宅建業法 実戦篇

重要事項の説明の過去問アーカイブス 昭和61年・問36 定めがない場合


宅地建物取引業法第35条の規定に基づく重要事項の説明に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法違反とならないものはどれか(昭和61年・問36)

1.「損害賠償額の予定又は違約金に関する事項については,特に定めないこととしているので,説明を省略した。」

2.「取引物件の上に存する抵当権については,当該物件の引渡し時点では抹消される予定なので,説明を省略した。」

3.「私道に関する負担がなかったので,説明を省略した。」

4.「取引物件が工事完了後数年経過したものであったので,完了時における形状・構造その他国土交通省令で定める事項について説明を省略した。」

【正解】

違反する 違反する 違反する 違反しない

●建設省計画局長通達(昭和42.9.23)
・宅建業法35条1項2項に掲げる事項は,宅建業者がその相手方又は依頼者に説明すべき事項のうち,最小限の事項を規定したものであり,これらの事項以外にも場合によっては説明する重要事項が有りえること。

・また,宅建業法35条1項2項に違反する行為は,特別の事情がない限り,47条第1号に規定する依頼者等に対し重要な事項について故意に事実を告げず,または不実のことを告げるものと解されること

1.「損害賠償額の予定又は違約金に関する事項については,特に定めないこととしているので,説明を省略した。」

【正解:違反する

◆損害賠償額の予定,違約金

 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項は,定めがないから説明しなくてもよいということにはなりません。損害賠償額の予定又は違約金に関する事項は,定めの有無・額・趣旨・内容について,35条の重要事項として説明する義務があります(宅建業法・35条1項9号)

  したがって,定めがなければ省略できるとする本肢は誤りです。

●損害賠償額の予定または違約金に関する事項
損害賠償額の予定又は違約金の有無,その額,趣旨,内容など。

 KEY 

 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
                  ↓
   35条の重要事項として説明する義務がある。

2.「取引物件の上に存する抵当権については,当該物件の引渡し時点では抹消される予定なので,説明を省略した。」

【正解:違反する

◆取引物件の上に存する登記された権利の種類や内容

 取引物件の上に存する登記された権利 (地上権・永小作権・地役権・先取特権・質権・抵当権・賃借権・採石権・仮登記された権利買戻し権) の種類及び内容については,35条の重要事項として説明する義務があります(宅建業法・35条1項1号)

 引渡し時点では抵当権が抹消される予定であるといっても予定に過ぎず,もし抹消されなかった場合は,競売で買主が取引物件についての権利を失うことも考えられ,説明を省略することはできません。

 KEY 

 取引物件の上に存する登記された権利

35条の重要事項として説明する義務がある。

3.「私道に関する負担がなかったので,説明を省略した。」

【正解:違反する

◆私道負担

 私道負担とは,売買の対象の土地に私道部分がありその部分には建築できない,私道を利用するための負担金がある,通行地役権がある,などのことを指します。〔将来負担することになる場合も含む。〕

 私道負担があると買主に相当の負担を強いることになるので,その有無についても説明しなければなりません(宅建業法・35条1項3号)

 したがって,私道負担がなければ省略できるとする本肢は誤りです。

●私道負担に関する事項
私道負担の有無,私道負担のある部分の面積,位置など。

 KEY 

 私道負担に関する事項
    ↓
              35条の重要事項として説明する義務がある。             

4.「取引物件が工事完了後数年経過したものであったので,完了時における形状・構造その他国土交通省令で定める事項について説明を省略した。」

【正解:違反しない

◆完了時における形状・構造

 取引物件が工事完了前のときは,完了時における形状,その他国土交通省令で定める事項について,図面が必要なときは35条書面と図面を交付して,説明しなければいけませんが(宅建業法・35条1項5号),完了後の物件の場合は,説明を省略しても構いません。

  工事完了前の物件についての重要事項説明 ⇒ 必要であれば図面も交付する
宅地 ・完了時における形状,構造

・宅地の造成の工事の完了時における当該宅地に接する道路の構造及び幅員

建物 ・完了時における形状,構造

・建築工事完了時における当該建物の主要構造部,内装及び外装の構造又は仕上げ並びに設備の設置及び構造


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