税法その他 実戦篇

不動産鑑定評価基準の過去問アーカイブス 平成4年・問33


不動産の鑑定評価に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成4年・問33)

1.「鑑定評価の手法は,不動産の再調達に要する原価に着目する原価法,不動産の取引事例に着目する取引事例比較法及び不動産から生み出される収益に着目する収益還元法があり,原則として,この三手法を併用すべきである。」

2.「原価法において,土地の再調達原価は,建設請負により,請負者が発注者に対して直ちに使用可能な状態で引き渡す通常の場合を想定し,その土地の標準的な取得価格に当該土地の標準的な造成費と発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を加算して求める。」

3.「取引事例比較法の適用に当たっては,取引事例を豊富に秩序正しく収集すべきであり,投機的取引であると認められている事例は用いてはならない。」

4.「収益還元法は,賃貸用不動産又は一般企業用不動産の価格を求める場合に適用されるものであり,自用の住宅地の価格を求める場合には適用しない。」

【正解】

×

1.「鑑定評価の手法は,不動産の再調達に要する原価に着目する原価法,不動産の取引事例に着目する取引事例比較法及び不動産から生み出される収益に着目する収益還元法があり,原則として,この三手法を併用すべきである。」

【正解:

◆三手法の併用

 不動産鑑定評価基準そのままの文章です。

 鑑定評価方式の適用に当たっては,鑑定評価方式を当該案件に即して適切に適用すべきである。

 この場合,原則として,原価方式,比較方式,収益方式の三方式を併用すべきであり,対象不動産の種類,所在地の実情,資料の信頼性などにより三方式の併用が困難な場合においても,その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきである。

 総論 第8章 鑑定評価の手順 第6節 鑑定評価方式の適用

2.「原価法において,土地の再調達原価は,建設請負により,請負者が発注者に対して直ちに使用可能な状態で引き渡す通常の場合を想定し,その土地の標準的な取得価格に当該土地の標準的な造成費と発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を加算して求める。」

【正解:

◆再調達原価

原価法の定義―積算価格を求める

 原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法です(この手法による試算価格を積算価格という。)

 原価法は、対象不動産が建物又は建物及びその敷地である場合において、再調達原価の把握及び減価修正を適正に行うことができるときに有効であり、対象不動産が土地のみである場合においても、再調達原価を適正に求めることができるときはこの手法を適用することができます。 

再調達原価=対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合に
          おいて必要とされる適正な原価の総額 

 土地の場合は,建設請負により,請負者が発注者に対して直ちに使用可能な状態で引き渡す通常の場合を想定し,取得原価・造成費・発注者が負担する付帯費用を加算して求めます。

3.「取引事例比較法の適用に当たっては,取引事例を豊富に秩序正しく収集すべきであり,投機的取引であると認められている事例は用いてはならない。」

【正解:平成4年・問33・肢3,平成10年・問29・肢1

◆投機的取引はダメ

 取引事例を選択する要件の一つに「取引事例等に係る取引等の事情が正常なものと認められるものであること又は正常なものに補正することができるものであること」があり,投機的取引であると認められる事例等適正さを欠くものは選択できません。

●事例の収集について
事例の収集及び選択

(不動産鑑定評価基準・総論・第7章・第1節 価格を求める鑑定評価の手法 1 試算価格を求める場合の一般的留意事項 2事例の収集及び選択)

鑑定評価の各手法の適用に当たって必要とされる事例には、原価法の適用に当たって必要な建設事例、取引事例比較法の適用に当たって必要な取引事例及び収益還元法の適用に当たって必要な収益事例(以下「取引事例等」という。)がある。これらの取引事例等は、鑑定評価の各手法に即応し、適切にして合理的な計画に基づき、豊富に秩序正しく収集し、選択すべきであり、投機的取引であると認められる事例等適正さを欠くものであってはならない。

 取引事例等は、次の要件の全部を備えるもののうちから選択するものとする。

(1)次の不動産に係るものであること

 1. 近隣地域又は同一需給圏内の類似地域若しくは必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺の地域(以下「同一需給圏内の類似地域等」という。)に存する不動産

 2. 対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等における同一需給圏内に存し対象不動産と代替、競争等の関係が成立していると認められる不動産(以下「同一需給圏内の代替競争不動産」という。)。

(2)取引事例等に係る取引等の事情が正常なものと認められるものであること又は正常なものに補正することができるものであること。

(3)時点修正をすることが可能なものであること。

(4)地域要因の比較及び個別的要因の比較が可能なものであること。

4.「収益還元法は,賃貸用不動産又は一般企業用不動産の価格を求める場合に適用されるものであり,自用の住宅地の価格を求める場合には適用しない。」

【正解:×

◆収益還元法の適用対象

 収益還元法は,『賃貸用不動産の価格』又は『賃貸以外の事業の用に供する不動産』の価格を求める場合に特に有効です。

 不動産の価格は,一般にその不動産の収益性を反映して形成されるものですから,収益還元法は,文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産以外のものにはすべて適用されるべきものです。自用の住宅地でも賃貸を想定することにより適用されます。


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