宅建業法 

割賦販売の制限  所有権留保等の禁止(43条)


次の記述は,宅地建物取引業法の規定によれば,○か×か。

1.宅地建物取引業者は,自ら売主として宅地の割賦販売を行った場合は,その宅地を買主に引渡し,かつ,代金の額の3/10を超える金額の金銭の支払を受けた後は,担保の目的でその宅地を譲り受けてはならない。(昭和59年・問48・肢2)

2.宅地建物取引業者が自ら売主として,宅地建物取引業者でない買主と宅地 (価格5,000万円) の売買契約を締結した。その売買契約が 『宅地の引渡しまでに代金の一部として1,000万円支払う』 条件の割賦販売であった場合で,が1,000万円を支払い,が宅地を引き渡すときは,は,登記その他引渡し以外の売主の義務も履行しなければならない。(平成8年・問46・肢2)

3.宅地建物取引業者は,自ら売主として宅地建物取引業者でないと4,000万円の宅地の割賦販売の契約を締結し,引渡しを終えた。残代金1,000万円が未払であったため,は代金債務を保証する保証人を立てたが,は,宅地の所有権の登記を名義のままにしておいた。 これは宅地建物取引業法の規定に違反しない。(平成15年・問35・肢2)

【正解】

× ×

1.宅地建物取引業者は,自ら売主として宅地の割賦販売を行った場合は,その宅地を買主に引渡し,かつ,代金の額の3/10を超える金額の金銭の支払を受けた後は,担保の目的でその宅地を譲り受けてはならない。(昭和59年・問48・肢2)

【正解:

◆所有権留保等の禁止

 宅建業者は,自ら売主として宅地や建物の割賦販売を行った場合,買主に引渡し,かつ,代金の額の3/10を超える額の金銭の支払を受けた後は,担保の目的でその宅地を譲り受けてはいけません(宅建業法・43条2項)

2.宅地建物取引業者が自ら売主として,宅地建物取引業者でない買主と宅地 (価格5,000万円) の売買契約を締結した。その売買契約が 『宅地の引渡しまでに代金の一部として1,000万円支払う』 条件の割賦販売であった場合で,が1,000万円を支払い,が宅地を引き渡すときは,は,登記その他引渡し以外の売主の義務も履行しなければならない。(平成8年・問46・肢2)

【正解:×

◆所有権留保等の禁止

 宅建業者が自ら売主として宅建業者ではない者に対して割賦販売をする場合に,代金の30%を超える支払を受けているときには,原則として,引き渡すまでに,登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければいけません(宅建業法43条1項)

 買主は単に鍵などの引渡だけを受けていても,登記がなければ,売主による二重売買,又は売主が倒産した場合,買主保護に欠けることになるからです。

 しかし,本肢では代金の20%しか受領していないので,登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなくても,宅建業法には違反しません。

 したがって,本肢は誤りです。

●所有権留保の禁止の例外
 代金の30%を超える支払を受けていても,買主が,所有権の登記をした後の代金債務について,担保するための抵当権または不動産売買の先取特権の登記を申請する見込みのないとき,又は保証人を立てる見込みがないときは,登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなくてもよい(宅建業法43条1項但書)

所有権留保とは

 不動産の売買の場合,売買の目的物を引き渡しても,買主から代金全額の支払があるまでは,売主が売買の目的物の所有権を留保することをいいます。

 具体的には,割賦販売で支払代金が残っている場合に,<引渡しはしても,代金全額の支払が済むまでは所有権移転登記をしない>等のことをいいます。

3.宅地建物取引業者は,自ら売主として宅地建物取引業者でないと4,000万円の宅地の割賦販売の契約を締結し,引渡しを終えた。残代金1,000万円が未払であったため,は代金債務を保証する保証人を立てたが,は,宅地の所有権の登記を名義のままにしておいた。 これは宅地建物取引業法の規定に違反しない。(平成15年・問35・肢2)

【正解:×

◆所有権留保等の禁止

 宅建業者は,自ら売主として宅建業者ではない者との間で,割賦販売契約を締結した場合は,当該割賦販売に係る宅地又は建物を買主に引き渡すまでに,原則として,登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければなりません(宅建業法43条1項)

 (例外1) 当該宅地又は建物を引き渡すまでに代金の30%を超える額の金銭の支払を受けていないとき。

 (例外2) 買主が,所有権の登記をした後の代金債務について,これを担保するための抵当権や不動産売買の先取特権の登記を申請する見込みがないとき,又はこれを保証する保証人を立てる見込みがないとき。

 本肢では,買主は,代金の30%を超える額【3,000万円は代金の75%】を支払っており,かつ,残代金1,000万円についても保証人を立てているので,43条1項の規定の適用が除外される上の二つの例外の場合には該当しません。

 したがって,本肢は宅建業法に違反します。

●割賦販売での重要事項説明
 割賦販売では,契約が成立するまでに,通常の重要事項説明 (35条1項)に加えて,以下の事項についても書面を交付して,取引主任者をして,説明させなければなりません(35条2項)

現金販売価格(宅地又は建物の引渡しまでにその代金の全額を受領する場合の価格をいう。)

割賦販売価格(割賦販売の方法により販売する場合の価格をいう。)

宅地又は建物の引渡しまでに支払う金銭の額及び賦払金(割賦販売の契約に基づく各回ごとの代金の支払分で目的物の引渡し後のものをいう。)の額並びにその支払の時期及び方法

<コメント>割賦販売の出題は,42条 と このページの43条 で挙げたものが過去問の出題論点のほぼ全てです。出題頻度は少ないので,ザツと見る程度で十分でしょう。(現在,割賦販売は,ほとんど行われていません。)


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