブス 平成16年・問44
手付金等保全措置・断定的判断の提供の禁止・従業者名簿の閲覧・重要事項の不告知
宅地建物取引業者A社の行う業務について,宅地建物取引業法の規定によれば,誤っているものはどれか。(平成16年・問44) |
1.「A社は,自ら建築工事完了前のマンションの売主となるときは,代金の一部が当該物件の売買価格の1/10以下で,かつ,1,000万円以下であれば,保全措置をしなくてもよい。」 |
2.「A社は,その相手方等に対して契約の目的物である宅地又は建物の将来の環境等について誤解させるべき断定的判断を提供することは禁止されているが,過失によって当該断定的判断を提供してしまった場合でも免責されない。」 |
3.「A社は,その事務所に従業者名簿を備えることとされているが,取引の関係者から請求があった場合,当該名簿をその者に閲覧させなければならない。」 |
4.「A社は,その相手方等に対して取引の判断に重要な影響を及ぼすこととなる事項について故意に事実を告げない行為は禁止されているが,法人たるA社の代表者が当該禁止行為を行った場合,当該代表者については懲役刑が科されることがあり,またA社に対しても罰金刑が科されることがある。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
1.「A社は,自ら建築工事完了前のマンションの売主となるときは,代金の一部が当該物件の売買価格の1/10以下で,かつ,1,000万円以下であれば,保全措置をしなくてもよい。」 |
【正解:×】 ◆代金の5%以下,かつ,1,000万円以下は,手付金等保全措置を講じなくてもよい 宅建業者が,自ら売主として,宅建業者ではない者と,未完成物件について売買契約を締結する場合に,手付金等が代金の額【消費税等を含む】の5%以下,かつ,1,000万円以下のときは,手付金等保全措置を講じなくても,受領することができます(宅建業法41条1項,施行令3条の2)。 本肢は,「1/10以下で,かつ,1,000万円以下であれば,保全措置をしなくてもよい。」としているので,誤りです。 ▼手付金等とは,<代金の全部又は一部として授受される金銭及び手付金その他の名義をもつて授受される金銭で代金に充当されるものであつて,契約の締結の日以後当該宅地又は建物の引渡し前に支払われるもの>のことをいいます。 本肢では,『代金の一部が』としていますが,『代金の一部として授受される金銭』と読み取るべきでしょう。 |
2.「A社は,その相手方等に対して契約の目的物である宅地又は建物の将来の環境等について誤解させるべき断定的判断を提供することは禁止されているが,過失によって当該断定的判断を提供してしまった場合でも免責されない。」 |
【正解:○】 ◆将来の環境,交通その他の利便について誤解させるべき断定的判断の提供の禁止 宅建業者は,宅建業に係る契約の締結の勧誘をするに際し,相手方等に対して,契約の目的物である宅地・建物の将来の環境,交通その他の利便について誤解させるべき断定的判断を提供することは,故意・過失とも,禁止されています(宅建業法47条の2第3項,施行規則16条の12第1号イ)。 したがって,過失によって断定的判断を提供してしまった場合でも免責されません。 |
3.「A社は,その事務所に従業者名簿を備えることとされているが,取引の関係者から請求があった場合,当該名簿をその者に閲覧させなければならない。」 |
【正解:○】 ◆従業者名簿の閲覧 宅建業者は,事務所ごとに所定の様式の従業者名簿を備え,従業者の氏名・住所・従業者証明書番号その他国土交通省令で定める事項を記載し,取引の関係者から請求があったときは閲覧させなければなりません(宅建業法48条3項・4項,施行規則17条の2第1項,同第2項)。 |
4.「A社は,その相手方等に対して取引の判断に重要な影響を及ぼすこととなる事項について故意に事実を告げない行為は禁止されているが,法人たるA社の代表者が当該禁止行為を行った場合,当該代表者については懲役刑が科されることがあり,またA社に対しても罰金刑が科されることがある。」 |
【正解:○】 ◆重要な事項−事実の不告知−両罰規定 宅建業者が,その業務に関して,相手方等に対して,重要な一定の事項について,故意に事実を告げず,又は不実のことを告げる行為をすることは禁止されています(宅建業法47条1号)。 法人の代表者がこれに違反すると,代表者については,2年以下の懲役刑,もしくは,300万円以下の罰金刑,またはその併科が科され,当該法人に対しても1億円以下の罰金刑が科されることがあります(宅建業法80条,84条)。 |
●業務に関する禁止事項 |
(業務に関する禁止事項) 第47条 宅地建物取引業者は,その業務に関して,宅地建物取引業者の相手方等に対し,次に掲げる行為をしてはならない。 1号 宅地若しくは建物の売買,交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し,又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため,次のいずれかに該当する事項について,故意に事実を告げず,又は不実のことを告げる行為 イ 第35条第1項各号又は第2項各号に掲げる事項 |