宅建業法 実戦篇

クーリングオフの過去問アーカイブス 昭和59年・問42 契約場所によるクーリングオフの可否


宅地建物取引業者は,自ら売主となってに土地付建物を売却した。この場合,が宅地建物取引業法第37条の2 (事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等) の規定に基づいてAB間の売買契約を解除することができないものは,次の記述のうちどれか。
(昭和59年・問42)

1.「AB間の売買契約が,の申出により,が現地案内所として宅地建物取引業法第50条第2項の規定に基づく届出をしたテント張りの案内所で締結されたものである場合」

2.「AB間の売買契約が,の申出により,主催の旅行先の温泉旅館の一室で締結されたものである場合」

3.「AB間の売買契約が,が当該物件の売却の媒介を依頼していた宅地建物取引業者の申出により,の事務所において締結されたものである場合」

4.「AB間の売買契約が,の申出により,の行きつけの喫茶店で締結されたものである場合」

【正解】

解除できる 解除できる 解除できない 解除できる

●買受の申込と契約締結
 買受の申込をした場所と契約の締結をした場所が異なっている場合は,<買受の申込をした場所>で,クーリングオフの適用があるかないか判断します。(⇒ 買受の申込をしたのが事務所等以外であれば,クーリングオフできる。)

 本問題のように買受の申込場所について特に指定がない場合は,契約の締結場所でクーリングできるかどうか判断します。

1.「AB間の売買契約が,の申出により,が現地案内所として宅地建物取引業法第50条第2項の規定に基づく届出をしたテント張りの案内所で締結されたものである場合」

2.「AB間の売買契約が,の申出により,主催の旅行先の温泉旅館の一室で締結されたものである場合」

【正解:解除できる

◆契約締結場所によっては,クーリングオフできる

 <現地のテント張りの案内所>や<温泉旅館の一室>で契約が締結された場合,買受の意思が正常に形成されたとは言えず,その場の雰囲気や高揚感でつい契約してしまうということがあります。

 宅建業法では,このような不明確かつ不安定な状況で締結された契約については,クーリングオフできるとし,一般消費者を保護しています(宅建業法・37条の2・第1項)

3.「AB間の売買契約が,が当該物件の売却の媒介を依頼していた宅地建物取引業者の申出により,の事務所において締結されたものである場合」

【正解:解除できない

◆媒介業者の事務所で契約が締結されるとクーリングオフをすることはできない

 宅建業者が自ら売主として売却するのに,他の宅建業者に媒介・代理を依頼した場合でも,宅建業者が自ら売主として売買することに変わりはないので,宅建業者ではない者と契約を締結したときには,クーリングオフの規定が適用されます。例えば,媒介業者のテント張りの案内所で締結された契約については,買主はクーリングオフの規定によって契約を解除することができます。

 しかし,媒介の依頼を受けた宅建業者の「事務所」や「土地に定着する建物内に設けられた案内所」等で契約が締結された場合は,クーリングオフの規定によって契約を解除することはできません。(宅建業法施行規則・16条の5・第1項・ハ〜ホ)

4.「AB間の売買契約が,の申出により,の行きつけの喫茶店で締結されたものである場合」

【正解:解除できる

◆買主の申出により,買主の行きつけの喫茶店で契約が締結−クーリングオフできる

 自ら売主の宅建業者の相手方 (宅建業者ではない者) が,その自宅又は勤務する場所において宅地又は建物の売買契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合,その相手方の自宅又は勤務する場所での買受の申込や締結された契約についてクーリングオフすることはできません(宅建業法施行規則・16条の5・第2項)

 しかし,買主の申出によるものだとしても,買主の行きつけの喫茶店についてはクーリングオフの規定が適用されない場所として国土交通省令では規定されていないため,はクーリングオフの規定により契約を解除することができます。

●クーリングオフ 〔事務所等以外の場所でした,申込の撤回又は契約の解除〕
 宅建業者が自ら売主の場合に,事務所等以外の場所で行われた買受の申込や契約については,正常な契約意思の形成が阻害されることがあるので,一定の条件のもとに無条件で解約できる。これをクーリングオフという。

 クーリングオフは,書面によって行使しなければならず,申込者又は買主がクーリングオフをする旨の書面を発したときにその効力が生じる。〔発信主義

 ただし,以下の場合はクーリングオフをすることはできない。

 ・申込者又は買主が,物件の引渡しを受け,かつ,代金を全額支払ったとき(宅建業法・37条の2・第1項第2号)

 ・業者が,撤回等を行うことができる旨及びその方法を,国土交通省令で定める事項を記載した書面を交付して,告げた日から起算して8日を経過したとき(宅建業法・37条の2・第1項第1号,施行規則・16条の6)

手付放棄による解除や,瑕疵担保責任による解除,契約不履行による解除などの民法上の解除事由による解除は,クーリングオフとは別個にすることができる。

宅建業者は,クーリングオフによる損害賠償や違約金の支払を要求することはできない。


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