宅建過去問 権利の変動篇 借地借家法
借地権の過去問アーカイブス 平成13年・問12 旧・借地法の経過措置
Aは,昭和46年(西暦1971年)8月,Bから,その所有地を,建物の所有を目的として存続期間30年の約定で賃借し,その後A所有の建物を同土地上に建築し,A名義の所有権保存登記をしてきた。この場合,借地借家法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(平成13年・問12) |
1 平成13年(西暦2001年)8月の契約更新時に,AB間の合意により,更新後の存続期間を10年と定めることができる。 |
2 平成1 3年8月の契約更新時に,AB間の合意により,今回の更新は旧借地法によるものとするが,次回以降の更新は借地借家法本則によるものとする旨定めることができる。 |
3 Aは平成1 2年7月に再築のため建物を取り壊し,土地の上の見やすい場所に「旧建物を特定するために必要な事項,取り壊した日,建物を新たに築造する旨」を掲示した。この掲示が存続していれば,建物が未完成でも,平成13年8月時点で,Aは本件借地権を第三者に対抗できる。 |
4 平成13年8月の契約更新後,更新期間満了前に,本件借地上のA所有建物が朽廃した場合,本件借地権は消滅しない。 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
正答率 | 50.5% |
昭和46年(1971年)8月 借地権設定 存続期間30年(平成13年まで) 建物を構築して,建物にA名義の所有権保存登記 |
この問題は、現法(借地借家法)と旧法(借地法・建物保護法)との適用関係の違いについて問うもので、ある程度は旧法を知っておく必要がある問題です。現法しか掲載していない現行の宅建の基本書では対応が難しかったかもしれません。(一部の基本書は記載) 旧・借地法の最終改正は昭和46年であり、平成13年はちょうどその30年後であることから、意図的に出題されたものと思われます。 ▼「借地借家法の規定によれば,」という問題設定でも、本問題は、借地借家法の附則が出題されており、言わば「孫引き」的に、旧・借地法を問う出題で平成7年に借地法での契約の更新について出題されています。→H7-12-4 ▼借地借家法での附則では、借地借家法施行前の契約の更新などでは、「なお従前の例による」と経過措置が決められているため、実務上では、これからも長く借地法と借家法の規定が生き続けることになります。 |
1 平成13年(西暦2001年)8月の契約更新時に,AB間の合意により,更新後の存続期間を10年と定めることができる。 |
【正解:×】 この問題での借地権は、現行の借地借家法の施行日(平成4年8月1日)よりも前に、当時の借地法に基づいて設定されているため、更新については旧法の借地法が適用されます。(借地借家法・附則6条) 旧法での契約更新では、堅固な建物かその他の建物かによって区別され、更新期間が異なっていました。更新後の存続期間は、堅固な建物=30年、その他の建物=20年。(ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間)(借地法・4条3項、5条1項、6条1項) このため、10年という更新後の存続期間は、借地権者には不利な特約となるため、存続期間10年と定めたとしても無効で、更新後の存続期間の定めがなかったことになり、堅固な建物所有目的の借地権の場合は30年、非堅固な建物所有目的の借地権の場合は20年になります。
▼附則第6条(借地契約の更新に関する経過措置) この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による。 |
2 平成1 3年8月の契約更新時に,AB間の合意により,今回の更新は旧借地法によるものとするが,次回以降の更新は借地借家法本則によるものとする旨定めることができる。(類H7-12-4) |
【正解:×】 借地借家法では原則として、平成4年8月1日の施行前に締結された借地・借家関係の更新には適用されないと、同法附則で明記されており、旧法の借地法で契約されたものは、始めの更新だけでなく、2回目の更新でもやはり、旧法の借地法によるものでなければいけません。(借地借家法・附則6条) たとえ、当事者の合意があっても、旧法の借地法施行時の借地契約を更新しない旨の特約を結び、新たに借地借家法を適用させることは、旧法である借地法の更新の規定に違反する特約となり、その特約は無効になります。 (類H7-12-4) ▼附則第6条(借地契約の更新に関する経過措置) この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による。 |
3 Aは平成1 2年7月に再築のため建物を取り壊し,土地の上の見やすい場所に「旧建物を特定するために必要な事項,取り壊した日,建物を新たに築造する旨」を掲示した。この掲示が存続していれば,建物が未完成でも,平成13年8月時点で,Aは本件借地権を第三者に対抗できる。 |
【正解:○】 借地借家法施行後に登記のある建物が滅失したときには、もともとの契約が借地法施行時のものであっても、借地借家法の「掲示による対抗力」の規定が適用されます。(出題者は意図的に本肢を正解肢になるように問題を作成したように思われます。)(借地借家法・附則8条) 平成1 2年7月・・・・・・再築のため建物を取り壊し 平成13年8月時点・・・滅失から2年以内なので建物が未完成でも対抗できる。
※「旧建物を特定するために必要な事項」とは, 登記をしていれば,掲示を見た人は登記所〔法務局〕で,閉鎖登記簿〔建物の滅失登記をしていた場合〕または滅失した建物の従前の登記〔建物の滅失の登記をしていない場合〕を閲覧することによって建物が存在していたことを確認できるからです。
▼附則第8条(借地権の対抗力に関する経過措置) 第10条第2項の規定は、この法律の施行前に借地権の目的である土地の上の建物の滅失があった場合には、適用しない。 |
4 平成13年8月の契約更新後,更新期間満了前に,本件借地上のA所有建物が朽廃した場合,本件借地権は消滅しない。 |
【正解:×】 借地借家法施行前に設定された借地権については、借地借家法施行後に借地上の建物が朽廃した場合でも、旧法の借地法が適用されるとしています。(借地借家法・附則6条) 借地法では、借地の期間が定められていない場合(法定更新後も含む)に朽廃したときに借地権は消滅しました。(借地法・5条1項、2条1項但書)⇒借地借家法では、借地の期間の定めがない場合でも建物が朽廃しても借地権は消滅しません。
したがって、本肢の『朽廃しても借地権は消滅しない』という問題文は×になります。(更新後の存続期間の定めがあっても、定めた存続期間によっては〔堅固な建物所有のときは30年未満、非堅固な建物所有目的のときは20年未満の場合〕更新後の存続期間の定めがなかったことになり、その場合は朽廃により借地権が消滅するので、『朽廃しても借地権は消滅しない』とは言い切れないからです。) ●当初の存続期間の定めがある場合(ただし、堅固な建物所有の場合は30年以上、非堅固な建物所有の場合は20年以上)にその当初の存続期間内に建物が朽廃したときや、更新後の存続期間の定めが有効な場合(堅固な建物所有の場合は30年以上、非堅固な建物所有の場合は20年以上)に建物が朽廃したときには、借地権は消滅しません。 ▼附則第5条(借地上の建物の朽廃に関する経過措置) この法律の施行前に設定された借地権について、その借地権の目的である土地の上の建物の朽廃による消滅に関しては、なお従前の例による。 |
●本問題での借地法のまとめ |
◆借地法では、堅固な建物とその他の建物で、区別があったこと。 ◆借地法施行時の契約は、借地法の規定で更新する ◆建物の朽廃による滅失→借地法時の借地権は消滅 ◆借地借家法施行後の建物の滅失→借地借家法の「掲示による対抗力」が適用される |