宅建業法 実戦篇

報酬の限度額の過去問アーカイブス 昭和60年・問44


宅地建物取引業者 (消費税課税事業者) が 受け取ることのできる報酬に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和60年・問44)

1.「店舗の賃貸借の媒介に関し,権利金 (権利設定の対価として支払われる金銭であって返還されないもの) の授受がある場合の依頼者の一方から受ける報酬の額は,当該権利金を売買代金とみなして算出した報酬の限度額に賃借料の1.05ヵ月分に相当する額を加えた額以内とすることができる。」

2.「宅地建物取引業者相互間の取引の媒介については,宅地建物取引業法第46条の報酬に関する規定は適用されない。」

3.「アパートの賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は,当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き,借賃の1.05ヵ月分の1/2以下である。」

4.「宅地の貸借の代理に関しては依頼者及び当該貸借の相手方から報酬を受ける場合においては,代理の依頼者から受ける報酬の額と当該貸借の相手方から受ける報酬の額の合計額が借賃の2.1ヵ月分に相当する金額を超えてはならない。」

【正解】

× × ×

●消費税課税事業者
  本問題は,宅建業者が消費税課税事業者の場合です。

1.「店舗の賃貸借の媒介に関し,権利金 (権利設定の対価として支払われる金銭であって返還されないもの) の授受がある場合の依頼者の一方から受ける報酬の額は,当該権利金を売買代金とみなして算出した報酬の限度額に賃借料の1.05ヵ月分に相当する額を加えた額以内とすることができる。」

【正解:×

◆権利金の授受がある場合の特例

 「宅地」または「居住用以外の建物」の貸借の媒介・代理では,権利金を売買に係る代金の額とみなして算出したものを報酬とすることができます。この場合は,売買の媒介・代理での報酬の限度額が適用されます(告示・第6,建設省告示・第1552号 (昭和45年10月23日),最終改正・国土交通省告示・第100号 (平成16年2月16日) )

 本肢では,告示の規定により算出したものに,賃借料の1.05ヵ月分に相当する額を加えているので,誤りです。

 KEY 

 「宅地」または「居住用以外の建物」の賃貸借

権利金の額を売買代金の額とみなして算出したものを
報酬の額とすることができる

2.「宅地建物取引業者相互間の取引の媒介については,宅地建物取引業法第46条の報酬に関する規定は適用されない。」

【正解:×

◆報酬規定は,宅建業者間の取引にも適用される

 宅建業者は,国土交通大臣が定めた報酬の額を超えて報酬を受けてはならず(宅建業法・46条2項),宅建業者間の取引においても,この規定は適用されるので(宅建業法・78条2項,本肢は誤りです。

 KEY 

 宅建業者間の取引にも,報酬の規定は適用される。

宅建業者間の取引では,自ら売主の8種制限は適用されないが,
それ以外の宅建業法の規定は適用される。

3.「アパートの賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は,当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き,借賃の1.05ヵ月分の1/2以下である。」

【正解:

◆貸借の媒介に関する報酬の額

 居住用の建物の貸借の媒介では,依頼者の双方〔貸主・借主〕から受けることができる報酬の合計額は,借賃の1月分の1.05倍以内であり,依頼者の一方から受けることができる報酬の額は,当該依頼者の承諾を得ている場合を除いて,借賃の1ヵ月分の0.525倍以内です(告示・第4)

 KEY 

居住用建物の賃貸借 

1) 依頼者の双方〔貸主・借主〕から受ける報酬の合計額 ⇒ 借賃の1月分の1.05倍以内

2) 依頼者の一方から受けることができる報酬の額 ⇒ 借賃の1ヵ月分の0.525倍以内  

当該依頼者の承諾を得ているときは,一方から借賃の1ヵ月分の0.525倍を
超えて報酬を受けることができるが,1) の範囲内でなければならない。   

4.「宅地の貸借の代理に関しては依頼者及び当該貸借の相手方から報酬を受ける場合においては,代理の依頼者から受ける報酬の額と当該貸借の相手方から受ける報酬の額の合計額が借賃の2.1ヵ月分に相当する金額を超えてはならない。」

【正解:×

◆貸借の代理に関する報酬の額

 宅地の貸借の代理に関して依頼者から受けることができる報酬の額は,借賃の1月分の1.05倍以内です。依頼者だけでなく,依頼者の相手方からも報酬を受ける場合の報酬の合計額も借賃の1月分の1.05倍を超えてはいけません(告示・第5)

 本肢では,<代理の依頼者から受ける報酬の額と当該貸借の相手方から受ける報酬の額の合計額が借賃の2.1ヵ月分に相当する金額を超えてはならない>としているので,誤りです。

 KEY 

宅地・建物の貸借の代理 

 1) 依頼者から受けることができる報酬の額は,借賃の1月分の1.05倍以内

2) 依頼者だけでなく,依頼者の相手方からも報酬を受ける場合の報酬の
合計額も借賃の1月分の1.05倍以内 

 ※上記のほか,居住用建物以外の貸借で,
権利金の授受がある場合は,権利金を売買代金とみなして
算出したものを,報酬の額とすることができる。              


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