宅建業法 実戦篇
自ら売主の制限の過去問アーカイブス 昭和63年・問46
手付について信用の供与による契約締結誘引の禁止・損害賠償額の予定等の制限・
重要事項の説明
宅地建物取引業者Aは,自ら所有する宅地を売却する契約を締結した。この場合において,次の三つの記述のうち,正しいものはいくつあるか。(昭和63年・問46) |
ア.宅地建物取引業者ではない買主Bが,「現金の持合せがない。」と言ったので,Aは,「私が立て替えて手付を払ったことにしておく。」と言って契約の締結を勧めた。手付について信用を供与することをBが了承しているときは,宅地建物取引業法違反とはならない。 |
イ.宅地建物取引業者ではない買主Cが,「私は決して契約違反はしないから,損害賠償の額は売買代金の3割でよい。」と言ったので,その旨契約書に記載した。Cが了承しているときは,宅地建物取引業法違反とはならない。 |
ウ.宅地建物取引業者である買主Dが,「この宅地について熟知しているから,重要事項の説明はしなくてよい。」と言ったので,Aは,重要事項の説明をしなかった。 Dが了承しているときは,必ずしも重要事項の説明をしなくても,宅地建物取引業法違反とはならない。 |
1.「一つ」 |
2.「二つ」 |
3.「三つ」 |
4.「なし」 |
【正解】4
ア | イ | ウ |
× | × | × |
●Comments |
本問題は個数問題ですが,アイウの全てが同年のほかの問題で出題されている事項でした。このような同年での重複出題はマレにあります。 また,正しいものはいくつあるかと問うているのに,<正しいものはゼロ>というのも宅建試験らしい設定です。 |
ア.宅地建物取引業者ではない買主Bが,「現金の持合せがない。」と言ったので,Aは,「私が立て替えて手付を払ったことにしておく。」と言って契約の締結を勧めた。手付について信用を供与することをBが了承しているときは,宅地建物取引業法違反とはならない。 |
【正解:×】 ◆信用の供与の禁止 宅建業者は,その業務に関し,相手方等に対して,手付について貸付その他,信用の供与をすることによって契約の締結を誘引する行為をしてはいけません(宅建業法47条第3項)。 宅建業者が手付を立て替えるというのは,正に禁止されている行為であり,宅建業法違反とはなるので,アは誤りです。 ▼昭和63年問40肢2と重複出題。 |
イ.宅地建物取引業者ではない買主Cが,「私は決して契約違反はしないから,損害賠償の額は売買代金の3割でよい。」と言ったので,その旨契約書に記載した。Cが了承しているときは,宅地建物取引業法違反とはならない。 |
【正解:×】 ◆損害賠償額の予定等の制限−20%超の部分は無効 宅建業者は,自ら売主として宅建業者ではない者と売買契約を締結する際に,債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額と違約金の額の合計額が代金の20%を超えることとなる定めをしてはいけません。これに反する特約をしたときは,代金の20%を超える部分について無効になります(宅建業法38条)。 イでの<損害賠償の額は売買代金の3割>はこの規定に反するので,宅建業法に違反し,イは誤りです。 ▼昭和63年問39肢3と重複出題。 |
ウ.宅地建物取引業者である買主Dが,「この宅地について熟知しているから,重要事項の説明はしなくてよい。」と言ったので,Aは,重要事項の説明をしなかった。 Dが了承しているときは,必ずしも重要事項の説明をしなくても,宅地建物取引業法違反とはならない。 |
【正解:×】 ◆相手方等が宅建業者でも,重要事項説明は省略できない。 相手方等〔買主・借主・交換では両当事者〕が宅建業者であっても,重要事項の説明や35条書面の交付は省略することはできず,また相手方等が了承しているとしても省略できないので,ウは誤りです。 自ら売主の8種制限については,買主が宅建業者であるときには適用が除外されますが,それ以外の宅建業法の規定は相手方等が宅建業者であっても取引の公正を図るために適用されます(宅建業法78条2項)。 ▼昭和63年問45肢2と重複出題。 |
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