宅建業法 実戦篇
自ら売主の制限の過去問アーカイブス 昭和58年・問47 手付金等の保全措置
宅地建物取引業者Aは,自ら売主となって建売住宅を買主Bに代金3,000万円で売却する契約を締結したが,土地の造成工事及び建物の建築工事は完了前であった。売買代金について手付金等を受領しようとする場合の,宅地建物取引業法第41条に規定する手付金等の保全措置に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和58年・問47) |
1.「Aは,後に代金に充当される手付金として150万円を受領後,代金の一部として更に500万円を受領する際には,500万円についてのみ手付金等の保全措置を講じる必要がある。」 |
2.「Aは,手付金として500万円を受領するときは,Bがすでに当該土地及び建物の所有権の登記をしていたとしても手付金等の保全措置を講じる必要がある。」 |
3.「Aは,既に受領した手付金及び新たに受領しようとする金額の合計額が150万円以下である場合であっても,手付金等の保全措置を講じなければならない。」 |
4.「Bが宅地建物取引業者である場合には,Aは,手付金として1,000万円を受領する際,手付金等の保全措置を講じる義務はない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
●手付金等保全措置 | ||||
【宅建業者が自ら売主として,宅建業者ではない買主と売買契約を締結するときの制限】
宅建業者は,保全措置を講じた後でなければ,手付金等を受領できない。 1) 受領しようとする時点での手付金等が以下の場合は,保全措置を講じなくてよい。
2) 買主への所有権移転登記がされたとき,又は,買主が売買物件の所有権の登記をしたときは,保全措置を講じなくてもよい。 |
1.「Aは,後に代金に充当される手付金として150万円を受領後,代金の一部として更に500万円を受領する際には,500万円についてのみ手付金等の保全措置を講じる必要がある。」 |
【正解:×】 ◆<すでに受領しているもの+これから受領するもの>の全額について保全する
手付金等とは,代金に充当され,契約締結時点から引渡し前までに支払われる金銭を言います。 手付金等の保全措置は,<既に受領している分とこれから受領しようとする分との全額>について講じなければいけません。 本肢の場合,150万円 (=3,000万円の5%ちょうど) を受領する時点では保全措置は必要ではありませんが, 更に500万円を受領しようとするときには,手付金150万円+代金の一部500万円=650万円となり,代金の21,66・・・%に該当し,5%を超えると保全措置が必要なので,650万円の全額について,保全措置が必要です。 したがって,<500万円についてのみ手付金等の保全措置を講じる必要がある>とする本肢は誤りです。 |
2.「Aは,手付金として500万円を受領するときは,Bがすでに当該土地及び建物の所有権の登記をしていたとしても手付金等の保全措置を講じる必要がある。」 |
【正解:×】 ◆買主が所有権の登記をしていれば,手付金等の保全措置を講じなくてよい 買主がすでに売買物件である当該土地及び建物の所有権の登記をしていれば,手付金等の保全措置を講じる必要はありません(宅建業法・41条・1項)。 ▼宅建業者が自ら売主として,宅建業者でない者に売却するときは,代金の20%を超える額の手附を受領することはできません(宅建業法・39条・1項)。本肢の場合,3,000万円の2割=600万円までの手附を受領できます。 |
3.「Aは,既に受領した手付金及び新たに受領しようとする金額の合計額が150万円以下である場合であっても,手付金等の保全措置を講じなければならない。」 |
【正解:×】 ◆未完成物件 : 代金の5%以下,かつ,1,000万円以下ならば,保全措置は不要 未完成物件では,手付金等が<代金の5%以下,かつ,1,000万円以下>ならば,保全措置を講じる必要はありません。 本肢の場合,<既に受領した手付金及び新たに受領しようとする金額の合計額>が150万円で,代金3,000万円の5%以下ですから,保全措置を講じなくてもよいことになります。 |
4.「Bが宅地建物取引業者である場合には,Aは,手付金として1,000万円を受領する際,手付金等の保全措置を講じる義務はない。」 |
【正解:○】 ◆宅建業者間の取引には,手付金等の保全措置の規定は適用されない 宅建業者間の取引では,自ら売主の8種制限は適用されません。 したがって,本肢に関連する2つの規定は, ・手附の額の制限 (手附は代金の20%を超えて受領できない) ・手付金等の保全措置 どちらも適用されないので,本肢は正しい記述です。
▼参考 1,000万円は,3,000万円の33.33・・%。 |