宅建業法 実戦篇
クーリングオフの過去問アーカイブス 昭和60年・問43
宅地建物取引業法第37条の2 (事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等) の規定に基づき売買契約の解除をする場合に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和60年・問43) |
1.「宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約であれば,買主が宅地建物取引業者であっても契約の解除をすることができる。」 |
2.「売買契約の解除は,買主がその旨の意思表示を口頭で行ったときは直ちにその効力を生じ,書面により行ったときは当該書面を発信したときにその効力を生じる。」 |
3.「売主である宅地建物取引業者が売買契約の解除をすることができる旨及びその方法を告げなかったときは,買主は,宅地又は建物の引渡しを受け,かつ,その代金の全部を支払った場合でも契約の解除をすることができる。」 |
4.「宅地建物取引業者が10戸以上の一団のマンションの分譲を,当該マンションの一室に案内所を設置して行う場合には,当該案内所の中で締結された売買契約は解除することができない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約であれば,買主が宅地建物取引業者であっても契約の解除をすることができる。」 |
【正解:×】 ◆宅建業者が買主のときは,クーリングオフによる解除をすることはできない クーリングオフの規定は,宅建業者が自ら売主で,かつ,買主が宅建業者ではない場合の規定です。買主が宅建業者のときは適用されないので(宅建業法・78条2項),買主である宅建業者は,クーリングオフの規定による解除をすることはできません。
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2.「売買契約の解除は,買主がその旨の意思表示を口頭で行ったときは直ちにその効力を生じ,書面により行ったときは当該書面を発信したときにその効力を生じる。」 |
【正解:×】 ◆書面を発信したときに,申込の撤回等の効力が生じる 買受の申込の撤回や契約の解除〔申込の撤回等〕は,口頭ではダメで,書面によりしなければなりません(宅建業法・37条の2・第1項)。 申込の撤回等は,書面を発したときにその効力が生じます(宅建業法・37条の2・第2項)。
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3.「売主である宅地建物取引業者が売買契約の解除をすることができる旨及びその方法を告げなかったときは,買主は,宅地又は建物の引渡しを受け,かつ,その代金の全部を支払った場合でも契約の解除をすることができる。」 |
【正解:×】 ◆引渡し+代金の全額支払い ⇒ クーリングオフできない 申込者等が,当該宅地又は建物の引渡しを受け,かつ,その代金の全部を支払ったときは,申込みの撤回等を行うことはできなくなります(宅建業法・37条の2・第1項第2号)。
▼宅建業者が,<申込みの撤回等を行うことができる旨及びその方法について,書面を交付して,告げていない場合>は,申込者等は,クーリングオフできる期間の起算点が始まっていないので,いつでもクーリングオフができます。 しかし,本肢のように,すでに引渡しを受け,かつ,代金の全額を支払ったときには,クーリンググオフの説明を受けていなくても,クーリングオフをすることはできなくなります。 |
4.「宅地建物取引業者が10戸以上の一団のマンションの分譲を,当該マンションの一室に案内所を設置して行う場合には,当該案内所の中で締結された売買契約は解除することができない。」 |
【正解:○】 ◆クーリングオフできない場所 契約の締結が,事務所その他国土交通省令で定める場所<事務所等>で行われた場合は,買主はクーリングオフをすることができません(宅建業法・37条の2・第1項)。<事務所等で買受の申込をし,事務所等以外で契約の締結をした買主もクーリングオフをすることはできない> 本肢での<マンションの一室に設置された案内所>は,国土交通省令で定める場所に該当しますから,買主はクーリングオフをすることができません(宅建業法施行規則・16条の5・1号ロ)。
※買受の申込と契約の締結の場所が異なるときは,買受の申込場所でクーリングオフの可否を判断します。 |
●クーリングオフをすることができない場所−事務所等 | ||||
・事務所 (自ら売主の宅建業者の事務所,他の業者から依頼を受けて媒介・代理する業者の事務所) (宅建業法・37条の2・第1項)
・国土交通省令で定める場所(1) 事務所以外の以下の場所で専任の取引主任者を設置しなければならない場所(宅建業法施行規則・16条の5・1号)
・国土交通省令で定める場所(2) 宅建業者の相手方が自宅又は勤務する場所において売買契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合は,その相手方の自宅又は勤務する場所(宅建業法施行規則・16条の5・2号) |
●買受の申込と契約締結 |
買受の申込をした場所と契約の締結をした場所が異なっている場合は,<買受の申込をした場所>で,クーリングオフの適用があるかないか判断します。(⇒ 買受の申込をしたのが事務所等以外であれば,クーリングオフできる。)
買受の申込場所について問題文で特に指定がない場合は,契約の締結場所でクーリングできるかどうか判断します。 |
●買受の申込をした場所と契約の締結をした場所が異なっている場合
契約の締結場所=事務所等 | 契約の締結場所=事務所等以外 | |
買受の申込場所=事務所等 | クーリングオフできない | クーリングオフできない |
買受の申込場所=事務所等以外 | クーリングオフできる | クーリングオフできる |