宅建過去問 権利の変動篇 借地借家法

借地権の過去問アーカイブス 平成20年・問13 <建物所有を目的とする土地の賃貸借
〔一時使用目的の場合を除く〕>と<建物所有を目的としない土地の賃貸借>の比較


Aが所有している甲土地を平置きの駐車場用地として利用しようとするBに貸す場合と、一時使用目的ではなく建物所有目的を有するCに貸す場合とに関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。  (平成20年・問13)

1 AB間の土地賃貸借契約の期間は、AB間で60年と合意すればそのとおり有効であるのに対して、AC間の土地賃貸借契約の期間は、50年が上限である。

2 土地賃貸借契約の期間満了後に、が甲土地の使用を継続していてもAB間の賃貸借契約が更新したものと推定されることはないのに対し、期間満了後にが甲土地の使用を継続した場合には、AC間の賃貸借契約が更新されたものとみなされることがある。

3 土地賃貸借契約の期間を定めなかった場合、は、に対しては、賃貸借契約開始から1年が経過すればいつでも解約の申入れをすることができるのに対し、に対しては、賃貸借契約開始から30年が経過しなければ解約の申入れをすることができない。

4 AB間の土地賃貸借契約を書面で行っても、が賃借権の登記をしないままが甲土地をに売却してしまえばに対して賃借権を対抗できないのに対し、AC間の土地賃貸借契約を口頭で行っても、が甲土地上に所有の登記を行った建物を有していれば、が甲土地をに売却してもに対して賃借権を対抗できる。

<コメント>  
 19年・問14の<定期建物賃貸借と一時使用目的の建物の賃貸借の対比>に続く比較問題の出題です。借地借家法のみでは正答率が高くなることを "懸念" しての出題と思われます。

 本問題の解き方としては,肢1から肢4とも,その記述が<建物所有を目的とする土地の賃貸借〔一時使用目的の場合を除く〕>や<建物所有を目的としない土地の賃貸借>の一方または双方で該当しないものがあれば,その肢は誤りと判断します。

 ⇒ <建物所有を目的とする土地の賃貸借〔一時使用目的の場合を除く〕>には普通借地権と定期借地権等があり,そのすべてについて短時間でイメージしてその正誤を判断するのは難しい。

●出題論点●
 (肢1) 存続期間の違い

 (肢2) 期間満了後に,賃借人が土地の使用を継続していたとき

 (肢3) 期間を定めなかった場合の扱いの違い

 (肢4) 土地の賃借権の対抗要件

【正解】

× × ×

 正答率  55.9%

建物所有目的の

土地の賃借権

一時使用目的  借地借家法の一部が適用される(借
 地権の存続期間等,建物買取請求権,
 借地条件の変更・増改築の許可,
 借地契約の更新後の建物の再築の許可
 は適用されない)
普通借地権  借地借家法が適用される
定期借地権  借地借家法が適用される

一時所有目的でも,以下については,借地借家法が適用される。一切,借地借家法が適用されないということではない。

 借地権の対抗要件(10条)地代増減請求権(11条),借地権設定者の先取特権(12条),第三者の建物買取請求権(14条),自己借地権(15条)土地の賃借権の譲渡または転貸の許可(19条),建物競売等の場合の土地の賃借権の譲渡の許可(20条)

建物所有を目的としない
土地の賃借権
 借地借家法は一切適用されない。民法のみで規定。

1 AB間の土地賃貸借契約の期間は、AB間で60年と合意すればそのとおり有効であるのに対して、AC間の土地賃貸借契約の期間は、50年が上限である。

【正解:×
◆存続期間の比較

 前半・後半とも誤りのため,本肢は誤りです。

建物所有を目的としない土地の賃貸借 〔前半×

 建物所有を目的としない土地の賃貸借は,借地借家法が適用されないため,民法の規定により,20年を超えることができず,20年を超えて存続期間を定めても20年に短縮されます。

建物所有目的の土地の賃貸借 〔後半×

 建物所有目的の土地の賃借権は,借地借家法が適用され,一時使用目的の土地の賃貸借や事業用借地権を除いて,当事者間の合意により存続期間を60年にすることができます。50年が上限ではありません。

建物所有目的の
土地の賃借権
普通借地権  原則として30年。当事者間でこれより
 長い期間を定めれば,その期間になる(3条)
定期借地権
(事業用借
地権以外)
 定期借地権,建物譲渡特約付借地権
 (22条,24条)とも50年を超えて設定できる。

事業用
借地権

 50年未満のみ(23条)
建物所有を目的としない
土地の賃借権
 民法の存続期間である20年を超えて
 設定できない(民法604条1項)

