税法その他 実戦篇

不動産鑑定評価基準の過去問アーカイブス 個別的要因


 価格形成要因は,一般的要因,地域要因,個別的要因に分かれますが,このうち「個別的要因」のイメージがつかみにくいというメールを頂戴することがあります。
 個別的要因とは,読んで字のごとく,不動産に個別性を生じさせ,その価格を個別的に形成する要因をいいますが,もともと不動産は個別性が強いので,何が個別的要因になるのかということで戸惑う方もいらっしゃるようです。
 ここでは,昭和40年代に宅建試験で出題された個別的要因に関する問題を通覧して,どんなものが「個別的要因」になるのかイメージをつかんでください。〔
このページに収録した問題は現在の出題傾向とは違いますから演習するというよりも参考として見る程度にしてください。また時間的な余裕がない場合はパスしたほうがいいかもしれません。気になる方だけご覧ください。〕

■住宅地域の土地の個別的要因

住宅地域における土地を更地として評価する際の個別的要因に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和49年)

1.「面積の大小は,減価の対象にならない。」

2.「高圧線下であることは,いかなる場合でも減価の対象にはならない。」

3.「前面道路の幅員が価格に影響を与えることはない。」

4.「角地の方位によって,価格に対して異なった影響を与える場合がある。」

【正解】

× × ×

【正解:

 土地を更地として評価する際にも,「面積の大小」,「高圧線下」,「前面道路の幅員」,「角地の方位」は個別的要因として,影響を与えます。

●住宅地の個別的要因

「地勢,地質,地盤等」,「日照,通風及び乾湿」,「間口,奥行,地積,形状等」,「高低,角地その他の接面街路との関係」,「接面街路の幅員,構造等の状態」,「接面街路の系統及び連続性」,「交通施設との距離」,「商業施設との接近の程度」,「公共施設,公益的施設等との接近の程度」,「隣接不動産等周囲の状態」,「上下水道」,「ガス等の供給・処理施設の有無及びその利用の難易」,「情報通信基盤の利用の難易」,「埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態」,「土壌汚染の有無及びその状態」,「公法上及び私法上の規制,制約等」,

総論 第3章 不動産の価格を形成する要因 第3節 個別的要因

■住宅地の個別的要因

住宅地の価格に関する記述のうち,正しいものはどれか。(昭和44年)

1.「画地が道路と等高であることは,出入りに便利なのでその土地の価格を高めることになるが,道路と高低差があることは価格を低めることとなる。」

2.「隣地が未建築地になっていることは,日照,通風等有利な面が多いので,土地の価格を高めることになる。」

3.「付近の画地に比べて面積が非常に大きければ,希少価値がでるので,土地の価格を高めることになる。」

4.「住宅地がゆるやかな南傾斜地にあることは,日照,眺望等の面ですぐれているので,土地の価格を高めることになる。」

【正解】

× × ×

【正解:

 個別的要因はプラスの評価をもたらすこともありますが,マイナスになる場合もあります。個別的要因は宅地〔住宅地・商業地・工業地〕,農地,林地,見込地・移行地の区分によっても変わってきます。本問題では,住宅地としての評価についてきいています。

1.道路と高低差があることは商業地では減価されますが,住宅地では排水・水害時,景観などで評価が高くなることがあります。

2.隣地が未建築地になっていることは,日照,通風等で有利ではあっても,将来何が建築されるか予測できないため,土地の価格を高めることになるとは限りません。

3.一般的には,大規模画地は総額が大きくなるために,市場性が減退して単位面積あたりでは評価が低くなる傾向があります。(また,分割利用することが合理的な大規模画地では,分割による減歩,造成費用などが必要になります。)

 しかし,東京都心部のように高度利用が可能なところでは,単価的に低くなるとは限らず,稀少性の面からむしろ取引価格が高くなる場合があります。

4.一般的には,ゆるやかな南傾斜地にあることは,日照,乾湿,眺望などの面ですぐれており,評価が高くなります。

■建物価格の個別的要因

建物価格に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和44年)

1.「建物の価格は,間取り,採光等とは関係なく当該建物の建築費によって定まる。」

2.「建物の価格は,建物の敷地内における位置とは関係なく,建物それ自体の価値で定まる。」

3.「建物の価格は,建物の収益性または快適性に建物の敷地の品等が影響を与えるので,その敷地の品等に関連する。」

4.「特定の個人の趣向に合致した建物の価格は,当該個人がその建物について認める主観的な価値で定まる。」

【正解】

× × ×

【正解:

 建物を評価する際の個別的要因には,「建築の年次」,「面積,高さ,構造,材質等」,「設計・設備の機能性」,「施工の質と量」,「耐震性,耐火性等建物の性能」,「維持管理の状態」,「有害な物質の使用の有無及びその状態」,「建物とその環境との適合の状態」,「公法上及び私法上の規制,制約等」があります。(総論 第3章 不動産の価格を形成する要因 第3節 個別的要因)

1.間取り,採光等は「設計・設備の機能性」に関連し,個別的要因になります。

2.建物の敷地内における位置は個別的要因になります。建物の配置・規模・用途など,敷地を最有効に使用しているかで,評価が変わってしまうことがあります。

3.建物の収益性や快適性は個別的要因になります。

4.不動産については,合理的な自由市場で形成される市場価値があるかどうかによって評価されるものです。したがって,当該個人がその建物について認める主観的な価値で定まるのではありません。


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