宅建業法 実戦篇
自ら売主の制限の過去問アーカイブス 昭和58年・問39
瑕疵担保責任の特約の制限・契約締結等の時期の制限・
手付放棄による契約解除・自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限
宅地建物取引業者Aが自ら売主となる土地付建物の売買契約に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法上正しいものはどれか。(昭和58年・問39) |
1.「Aが瑕疵担保責任を負うべき期間を目的物の引渡しの日から1年以内とする特約をした場合は,瑕疵担保責任を負うべき期間は,買主が瑕疵を発見した時から1年となる。」 |
2.「建物の建築に関する工事の完了前において,手付金等保全措置を講じる場合は,建築確認を受ける前であってもAは当該土地付建物の売買契約を締結することができる。」 |
3.「Aが手付として買主から20万円を受領し土地付建物を価格1,000万円で売却する場合,『当事者の一方が契約の履行に着手するまでに買主が手付を放棄して契約の解除を行う場合は,違約金として売主に200万円支払う。』との特約をすることができる。」 |
4.「自己の所有に属しない土地付建物をその所有者の転勤が決まったときに買い受けるとの停止条件付売買契約を締結している場合,Aは,当該土地付建物について第三者と売買契約を締結することができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
1.「Aが瑕疵担保責任を負うべき期間を目的物の引渡しの日から1年以内とする特約をした場合は,瑕疵担保責任を負うべき期間は,買主が瑕疵を発見した時から1年となる。」 |
【正解:○】 ◆瑕疵担保責任−宅建業法に反した特約は無効 宅建業者は,買主等が宅建業者でない場合,瑕疵担保責任について,宅建業法の規定と異なる特約をすることはできますが,宅建業法の規定に反した特約は無効とされており,特約が無効の場合は,民法の原則<事実を知ったときから1年以内に,損害賠償又は解除をすることができる。>に立ち戻ることになります。(宅建業法・40条2項) 本肢の特約<引渡しの日から1年>は宅建業法の規定<引渡しの日から2年以上>に反するので,この特約は無効であり,民法の<買主が瑕疵を発見した時から1年>になります。
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●瑕疵担保責任についての特約の制限 |
民法では,瑕疵担保責任は売主の無過失責任であり,瑕疵によって契約の目的が達成できないときは,契約の解除をすることができ,契約の解除をすることができないときは,損害賠償の請求のみをすることができます。(民法570条,566条1項,判例) また,この契約の解除又は損害賠償責任の請求は,買主がその事実を知った時から1年以内にしなければなりません。(民法570条,566条3項) 宅建業法では,買主が非業者であれば,原則として,この民法の規定よりも買主に不利な特約はしてはならないことになっていますが,その例外として<目的物の引渡しの日から2年以上となる特約>は許されています。(宅建業法・40条1項) 宅建業法のこの規定に反する特約は,無効です。 (宅建業法・40条2項) |
2.「建物の建築に関する工事の完了前において,手付金等保全措置を講じる場合は,建築確認を受ける前であってもAは当該土地付建物の売買契約を締結することができる。」 |
【正解:×】対比・昭和57年・問46・肢2 ◆契約締結時期の制限 未完成物件では, (1) 建物では建築確認等,宅地では開発許可等の処分がされた後で(宅建業法・36条), (2) 手付金等保全措置が必要な場合は,その措置が講じられていること(宅建業法・33条の2第2号) この2つを満たしているならば,自ら売主として,宅建業者ではない者と売買契約を締結することができます。 したがって,本肢のように,建築確認を受ける前は,手付金等保全措置を講じていても,宅建業者ではない者と売買契約を締結することはできません。 ●整理●契約締結時期の制限,自己の所有に属さない宅地又は建物の売買契約締結時期の制限
※手付金等の合計が代金の5%以下,かつ,1,000万円以下であるとき,買主が所有権の登記をしたとき(保存登記),買主への所有権移転登記がされたときは保全措置は不要。 |
3.「Aが手付として買主から20万円を受領し土地付建物を価格1,000万円で売却する場合,『当事者の一方が契約の履行に着手するまでに買主が手付を放棄して契約の解除を行う場合は,違約金として売主に200万円支払う。』との特約をすることができる。」 |
【正解:×】 ◆手付放棄による契約解除 宅建業者が,自ら売主として,宅建業者ではない者との宅地建物の売買契約の締結に際して,手附を受領したときは,その手附がいかなる性質を持つものであっても, 当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,買主はその手附を放棄して,売主である宅建業者はその倍額を償還して,契約の解除をすることができ(宅建業法・39条2項), この規定に反する特約で,買主に不利なものは無効です(宅建業法・39条3項)。 したがって,本肢の<買主が手付を放棄して契約の解除を行うには,違約金として売主に200万円支払う>との特約は無効になります。 |
4.「自己の所有に属しない土地付建物をその所有者の転勤が決まったときに買い受けるとの停止条件付売買契約を締結している場合,Aは,当該土地付建物について第三者と売買契約を締結することができる。」 |
【正解:×】 ◆他人物について停止条件付売買契約を締結しているときは,宅建業者ではない者と,売買契約を締結することはできない
第三者が<宅建業者の場合>と<宅建業者でない場合>とで分かれ,いつでも第三者と売買契約を締結できるのではないため,本肢は誤りです。 他人物の物件について,その所有権を取得する契約を締結していても,その契約が停止条件付きのときは,その条件が成就するまでの間は,自ら売主として,宅建業者ではない者と売買契約を締結することはできません(宅建業法・33条の2第1号)。 |