宅建業法 実戦篇

自ら売主の制限の過去問アーカイブス 昭和62年・問50 

損害賠償額の予定等の制限・手付放棄による解除・手付金の額の制限・クーリングオフ


宅地建物取引業者は,自己所有の宅地を1,000万円で宅地建物取引業者でないに売却する契約を締結した。この場合,宅地建物取引業法の規定によれば,次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和62年・問50)

1.「契約の締結に際し,当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を200万円と予定し,違約金の額を100万円と定めた場合,損害賠償の額と違約金の額を合算した300万円のうち,200万円を超える部分については無効である。」

2.「契約の締結に際し,に対し,契約の成立を証する手附として10万円を支払った場合,が履行に着手するまでの間は,はこの10万円を放棄しさえすれば,この売買契約を解除できる。」

3.「契約の締結に際し,に対し,300万円を解約手附として支払った。は,が履行に着手するまでは手附の放棄により契約を解除することができるが,この場合でも,100万円は不当利得として返還の請求ができる。」

4.「は当該宅地の所在地付近の喫茶店で契約を締結したが,は契約の締結が軽率であったと反省して,2日後に宅地建物取引業法第37条の2の規定に基づく契約の解除をした。この場合,は契約解除により被った損害についてに賠償の請求をすることができる。」

【正解】

×

1.「契約の締結に際し,当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を200万円と予定し,違約金の額を100万円と定めた場合,損害賠償の額と違約金の額を合算した300万円のうち,200万円を超える部分については無効である。」

【正解:

◆損害賠償額の予定等の制限−20%超の部分は無効

 宅建業者は,自ら売主として宅建業者ではない者と売買契約を締結する際に,債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額と違約金の額の合計額が代金の20%を超えることとなる定めをしてはいけません。これに反する特約をしたときは,代金の20%を超える部分について無効になります(宅建業法38条)

 本肢の場合,宅地の代金が1,000万円なので,その20%を超える部分,つまり200万円を超える部分について無効になります。

 KEY 

債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う
損害賠償の予定額と違約金の額の合計額 

代金の20%を超えることとなる定めをすることはできない。
代金の20%を超える部分について無効になる。

2.「契約の締結に際し,に対し,契約の成立を証する手附として10万円を支払った場合,が履行に着手するまでの間は,はこの10万円を放棄しさえすれば,この売買契約を解除できる。」

【正解:

◆手付の性質に関係なく,解約手付として扱う

 宅建業者は,自ら売主として宅建業者ではない者と売買契約を締結する際に手附を受領したときは,その手附がいかなる性質であっても,当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,買主その手附を放棄して,当該宅建業者その倍額を償還して,契約の解除をすることができます(宅建業法39条2項)。 また,この規定に反する特約で,買主に不利なものは,無効です (宅建業法39条3項)

 本肢では,<契約の成立を証する手附>(証約手付) という名目で受領していますが,宅建業法では手付の性質がいかなるものであっても,解約手付 (当事者の一方が履行に着手するまでは,買主の手付損,売主の手付倍戻しによって契約を解除できる。) とみなします。

 KEY 

 宅建業者が手付を受領

その性質がいかなるものであっても,解約手付になる。

3.「契約の締結に際し,に対し,300万円を解約手附として支払った。は,が履行に着手するまでは手附の放棄により契約を解除することができるが,この場合でも,100万円は不当利得として返還の請求ができる。」

【正解:

◆代金の20%を超える部分は不当利得として返還請求できる

 宅建業者は,自ら売主として宅建業者ではない者と売買契約を締結する際に,代金の20%を超える額の手附を受領することはできません (宅建業法39条3項)

 したがって,買主が手附放棄により契約解除する場合は,代金の20%分(200万円)については手附として放棄することになりますが,代金の20%を超える額の100万円(300万円−200万円)については上記の規定により手附としては扱われないので,不当利得として返還の請求をすることができます。

 KEY 

宅建業者は,代金の20%を超える額の手附を受領できない 

買主が手附放棄により解除するときは,
代金の20%を超える額を不当利得として返還請求できる。

4.「は当該宅地の所在地付近の喫茶店で契約を締結したが,は契約の締結が軽率であったと反省して,2日後に宅地建物取引業法第37条の2の規定に基づく契約の解除をした。この場合,は契約解除により被った損害についてに賠償の請求をすることができる。」

【正解:×

◆クーリングオフによる契約解除により被った損害賠償の請求をすることはできない

 宅建業者は,自ら売主として宅建業者ではない者と売買契約を締結して,買主が書面によりクーリングオフによる契約解除をした場合,契約解除により被った損害について買主に賠償の請求をすることはできません (宅建業法37条の2第1項後段)

 KEY 

クーリングオフによる契約解除により被った損害賠償の請求をすることはできない 


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