宅建業法 実戦篇
クーリングオフの過去問アーカイブス 昭和58年・問46
宅地建物取引業法第37条の2の規定に基づく宅地又は建物の買受けの申込みの撤回等に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和58年・問46) |
1.「買受けの申込み等をした者が申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等の方法について告げられていなかった場合でも,買受けの申込み等の日から起算して8日を経過したときは,申込みの撤回等を行うことはできなくなる。」 |
2.「申込みの撤回等は,一定の事項を記載した書面で行わなければならず,その効力はこの書面が宅地建物取引業者に到達した時に生じる。」 |
3.「申込みの撤回等が行われた場合,宅地建物取引業者は,申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができる。」 |
4.「買受けの申込みをした者が,当該宅地又は建物の引渡しを受け,かつ,その代金の全部を支払ったときは,申込みの撤回等を行うことはできなくなる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「買受けの申込み等をした者が申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等の方法について告げられていなかった場合でも,買受けの申込み等の日から起算して8日を経過したときは,申込みの撤回等を行うことはできなくなる。」 |
【正解:×】 ◆クーリングオフできる旨及びその方法を書面を交付して告げていないとき 宅建業者が,申込の撤回等〔買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除〕を行うことができる旨及びその方法を,国土交通省令で定める事項を記載した書面を交付して,告げた日から起算して8日を経過したときは,申込者等〔買受けの申込みをした者又は買主〕はクーリングオフすることはできません。(宅建業法・37条の2・第1項第1号,施行規則・16条の6) しかし,宅建業者が,<申込みの撤回等を行うことができる旨及びその方法について,書面を交付して,告げていない場合>は,申込者等は,クーリングオフできる期間の起算点が始まっていないので,(引渡しを受け,かつ,代金全額の支払がなければ),いつでもクーリングオフができます。 したがって,本肢は誤りです。
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2.「申込みの撤回等は,一定の事項を記載した書面で行わなければならず,その効力はこの書面が宅地建物取引業者に到達した時に生じる。」 |
【正解:×】 ◆クーリングオフは,クーリングオフする旨の書面を発したときに,効力を生じる 申込みの撤回等は,申込者等がその書面を発した時に,効力が生じる(宅建業法・37条の2・第2項)ので,本肢は誤りです。
申込みの撤回等は,書面で行わなければなりませんが,<買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除を行う旨を記載した書面>というほかには特に規定はありません。
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3.「申込みの撤回等が行われた場合,宅地建物取引業者は,申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができる。」 |
【正解:×】 ◆宅建業者は,損害賠償や違約金の支払を請求できない 申込みの撤回等が行われた場合,宅建業者は,申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することはできず,買受の申込又は売買契約の締結に際し手付金その他の金銭が支払われているときは,遅滞なくその全額を返還しなければなりません。(宅建業法・37条の2・第1項,第3項)
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4.「買受けの申込みをした者が,当該宅地又は建物の引渡しを受け,かつ,その代金の全部を支払ったときは,申込みの撤回等を行うことはできなくなる。」 |
【正解:○】 ◆引渡し+代金の全額支払い ⇒ クーリングオフできない 申込者等が,当該宅地又は建物の引渡しを受け,かつ,その代金の全部を支払ったときは,申込みの撤回等を行うことはできなくなります。(宅建業法・37条の2・第1項第2号)
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●クーリングオフ 〔事務所等以外の場所でした,申込の撤回又は契約の解除〕 |
宅建業者が自ら売主の場合に,事務所等以外の場所で行われた買受の申込や契約については,正常な契約意思の形成が阻害されることがあるので,一定の条件のもとに無条件で解約できる。これをクーリングオフという。
クーリングオフは,書面によって行使しなければならず,申込者又は買主がクーリングオフをする旨の書面を発したときにその効力が生じる。〔発信主義〕 ただし,以下の場合はクーリングオフをすることはできない。 ・申込者又は買主が,物件の引渡しを受け,かつ,代金を全額支払ったとき(宅建業法・37条の2・第1項第2号) ・業者が,撤回等を行うことができる旨及びその方法を,国土交通省令で定める事項を記載した書面を交付して,告げた日から起算して8日を経過したとき(宅建業法・37条の2・第1項第1号,施行規則・16条の6) ▼手付放棄による解除や,瑕疵担保責任による解除,契約不履行による解除などの民法上の解除事由による解除は,クーリングオフとは別個にすることができる。 ▼宅建業者は,クーリングオフによる損害賠償や違約金の支払を要求することはできない。 |