宅建業法 実戦篇
宅建業者の過去問アーカイブス 昭和58年・問36 免許の基準 (欠格要件)
法人の役員
株式会社A社がB県知事に対して宅地建物取引業の免許の申請を行った。次の記述のうち,B県知事が宅地建物取引業の免許をしてはならない場合に該当するものはどれか。(昭和58年・問36) |
1.「A社の役員の1人は,宅地建物取引業法違反により懲役1年,執行猶予2年の刑に処せられ,執行猶予期間が満了してから5年を経過していない。」 |
2.「A社の代表取締役は,道路交通法違反により懲役1年の判決を第一審で受けたが,直ちに控訴し,現在控訴審に係属中である。」 |
3.「A社の役員の1人は,不正の手段により宅地建物取引業の免許を受けたことを理由として,4年前その免許を取り消された株式会社C社のその取消当時における役員であった。」 |
4.「A社の代表取締役は,傷害罪により罰金10万円,執行猶予1年の刑に処せられ,現在執行猶予期間中である。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
該当しない | 該当しない | 該当する | 該当する |
1.「A社の役員の1人は,宅地建物取引業法違反により懲役1年,執行猶予2年の刑に処せられ,執行猶予期間が満了してから5年を経過していない。」 |
【正解:該当しない】 ◆執行猶予期間が満了していれば,欠格要件には該当しない 免許を申請する法人の<役員や政令で定める使用人>の中に, <宅建業法違反・一定の刑法の罪・暴力行為等による罰金刑,または,禁錮以上の刑 (禁錮・懲役・死刑) に処せられ,その刑の執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者>がいる場合は,国土交通大臣又は都道府県知事がその法人に免許をしてはならない欠格要件に該当しますが(宅建業法・5条1項3号,3号の2,7号), 執行猶予期間が満了しているならば,<刑の言渡しの効力そのものが失われて,刑に処せられなかった>ことになるので(刑法27条),欠格要件には該当しません。
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2.「A社の代表取締役は,道路交通法違反により懲役1年の判決を第一審で受けたが,直ちに控訴し,現在控訴審に係属中である。」 |
【正解:該当しない】 ◆控訴審に係属中の場合,刑が確定していないので,欠格要件には該当しない 免許を申請する法人の<役員や政令で定める使用人>の中に, <禁錮以上の刑 (禁錮・懲役・死刑) に処せられ,その刑の執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者>がいる場合は,国土交通大臣又は都道府県知事がその法人に免許をしてはならない欠格要件に該当しますが, 控訴審(高等裁判所)に係属中であるときは,<有罪か無罪か,又有罪だとしても刑そのものが確定せず,刑に処せられてはいない>ので,欠格要件には該当しません。
▼控訴・・・第一審判決に不服があるときに上級審(一審が簡易裁判所のときは地方裁判所,一審が地方裁判所のときは高等裁判所)に不服を申し立てること。 |
3.「A社の役員の1人は,不正の手段により宅地建物取引業の免許を受けたことを理由として,4年前その免許を取り消された株式会社C社のその取消当時における役員であった。」 |
【正解:該当する】 ◆免許取消 免許を申請する法人の<役員や政令で定める使用人>の中に, 不正手段により免許を受けたことを理由にして免許を取り消された法人の役員であった者がいる場合<正確には,当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内にその法人の役員であった者がいる場合>, その法人は欠格要件に該当し,国土交通大臣又は都道府県知事はその法人に免許をしてはいけません。(宅建業法・5条1項2号,7号)
▼注意 : 免許を取り消された法人の政令で定める使用人であった者 免許を申請する法人の<役員や政令で定める使用人>の中に, 不正手段により免許を受けたことを理由にして免許を取り消された法人の政令で定める使用人であった者がいても,欠格要件にはならない。 |
4.「A社の代表取締役は,傷害罪により罰金10万円,執行猶予1年の刑に処せられ,現在執行猶予期間中である。」改 |
【正解:該当する】(法改正による解答の変更) ◆宅建業法違反・傷害罪・暴力行為等で罰金刑の執行猶予期間中は,欠格要件に該当する 免許を申請する法人の<役員や政令で定める使用人>の中に,
がいる場合, その法人は欠格要件に該当し,国土交通大臣又は都道府県知事はその法人に免許をしてはいけません。(宅建業法・5条1項3号の2,7号) 執行猶予期間が満了すれば,肢1で見たように,刑に処せられなかったことになるので,欠格要件には該当しませんが, 上記の罪名により罰金刑に処せられて執行猶予期間中は欠格要件になります。
▼刑法の条文番号や罪名は覚える必要はない 刑法の罪で詐欺・恐喝・強盗はなぜ入っていないのかと不思議に思う人がいるかもしれません。しかし,詐欺(246条)・恐喝(249条)は10年以下の懲役,窃盗(235条)は10年以下の懲役,強盗(236条)は5年以上の有期懲役であって,別の欠格要件(禁錮以上の刑)に該当するので,宅建業法5条1項3号の2に掲げられていないのです。<罰金刑そのものがこれらの罪にはない。> |
●法改正による欠格要件の追加 |
昭和63年,平成7年の宅建業法の改正により,傷害・暴行・脅迫等による罰金以上の刑(昭和63年),暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に違反して罰金以上の刑(平成7年)に処せられ,
その執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者が加わりました。 昭和58年当時は,これらはまだ欠格要件ではなかったので,出題当時肢4は<執行猶予期間中でも,欠格要件には該当しない>が正しい解答でした。 しかし,昭和63年の改正により,現在では<該当する>になっています。 |