Brush Up! 権利の変動篇
借地借家法
借地権の過去問アーカイブス 平成18年・問13
自らが所有している甲土地にを有効利用したいAと、同土地上で事業を行いたいBとの間の契約に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。 (平成18年・問13) |
1.「甲土地につき、Bが建物を所有して小売業を行う目的で公正証書によらずに存続期間を35年とする土地の賃貸借契約を締結する場合、約定の期間、当該契約は存続する。しかし、Bが建物を建築せず駐車場用地として利用する目的で存続期間を35年として土地の賃貸借契約を締結する場合には、期間は定めなかったものとみなされる。」 |
2.「甲土地につき、Bが1年間の期間限定の催し物会場としての建物を建築して一時使用する目的で土地の賃貸借契約を締結する場合には、当該契約の更新をしない特約は有効である。しかし、Bが居住用賃貸マンションを所有して全室を賃貸事業に供する目的で土地の賃貸借契約を締結する場合には、公正証書により存続期間を15年としても、更新しない特約は無効である。」 |
3.「甲土地につき、小売業を行うというBの計画に対し、借地借家法が定める要件に従えば、甲土地の賃貸借契約締結によっても、又は、甲土地上にAが建物を建築しその建物についてAB間で賃貸借契約を締結することによっても、Aは30年後に賃貸借契約を更新させずに終了させることができる。」改 |
4.「甲土地につき、Bが建物を所有して小売業を行う目的で存続期間を30年とする土地の賃貸借契約を締結している期間の途中で、Aが甲土地をCに売却してCが所有権移転登記を備えた場合、当該契約が公正証書でなされていても、BはCに対して賃借権を対抗することができない場合がある。」 |
<コメント> |
肢1,肢4は素直な問題ですが,肢2〜肢3は問題文の中で何が該当するのかアタマの中で推測させて解かせる問題です。
問題文にハッキリ書いてないので,何が該当するのかと迷った受験者の方も多かったでしょう。このため正答率は40%台という借地借家法の問題としては驚異的な低い数字になっています。 単なる文字合せやマル暗記では,このような出題方法には太刀打ちできないので,単に用語を覚えるだけでなく,中身もしっかり把握するようにしてください。 |
●出題論点● |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
正答率 | 40.9% |
1.「甲土地につき、Bが建物を所有して小売業を行う目的で公正証書によらずに存続期間を35年とする土地の賃貸借契約を締結する場合、約定の期間、当該契約は存続する。しかし、Bが建物を建築せず駐車場用地として利用する目的で存続期間を35年として土地の賃貸借契約を締結する場合には、期間は定めなかったものとみなされる。」 |
【正解:×】
駐車場にする目的での土地の賃貸借契約は,借地借家法ではなく,民法が適用されます。(借地借家法では,建物所有を目的にした地上権または土地の賃借権が対象です。)つまり,本肢は,借地借家法 (定期借地権以外) と民法との違いを尋ねています。
平成17年に,民法の賃貸借との比較が出題されており,比較の問題は2年連続の出題でした。 ▼"小売業を行う目的"という文言に,「すわ,23条の事業用定期借地権か」と思った方は過剰反応。 |
2.「甲土地につき、Bが1年間の期間限定の催し物会場としての建物を建築して一時使用する目的で土地の賃貸借契約を締結する場合には、当該契約の更新をしない特約は有効である。しかし、Bが居住用賃貸マンションを所有して全室を賃貸事業に供する目的で土地の賃貸借契約を締結する場合には、公正証書により存続期間を15年としても、更新しない特約は無効である。」 |
【正解:○】 一時使用目的の借地権には,借地借家法での存続期間・更新の規定とも適用されないので,更新をしない特約は有効です(借地借家法25条)。 <居住用賃貸マンションを所有して全室を賃貸事業に供する目的で土地の賃貸借契約を締結する場合>については,まず何が適用できないか考えないといけません。 適用できないのは,事業用定期借地権です。これは,<事業用定期借地権の設定された借地上に建てられる,専ら事業の用に供する建物は,居住の用に供するものを除く>と,ハッキリと借地借家法に書いてあります(借地借家法23条1項,2項)。
このことをアタマにおいて本肢を見ると,後半部分は「事業用借地権」についてのものだナと気つきます。 したがって,居住用賃貸マンションを所有して全室を賃貸事業に供する目的で土地の賃貸借契約を締結する場合には、公正証書により存続期間を15年としても、更新しない特約は無効です。 |
●事業用定期借地権 |
事業用定期借地権の契約は,公正証書によって行う必要があります。(公正証書によつて行わないと,事業用定期借地権にはなりません。)
・事業用借地権の存続期間は「10年以上30年未満」と「30年以上50年未満」の二つある。 ・「10年以上30年未満」・・・契約の更新,再築による存続期間の延長,建物買取請求権は認められません。(公正証書でしなければならない。) ・「30年以上50年未満」・・・契約の更新,再築による存続期間の延長,建物買取請求権はないことを特約で定め,公正証書でしなければならない。 |
3.「甲土地につき、小売業を行うというBの計画に対し、借地借家法が定める要件に従えば、甲土地の賃貸借契約締結によっても、又は、甲土地上にAが建物を建築しその建物についてAB間で賃貸借契約を締結することによっても、Aは30年後に賃貸借契約を更新させずに終了させることができる。」改 |
【正解:○】 20年後に賃貸借契約を更新させずに終了させることができるのは,以下の二つの場合があります。
問題文の中に,これらの用語が書いていないので,推測するしかないのですが,この出題方法は今後も繰り返される可能性が高いと思います。<あらかじめ,その意味を知っていなければ,問題が解けない (= アテズッポウで答えられない) >という出題方法は, 出題者の好むところだからです。 |
4.「甲土地につき、Bが建物を所有して小売業を行う目的で存続期間を30年とする土地の賃貸借契約を締結している期間の途中で、Aが甲土地をCに売却してCが所有権移転登記を備えた場合、当該契約が公正証書でなされていても、BはCに対して賃借権を対抗することができない場合がある。」 |
【正解:○】 A (元の所有者) ⇒ C (新しい所有者) <借地権者Bが賃借権を対抗することができない場合がある>という文言から直ちに思い浮かべなければならないのは,借地権の対抗力です(借地借家法10条1項)。
借地上の建物に,借地権の登記もなく,また,借地権の登記に代わる表示の登記や所有権保存登記がない場合は,借地権者は,第三者に対抗できません。 |