2 土地賃貸借契約の期間満了後に、が甲土地の使用を継続していてもAB間の賃貸借契約が更新したものと推定されることはないのに対し、期間満了後にが甲土地の使用を継続した場合には、AC間の賃貸借契約が更新されたものとみなされることがある。

【正解:×
◆更新の比較

  前半が誤りのため (後半は正しい) ,本肢は誤りです。

建物所有を目的としない土地の賃貸借 〔前半×

 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用または収益を継続する場合に,賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは,従前の賃貸借契約と同一の条件で更に賃貸借契約をしたものと推定する。この場合,各当事者は,第617条の規定により解約の申入れをすることができる(民法619条1項)。⇒ 期間満了後にが甲土地の使用を継続した場合には,AB間の賃貸借契約を従前のものと同一の条件で契約したものと推定されることがある。

建物所有目的の土地の賃貸借(普通借地権の場合) 〔後半

 借地上に建物が残っており,期間満了後も借地権者が引き続き土地の使用を継続し,土地の所有者〔貸主。借地権設定者〕が,遅滞なく,正当事由をもって異議を述べない場合は,期間を除いて※,従前の賃貸借契約と同一の条件で更新したものとみなされる(借地借家法5条2項,6条)。⇒ 期間満了後にが甲土地の使用を継続した場合に,存続期間を除いて,AC間の賃貸借契約が更新されたものとみなされることがある。

借地借家法の規定により,この場合,更新後の存続期間は更新の日から10年(借地権の設定後の最初の更新では,20年)とされる。

 みなす 法律関係が確定する。当事者がみなされたものと異なる事実を
主張することはできない。
 推定される 反証を立証すれば,推定された法律関係を覆すことができる。

3 土地賃貸借契約の期間を定めなかった場合、は、に対しては、賃貸借契約開始から1年が経過すればいつでも解約の申入れをすることができるのに対し、に対しては、賃貸借契約開始から30年が経過しなければ解約の申入れをすることができない。

【正解:×
◆存続期間を定めなかった場合の比較

 前半・後半とも誤りのため ,本肢は誤りです。

建物所有を目的としない土地の賃貸借 〔前半×

 存続期間を定めなかったときは,貸主・借主のどちらも,いつでも解約の申入れをすることができ,申入れから1年が経過すると賃貸借契約は終了します。

※「賃貸借契約開始から1年が経過すれば」という部分は余計です。1年が経過していなくても,また1年が経過していても,解約の申し入れができるからです。

建物所有目的の土地の賃貸借 (普通借地権の場合) 〔後半×

 普通借地権では,存続期間を定めなかったときは,存続期間は30年とされます(借地借家法2条)。

 普通借地権では,期間が満了して更新されなかった場合にのみ,賃貸借契約は終了するので,解約の申入れにより賃貸借契約が終了するということはありません。

建物所有を目的としない
土地の賃貸借
賃借権の登記をしていなかったときは,
新所有者に賃借権を主張できない〔対抗できない〕。
建物所有目的の
土地の賃貸借
賃借権の登記をしていなくても,
借地上の建物に登記があれば,
新所有者に賃借権を主張できる〔対抗できる〕。

4 AB間の土地賃貸借契約を書面で行っても、が賃借権の登記をしないままが甲土地をに売却してしまえばに対して賃借権を対抗できないのに対し、AC間の土地賃貸借契約を口頭で行っても、が甲土地上に所有の登記を行った建物を有していれば、が甲土地をに売却してもに対して賃借権を対抗できる。

【正解:
◆賃借権の対抗要件の比較

  前半・後半とも正しく,正解肢です。

建物所有を目的としない土地の賃貸借 〔前半

 賃借権の登記をしていなかったときは,新所有者に賃借権を主張できない〔対抗できない〕。

建物所有目的の土地の賃貸借 〔後半

 賃借権の登記をしていなくても,借地上の建物に登記があれば〔表題登記,所有権保存登記,所有権移転登記のどれでもよい〕,新所有者に賃借権を主張できる〔対抗できる〕。

建物所有を目的としない
土地の賃貸借
賃借権の登記をしていなかったときは,
新所有者に賃借権を主張できない〔対抗できない〕。
建物所有目的の
土地の賃貸借
賃借権の登記をしていなくても,
借地上の建物に登記があれば,
新所有者に賃借権を主張できる〔対抗できる〕。

一時使用目的の場合も適用されることに注意。


1000本ノック・権利の変動篇・借地借家法(借地権)に戻る

民法分野の過去問アーカイブスのトップに戻る

宅建1000本ノック・権利の変動に戻る