宅建業法 実戦篇
媒介契約の過去問アーカイブス 昭和59年・問46
意見の根拠の明示・取引態様の別の明示・報酬の限度額
宅地建物取引業者Aは,宅地建物取引業者でないBからB所有の土地付建物の売却の媒介を依頼され,これを承諾した。この場合,Aが宅地建物取引業法違反とならないものは,次の記述のうちどれか。(昭和59年・問46) |
1.「Aは,Bの売却希望価額は高過ぎるとして,売り出し価額を下げるよう意見を述べたが,その際,Bから特に求められなかったので,意見の根拠は示さなかった。」 |
2.「Aは,その媒介により,Cを買主として,「第1回目の中間金が支払われた後は,売主は手附倍返しによる契約の解除はできない」とする売買契約をBC間に成立させた。」 |
3.「Aは,Bから「私の名前は伏せてほしい」と言われたので,「売主A」と表示して広告した。」 |
4.「A (消費税免税事業者) は, その媒介により,Dを買主として,売買価額を2,000万円(消費税及び地方消費税は含まない。)とする売買契約をBD間に成立させたので,B及びDの合意のもとに,Bから100万円,Dから32万円の報酬を受領した。なお,みなし仕入れ率については考慮しないものとする。」改 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
違反する | 違反しない | 違反する | 違反する |
1.「Aは,Bの売却希望価額は高過ぎるとして,売り出し価額を下げるよう意見を述べたが,その際,Bから特に求められなかったので,意見の根拠は示さなかった。」 |
【正解:違反する】 ◆価額・評価額について意見を述べるときは根拠を明らかにする 宅建業者が,宅地・建物の売買・交換の媒介契約をするときに,媒介する宅地・建物の価額や評価額について意見を述べるときには,求められなくてもその根拠を明らかにしなければいけません(宅建業法・34条の2・第2項)。したがって,本肢は宅建業法に違反します。
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●断定的判断の提供の禁止−契約の締結の勧誘での制限 |
宅建業者又はその代理人,使用人その他の従業者は,宅建業に係る契約の締結の勧誘をするに際し,相手方等に対し,利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為をしてはならない(宅建業法・47条の2・第1項)。 |
2.「Aは,その媒介により,Cを買主として,「第1回目の中間金が支払われた後は,売主は手附倍返しによる契約の解除はできない」とする売買契約をBC間に成立させた。」 |
【正解:違反しない】 ◆手附放棄による契約解除の特約 宅建業者A 宅建業者が自ら売主として,宅建業者ではない者と売買契約を締結する際に,手附を受領したときは, その手附がいかなる性質のものであつても,当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,買主はその手附を放棄して,宅建業者はその倍額を償還して,契約の解除をすることができ(宅建業法・34条の2・第2項), これに反する特約で買主に不利な特約は無効です(宅建業法・34条の2・第3項)。 しかし,本肢の場合,Aは自ら売主ではなく,媒介するのですから,BC間の特約については宅建業法上,何ら制限を受けません。 |
3.「Aは,Bから「私の名前は伏せてほしい」と言われたので,「売主A」と表示して広告した。」 |
【正解:違反する】 ◆取引態様の別の明示 媒介の依頼者から<名前を伏せてほしい>と言われたとしても, 宅建業者は,広告をするとき(又取引について注文を受けたときは遅滞なく),取引態様の別の明示をしなければならない (宅建業法・34条) ので,宅建業法に違反します。
●広告をするときの明示義務
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4.「A (消費税免税事業者) は, その媒介により,Dを買主として,売買価額を2,000万円(消費税及び地方消費税は含まない。)とする売買契約をBD間に成立させたので,B及びDの合意のもとに,Bから100万円,Dから32万円の報酬を受領した。なお,みなし仕入れ率については考慮しないものとする。」 |
【正解:違反する】 ◆報酬の限度額 依頼者の一方から受けられる報酬の最高限度額を,400万円以上の場合の速算式を使って,取引物件の価額×3%+6万円で計算すると 2,000万円×3%+6万円=60万円+6万円 ⇒ 66万円 つまり,B,Dのそれぞれから 66万円を限度として報酬を受け取れます。 本肢では,Bから100万円を受領しているので,宅建業法に違反します。
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