税法その他 実戦篇
不動産鑑定評価基準の過去問アーカイブス 昭和55年・問30
不動産の種別 (地域の種別・土地の種別)
不動産の鑑定評価において,土地の種別についての次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和55年・問30) |
1.「宅地地域に所在する野菜畑である土地の種別は農地である。」 |
2.「土地の種別は,宅地,農地,林地,見込地,移行地等に分けられる。」改 |
3.「宅地は,住宅地,商業地,工業地等に細分される。」 |
4.「都市計画法の用途地域が第一種住居地域のうちにある土地であっても,不動産の鑑定評価においては,その土地の種別は商業地である場合がある。」改 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
不動産の種類 | 不動産の種別 | 地域の種別
(宅地地域,農地地域,林地地域等) |
土地の種別
(宅地,農地,林地,見込地,移行地等) |
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不動産の類型 | 宅地の類型
(更地,建付地,借地権,底地,区分地上権等) |
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建物及びその敷地の類型
(自用の建物及びその敷地,貸家及びその敷地, |
不動産の種別⇒不動産の用途に関して区分される不動産の分類 不動産の類型⇒その有形的利用及び権利関係の態様に応じて区分される不動産の分類 |
1.「宅地地域に所在する野菜畑である土地の種別は農地である。」 |
【正解:×】 ◆地域の種別と土地の種別 鑑定評価基準では,地域の種別は宅地地域,農地地域,林地地域等に分けられます。宅地地域ではまた,住宅地域,商業地域,工業地域等に細分されますが,この住宅地域,商業地域,工業地域等についてはさらに,規模・構成内容・機能等に応じて細分化されます。〔地域の種別は,自然的,社会的,経済的,行政的観点からみて合理的と判断される地域に分類されている。〕 土地の種別は,地域の種別に応じて分類されます。宅地地域にある土地は宅地とされ,宅地はさらに,住宅地,商業地,工業地等に細分されます。〔農地地域にある土地は農地,林地地域にある土地は林地。〕 ●大雑把なイメージ
『宅地地域に所在する野菜畑である土地』は,まず,宅地地域にあることから『宅地』であり,さらに,宅地地域の中の住宅地域・商業地域・工業地域のどれに属するかで,宅地の中の「住宅地,商業地,工業地等」のいずれかになります。 したがって,農地法のように「野菜畑(現況農地)だから農地」ということにはならず〔鑑定評価基準の農地は,農地法での『農地』とは異なる。〕,また,鑑定評価基準での『農地』は農地地域にある土地ですから,本肢は誤りで正解肢になります。
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2.「土地の種別は,宅地,農地,林地,見込地,移行地等に分けられる。」改 |
【正解:○】 ◆土地の種別 土地の種別は,地域の種別に応じて分類される土地の区分で,宅地,農地,林地,見込地,移行地等に分けられ,さらに地域の種別に応じて細分されます。
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3.「宅地は,住宅地,商業地,工業地等に細分される。」 |
【正解:○】 ◆宅地の分類 宅地は,地域の種別に応じて,住宅地,商業地,工業地等に細分されます。〔住宅地,商業地ではさらにまた地域特性によりいくつかに分けられます。〕 |
●住宅地域−覚える必要はありません。− |
住宅地域を細分化すると次のようになります。
1) 敷地が広く、街区及び画地が整然とし、植生と眺望、景観等が優れ、建築の施工の質の高い建物が連たんし、良好な近隣環境を形成する等居住環境の極めて良好な地域であり、従来から名声の高い住宅地域 2) 敷地の規模及び建築の施工の質が標準的な住宅を中心として形成される居住環境の良好な住宅地域 3) 比較的狭小な戸建住宅及び共同住宅が密集する住宅地域又は住宅を主として店舗、事務所、小工場等が混在する住宅地域 4) 都市の通勤圏の内外にかかわらず、在来の農家住宅等を主とする集落地域及び市街地的形態を形成するに至らない住宅地域 |
●商業地域−覚える必要はありません。− |
商業地域を細分化すると次のようになります。
1) 高度商業地域 高度商業地域は、例えば、大都市(東京23区、政令指定都市等)の都心又は副都心にあって、広域的商圏を有し、比較的大規模な中高層の店舗、事務所等が高密度に集積している地域であり、高度商業地域の性格に応じて、さらに、次のような細分類が考えられる。 ア 一般高度商業地域 主として繁華性、収益性等が極めて高い店舗が高度に集積している地域 イ 業務高度商業地域 主として行政機関、企業、金融機関等の事務所が高度に集積している地域 ウ 複合高度商業地域 店舗と事務所が複合して高度に集積している地域 2) 準高度商業地域 高度商業地域に次ぐ商業地域であって、広域的な商圏を有し、店舗、事務所等が連たんし、商業地としての集積の程度が高い地域 3) 普通商業地域 高度商業地域、準高度商業地域、近隣商業地域及び郊外路線商業地域以外の商業地域であって、都市の中心商業地域及びこれに準ずる商業地域で、店舗、事務所等が連たんし、多様な用途に供されている地域 4) 近隣商業地域 主として近隣の居住者に対する日用品等の販売を行う店舗等が連たんしている地域 5) 郊外路線商業地域 都市の郊外の幹線道路(国道、都道府県道等)沿いにおいて、店舗、営業所等が連たんしている地域 |
4.「都市計画法の用途地域が第一種住居地域のうちにある土地であっても,不動産の鑑定評価においては,その土地の種別は商業地である場合がある。」改 |
【正解:○】 ◆都市計画法の用途地域≠鑑定評価理論の土地の種別 肢1では,鑑定評価基準での『農地』は農地地域のうちにある土地であり,農地法の『現況農地=農地』は成り立たないということを見ましたが,この肢4では,鑑定評価基準での地域の種別は,都市計画法・建築基準法での用途地域とは違うということを学びます。 都市計画法の用途地域が第一種住居地域のうちにある土地であっても,鑑定評価基準では,商業活動の用に供されることが社会的・経済的及び行政的観点からみて合理的と判断される「鑑定評価基準の商業地域」〔≠用途地域の商業地域〕にあれば,商業地域のうちにある土地として商業地になります。〔都市計画法の第一種住居地域では,住居の環境を保護するために定める地域であり,一定の物品販売業を営む店舗・事務所・飲食店・喫茶店・美容院等は許可がなくても建築できたことを思い出してください。〕 ※都市計画法・建築基準法での用途地域・・・都市計画での地域地区の区分。特定行政庁の許可がなければ建築できない建築物が用途地域ごとに定められている。 |