宅建業法 実戦篇
監督処分の過去問アーカイブス 昭和63年・問44
甲県知事の免許を受けた宅地建物取引業者Aに対する監督処分に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。なお,Aは個人とする。(昭和63年・問44) |
1.「Aが免許を受けてから1年以内に事業を開始しない場合において,事業を開始しなかったことについて正当な理由があるときは,甲県知事はAの免許を取り消すことができない。」 |
2.「甲県知事は,Aの所在を確知できないときは,甲県の公報でその事実を公告し,その公告の日から30日を経過してもAから申出がないときであっても,聴聞をしなければ,Aの免許を取り消すことはできない。」 |
3.「Aが宅地建物取引業の業務に関して国土利用計画法の規定に違反し,懲役の刑に処せられた場合には,甲県知事は,Aの免許を取り消さなければならない。」 |
4.「甲県知事から宅地建物取引業法第69条第2項の規定による聴聞の通知を受けたAが,聴聞の期日に出頭しないときは,甲県知事は,その理由のいかんを問わず聴聞を行わないで処分をすることができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
1.「Aが免許を受けてから1年以内に事業を開始しない場合において,事業を開始しなかったことについて正当な理由があるときは,甲県知事はAの免許を取り消すことができない。」 |
【正解:×】 ◆免許を受けて1年以内に事業を開始しない ⇒ 免許取消し 免許権者〔国土交通大臣または都道府県知事〕は,宅建業者が免許を受けてから1年以内に事業を開始しなかったり,又は,引き続き1年以上事業を休止したときは,免許を取り消さなければなりません(宅建業法66条1項6号)。 これは正当な理由のあるなしに関係なく適用されるので,本肢は誤りです。
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2.「甲県知事は,Aの所在を確知できないときは,甲県の公報でその事実を公告し,その公告の日から30日を経過してもAから申出がないときであっても,聴聞をしなければ,Aの免許を取り消すことはできない。」 |
【正解:×】 ◆所在不確知での免許取消し 免許権者は,宅建業者への指示処分及び業務停止処分,免許取消し,取引主任者の事務の禁止処分,登録の消除処分などをするときは,原則として,聴聞を行わなければなりません(宅建業法69条1項,2項)が,宅建業者の所在不確知での免許取消し(67条1項)では聴聞の必要がありません。 免許権者が,免許を付与している業者の所在がわからない状態〔実体として存在するかどうかも不明〕で放置するのは好ましくないため,所在を確知できない旨の公告をすることで免許を取り消すことができるようにしたものです。 |
●宅建業法67条 |
第67条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者の事務所の所在地を確知できないとき、又はその免許を受けた宅地建物取引業者の所在(法人である場合においては、その役員の所在をいう。)を確知できないときは、官報又は当該都道府県の公報でその事実を公告し、その公告の日から30日を経過しても当該宅地建物取引業者から申出がないときは、当該宅地建物取引業者の免許を取り消すことができる。 2 前項の規定による処分については、行政手続法第3章 の規定は、適用しない。 |
3.「Aが宅地建物取引業の業務に関して国土利用計画法の規定に違反し,懲役の刑に処せられた場合には,甲県知事は,Aの免許を取り消さなければならない。」 |
【正解:○】 ◆禁錮以上の刑に処せられたとき ⇒ 免許取消し 宅建業者が禁錮以上の刑に処せられたときは,欠格要件に該当するので,免許権者は免許を取り消さなければいけません(宅建業法66条1項1号,5条1項3号)。 |
●類題 |
1.「宅地建物取引業者は,国土利用計画法の規定に違反して刑罰に処せられた場合,これに伴い,宅地建物取引業法の罰則の適用を受けることはないが,業務停止処分を受けることがある。」(平成4年問49肢1) |
【正解 : ○】宅建業者は,業務に関し他の法令に違反し〔罰金刑等〕,宅建業者として不適当だと認められるときは,監督処分として,業務停止処分を受けることがあります(宅建業法65条1項3号,2項1号の2,4項1号)。また,他の法令に重ねて,宅建業法の罰則の適用を受けることはありません。
▼禁錮以上の刑罰に処せられた場合に注意!! 他の法令に違反して宅建業者が禁錮以上の刑に処せられたときは,欠格要件に該当するので,免許権者は免許を取り消さなければいけません(宅建業法66条1項1号,5条1項3号)。 |
2.「宅地建物取引業者Aが,宅地建物取引業の業務に関して,建築基準法の規定に違反して罰金に処せられた場合,これをもって業務停止処分を受けることはない。」(平成14年問39肢1) |
【正解 : ×】宅建業の業務に関して,建築基準法の規定に違反して罰金に処せられているので,<業務停止処分を受けることはない>とする本肢は誤りになる。 |
4.「甲県知事から宅地建物取引業法第69条第2項の規定による聴聞の通知を受けたAが,聴聞の期日に出頭しないときは,甲県知事は,その理由のいかんを問わず聴聞を行わないで処分をすることができる。」 |
【正解:×】 ◆聴聞の手続 聴聞の通知を受けた業者が,聴聞の期日に出頭しないときであっても,免許権者は,聴聞を行わないで処分をすることはできません(宅建業法69条2項,行政手続法13条1項)。 正当な理由なく聴聞の期日に出頭しない場合に,改めて意見を述べ及び証拠書類等を提出する機会を与えることなく,聴聞を終結することはできますが,聴聞を行わなくてもよいということではありません(行政手続法23条1項)。 |
●行政手続法23条 |
(当事者の不出頭等の場合における聴聞の終結) 第23条 主宰者は、当事者の全部若しくは一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、かつ、第21条第1項に規定する陳述書若しくは証拠書類等を提出しない場合、又は参加人の全部若しくは一部が聴聞の期日に出頭しない場合には、これらの者に対し改めて意見を述べ、及び証拠書類等を提出する機会を与えることなく、聴聞を終結することができる。 2 主宰者は、前項に規定する場合のほか、当事者の全部又は一部が聴聞の期日に出頭せず、かつ、第21条第1項に規定する陳述書又は証拠書類等を提出しない場合において、これらの者の聴聞の期日への出頭が相当期間引き続き見込めないときは、これらの者に対し、期限を定めて陳述書及び証拠書類等の提出を求め、当該期限が到来したときに聴聞を終結することとすることができる。 |