宅建業法 実戦篇

自ら売主の制限の過去問アーカイブス 昭和58年・問49 宅建業者間取引

瑕疵担保責任の特約の制限・手付金の額の制限・
自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限


次の記述のうち,が宅地建物取引業法違反となるものはどれか。なお,及びは共に宅地建物取引業者であるものとする。(昭和58年・問49)

1.「は,自己の所有する土地付建物を自ら売主となって5,000万円でに売却した。この際,は,の承諾を得て当該土地付建物に関する宅地建物取引業法第35条に規定された重要事項の説明を省略した。」

2.「は,自己の所有する宅地を自ら売主となってに売却した。この売買契約において,売出し価格5,000万円のところを4,500万円に値引きしたが,その代わり,当該宅地に万一瑕疵があったとしても,はこれについて売主としての責任を一切負わないとの特約をした。」

3.「は,自己の所有する土地付建物を自ら売主となって5,000万円でに売却したが,この売買契約の締結に際して,1,500万円の手付金をから受領した。」

4.「は,との間で,第三者が所有する宅地をが売主となり5,000万円でに売却するとの売買契約の予約をしたが,この時点で,は,との間では当該宅地をが取得する旨の契約を一切締結していなかった。」

【正解】

違反する 違反しない 違反しない 違反しない

1.「は,自己の所有する土地付建物を自ら売主となって5,000万円でに売却した。この際,は,の承諾を得て当該土地付建物に関する宅地建物取引業法第35条に規定された重要事項の説明を省略した。」

【正解:違反する

◆重要事項説明は,宅建業者間の取引でも,しなければならない

 (売主,宅建業者) ― (買主,宅建業者)

 自ら売主の8種制限は宅建業者間の取引には適用されませんが,自ら売主の8種制限以外の宅建業法の規定は,宅建業者間取引でも適用されます

 例えば,重要事項説明・37条書面の交付・媒介書面の交付は,宅建業者間の取引でも,しなければいけません。

 宅建業法は,一般消費者の利益の保護だけが目的ではなく,業務の適正な運営と取引の公正を確保して,宅地及び建物の流通の円滑化を図るためのものでもあるからです。

 KEY 

              

 宅建業者間の取引で適用されないのは,自ら売主の8種制限だけ

●宅建業法の目的
(目的)
第1条
 この法律は、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発達を促進し、もつて購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的とする。

2.「は,自己の所有する宅地を自ら売主となってに売却した。この売買契約において,売出し価格5,000万円のところを4,500万円に値引きしたが,その代わり,当該宅地に万一瑕疵があったとしても,はこれについて売主としての責任を一切負わないとの特約をした。」

【正解:違反しない

◆瑕疵担保責任の特約の制限は,宅建業者間の取引には適用されない

  (売主,宅建業者) ― (買主,宅建業者)

 宅建業者は,自ら売主として,宅建業者でない者と売買契約を締結する際には,瑕疵担保責任を負わないとする特約をしても無効ですが(宅建業法・40条・2項)

 宅建業者間の取引では,瑕疵担保責任を負わないとする特約も有効です(宅建業法・77条・2項)

3.「は,自己の所有する土地付建物を自ら売主となって5,000万円でに売却したが,この売買契約の締結に際して,1,500万円の手付金をから受領した。」

【正解:違反しない

◆手附の額の制限は,宅建業者間の取引には適用されない

 (売主,宅建業者) ― (買主,宅建業者)

 宅建業者は,自ら売主として,宅建業者でない者と売買契約を締結する際には,代金の20%を超える手附を受領することはできませんが(宅建業法・39条・1項)

 宅建業者間の取引での手附の額には制限がないので(宅建業法・77条・2項),本肢のように代金の20%を超える手附<1,500万円は,5,000万円の30%>を受領しても,宅建業法に違反しません。

4.「は,との間で,第三者が所有する宅地をが売主となり5,000万円でに売却するとの売買契約の予約をしたが,この時点で,は,との間では当該宅地をが取得する旨の契約を一切締結していなかった。」

【正解:違反しない

◆自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限は,宅建業者間の取引には適用されない

               第三者の所有する宅地

 (売主,宅建業者) ――――――――――― (買主,宅建業者)

 第三者が宅建業者のとき  他人物について,売買契約を締結できる。
 第三者が宅建業者でないとき  原則として,他人物の売買契約を締結できないが,
 その所有権を取得する契約(停止条件付以外の契約)
 を締結しているときは,締結できる。

 宅建業者は,自ら売主として,他人物(自己の所有に属しない物件の1つ)の売買契約(予約を含む)を,宅建業者でない者と締結することはできませんが(宅建業法・33条の2・1号)

 宅建業者間の取引では禁止されていないので(宅建業法・77条・2項)と売買契約の予約をした時点で,が,当該宅地の所有者との間で当該宅地をが取得する旨の契約を一切締結していなかったとしても,宅建業法に違反しません


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