税法その他 実戦篇

税法の過去問アーカイブス 昭和55年・問26 小問集合


次の税法上の優遇措置のうち,正しいものはどれか。 (昭和55年・問26)

1.「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の税率の軽減措置は,短期譲渡所得についても適用される。」

2.「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除は,短期譲渡所得については適用されない。」

3.「法改正により対応不可。

4.「一定の要件を満たした住宅の所有権移転登記に係る登録免許税の税率は,新築住宅にあっては1,000分の3であり,既存住宅にあっても同率である。」

【正解】

× × ×

1.「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の税率の軽減措置は,短期譲渡所得についても適用される。」

【正解:×

◆優良住宅地の造成等の軽減税率

 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例は,長期譲渡所得(譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの)に限って適用されるものですから(租税特別措置法・31条の2)短期譲渡所得(譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以内のもの)には適用されないので誤りです。

●税率の比較
   所有期間  税率
短期譲渡所得  5年以内  30%
財務省令で定めるところにより
証明がされた一定のものに対する
短期譲渡所得の課税の特例
 5年以内  15%
長期譲渡所得  5年超  15%
優良住宅地造成等の軽減税率  5年超  2,000万円以下 ⇒ 10%

 2,000万円超 ⇒ 15%

居住用財産の譲渡の軽減税率  10年超  6,000万円以下 ⇒ 10%

 6,000万円超 ⇒ 15%

●短期譲渡所得の課税の特例
■租税特別措置法・(短期譲渡所得の課税の特例)・32条3項

第28条の4第3項第1号から第3号までに掲げる土地等の譲渡に該当することにつき財務省令で定めるところにより証明がされたものに係る第一項の規定の適用については、同項中「100分の30」とあるのは、「100分の15」とする。

■租税特別措置法・28条の4・第3項1号〜3号

第一項の規定は、次に掲げる土地等の譲渡に該当することにつき財務省令で定めるところにより証明がされたものについては、適用しない。

一  国、地方公共団体その他これらに準ずる法人に対する土地等の譲渡(賃借権の設定等を含む。以下この項において同じ。)で政令で定めるもの

二  独立行政法人都市再生機構、土地開発公社その他これらに準ずる法人で宅地若しくは住宅の供給又は土地の先行取得の業務を行うことを目的とするものとして政令で定めるものに対する土地等の譲渡で、当該譲渡に係る土地等が当該業務を行うために直接必要であると認められるもの(政令で定める法人に対する土地等の譲渡で当該譲渡に係る土地等の面積が千平方メートル以上である場合には、第四号イに掲げる要件に該当する譲渡に限るものとし、土地開発公社に対する土地等の譲渡である場合には、政令で定める土地等の譲渡を除く。)

三  土地等の譲渡で第33条の4第1項に規定する収用交換等によるもの(当該収用交換等のうち政令で定めるものによる土地等の譲渡で当該譲渡に係る土地等の面積が1,000平方メートル以上である場合には、次号イに掲げる要件に該当する譲渡に限るものとし、前2号に掲げる譲渡に該当するものを除く。) ⇒ 収用交換の5,000万円特別控除の一部

2.「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除は,短期譲渡所得については適用されない。」

【正解:×

◆3,000万円の特別控除には,所有期間の要件はない

 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除(居住用財産の譲渡所得の特別控除)には,所有期間の要件はないので,短期譲渡所得についても適用されるので誤りです(租税特別措置法35条)

3.「法改正により対応不可。

【正解:×

 法改正により,問題そのものの成立基盤がないため,改題しません。

4.「一定の要件を満たした住宅の所有権移転登記に係る登録免許税の税率は,新築住宅にあっては1,000分の3であり,既存住宅にあっても同率である。」

【正解:昭和55年問26肢4,56年問31肢2,57年問29肢3,57年問29肢4平成15年問27肢1参考・平成10年問26肢3

◆既存住宅−取得後1年以内

 一定の要件を満たした住宅の所有権移転登記に係る登録免許税の税率は,新築住宅・既存住宅とも同率です。

 当該住宅用家屋の取得後1年以内に登記を受けるものに限り,建築後使用されたことのある住宅用家屋のうち政令で定めるものの取得 の場合,既存住宅でも,移転登記・抵当権設定登記については登録免許税の軽減措置が適用されます。(租税特別措置法・73条,74条,施行令42条1項・2項,43条)

 この場合,所有権移転登記では〔価額の〕1000分の3とする軽減税率になります。

●政令で定める既存住宅 −所有権移転登記・抵当権設定登記−
 以下のものであることを,当該個人の申請に基づき,当該家屋の所在地の市町村長又は特別区の区長が証明したもの
 床面積  登記簿上の床面積50平方メートル以上
 築年数  原則  取得の日以前20年以内に建築されたもの
   取得の日以前25年以内に建築されたもの
 区分所有建物  区分所有建物の場合,耐火建築物又は準耐火建築物であり,
 鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造その他の
 財務省令で定めるものに限る

鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造その他の財務省令で定めるもの

平成17年の施行令の改正により,<当該家屋が建築基準法施行令第3章及び第5章の4の規定又は国土交通大臣が財務大臣と協議して定める地震に対する安全性に係る基準に適合するものであること。>が加わり,この場合には築年数は問わないことになった。

 床面積と築年数だけは覚えておきましょう。

住宅用家屋の所有権の移転登記の税率の軽減
第73条 個人が、昭和59年4月1日から平成19年3月31日までの間に建築後使用されたことのない住宅用家屋又は建築後使用されたことのある住宅用家屋のうち政令で定めるものの取得(売買その他の政令で定める原因によるものに限る。)をし、当該個人の居住の用に供した場合には、これらの住宅用家屋の所有権の移転の登記に係る登録免許税の税率は、財務省令で定めるところによりこれらの住宅用家屋の取得後1年以内(1年以内に登記ができないことにつき政令で定めるやむを得ない事情がある場合には、政令で定める期間内。次条において同じ。)に登記を受けるものに限り、登録免許税法第9条の規定にかかわらず、〔価額の〕1000分の3とする。 

⇒住宅用家屋の軽減税率についての租税特別措置法の施行令は,こちらをご覧ください。

 登記  課税標準  本則税率  特例措置※  軽減税率*
 所有権保存  価額  4/1000  2/1000  1.5/1000
 所有権移転
 〔売買または競落〕
 価額  20/1000  10/1000  3/1000
 抵当権設定  債権金額  4/1000  −  1/1000

特例措置は平成15年4月1日から平成18年3月31日までの3年間のみ。(租税特別措置法72条)⇒個人又は法人

軽減税率の特例の適用は住宅用家屋だけで,「住宅用家屋以外の建物」や「土地」には適用されない。〔平成19年3月31日まで〕(租税特別措置法72条の2〜74条)⇒個人のみ


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