宅建業法 実戦篇

広告規制の過去問アーカイブス 平成19年・問38 

誇大広告等の禁止,広告開始時期の制限,契約締結等の時期の制限


宅地建物取引業者Aの業務に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。  (平成19年・問38)

1 は、実在しない宅地について広告又は虚偽の表示を行ってはならないが、実在する宅地については、実際に販売する意思がなくても、当該宅地の広告の表示に誤りがなければ、その広告を行うことができる。

2 は、新築分譲マンションを建築工事の完了前に売却する場合、建築基準法第6条第1項の確認を受ける前において、当該マンションの売買の広告及び売買契約の締結のいずれもすることはできない。

3 都市計画法第29条第1項の許可を必要とする宅地について、が開発行為を行い貸主として貸借をしようとする場合、は、がその許可を受ける前であっても、の依頼により当該宅地の貸借の広告をすることができるが、当該宅地の貸借の媒介をすることはできない。

4 は、都市計画法第29条第1項の許可を必要とする宅地について開発行為を行いに売却する場合、が宅地建物取引業者であれば、その許可を受ける前であっても当該宅地の売買の予約を締結することができる。

<コメント>  
 
●出題論点●
 肢1 実在しても販売する意思のない物件について広告することは禁止されている

 肢2 広告開始時期の制限,契約締結等の時期の制限−売買(その媒介・代理)では,工事に関して必要な処分で政令で定めるものがあった後でなければ,広告することも契約することもできない

 肢3 未完成物件の貸借について,工事に関して必要とされる処分で政令で定めるものがない時点では, 媒介することはできるが,広告をすることはできない

 肢4 契約締結等の時期の制限は,宅建業者間の取引でも適用される

【正解】

× × ×

 正答率  81.2%

1 は、実在しない宅地について広告又は虚偽の表示を行ってはならないが、実在する宅地については、実際に販売する意思がなくても、当該宅地の広告の表示に誤りがなければ、その広告を行うことができる。

【正解:×

◆実在しても販売する意思のない物件について広告することは禁止されている 

 「実在しない物件の広告」(虚偽広告)だけでなく,広告の表示に誤りがなくても,「実在しても販売する意思のない物件の広告」(おとり広告) をすることは,誇大広告等として禁止されています(宅建業法32条)

●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 (国土交通省)

第32条関係

1 「誇大広告等」について

 「誇大広告等」とは、本条において規定されるところであるが、顧客を集めるために売る意思のない条件の良い物件を広告し、実際は他の物件を販売しようとする、いわゆる「おとり広告」及び実際には存在しない物件等の「虚偽広告」についても本条の適用があるものとする。

 また、広告の媒体は、新聞の折込チラシ、配布用のチラシ、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ又はインターネットのホームページ等種類を問わないこととする。

2 は、新築分譲マンションを建築工事の完了前に売却する場合、建築基準法第6条第1項の確認を受ける前において、当該マンションの売買の広告及び売買契約の締結のいずれもすることはできない。

【正解:

◆売買・交換〔その媒介・代理〕−工事に関して必要な処分で政令で定めるものがあった後でなければ,広告することも契約を締結することもできない

  未完成物件については,その工事に関して必要とされる処分で政令で定めるもの〔開発許可,建築許可,宅地造成規制区域での宅地造成の許可など〕があった後でなければ,

 売買・交換(その媒介・代理),貸借の媒介・代理の業務に関する広告をすることはできません(宅建業法33条)

 売買・交換(その媒介・代理)に関する契約を締結することはできません(宅建業法36条)

 これらをつき合わせると,以下のようになります。

●売買・交換の広告規制,契約締結等の時期の制限

 未完成物件の売買・交換については,その工事に関して必要とされる処分で政令で定めるものがあった後でなければ,

 宅建業者は,広告をすることはできず,

 宅建業者は,当事者または代理人として売買・交換の契約を締結することはできず,また,その媒介をすることもできない。

3 都市計画法第29条第1項の許可を必要とする宅地について、が開発行為を行い貸主として貸借をしようとする場合、は、がその許可を受ける前であっても、の依頼により当該宅地の貸借の広告をすることができるが、当該宅地の貸借の媒介をすることはできない。

【正解:×昭和57年・問40・肢4

◆広告開始時期の制限と契約締結等の時期の制限

 未完成物件については,その工事に関して必要とされる処分で政令で定めるもの〔開発許可,建築許可,宅地造成規制区域での宅地造成の許可など〕があった後でなければ,

 自ら当事者として,また代理人として売買・交換の契約をすることやその媒介をすることはできません(宅建業法36条)。 ⇒ 貸借の媒介・代理には制限がないことに注意。

 つまり,33条の「広告開始時期の制限」とつき合わせると次のようになります。

〔重要〕 未完成物件については,工事に関して必要とされる処分で政令で定めるものがない時点では, 貸借の媒介や代理をすることはできるが,広告をすることはできない

 本肢は,それぞれ,この反対の記述になっているので,誤りです。

●広告開始時期の制限と契約締結時期の制限
1) 違反した場合の監督処分・罰則
     監督処分  罰則
 広告開始時期の制限  指示処分  なし   
 契約締結時期の制限  業務停止処分

 〔情状が特に重いとき〕免許取消

 なし    

2) 貸借の媒介・代理の扱いの違い

 広告開始時期の制限  貸借の媒介・代理にも適用される。
 契約締結時期の制限  貸借の媒介・代理には適用されない。

4 は、都市計画法第29条第1項の許可を必要とする宅地について開発行為を行いに売却する場合、が宅地建物取引業者であれば、その許可を受ける前であっても当該宅地の売買の予約を締結することができる。

【正解:×

◆契約締結等の時期の制限は,宅建業者間の取引でも適用される

 宅建業者間の取引〔売主,買主とも宅建業者〕であっても,契約締結時期等の制限は適用されます(宅建業法36条)

 したがって,本肢では,開発許可を受ける前なので,相手方が宅建業者であっても,宅地売買の予約をすることはできません。

整理契約締結時期の制限,自己の所有に属さない宅地又は建物の売買契約締結時期の制限 

   建築確認等の前  建築確認等の後で工事完了前
 買主が宅建業者   契約締結できない  手付金等の保全措置を
 講じなくても,契約締結できる。
 買主が宅建業者ではない   契約締結できない  手付金等の保全措置を
 講じれば,契約締結できる。

※手付金等の合計が代金の5%以下,かつ,1,000万円以下であるとき,買主が所有権の登記をしたとき(保存登記),買主への所有権移転登記がされたときは保全措置は不要。


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