民法クローズ・アップ
  判例による意思表示の研究
 意思の欠缺 / 通謀虚偽表示・第3回・論点の補遺

 通謀虚偽表示についてこれまで2回にわたって過去問の基本的な出題範囲

必要な知識をまとめてきました。

 今回と次回は、補遺として、過去問の出題範囲内で「もしかしたら気になる事項」

まとめてみます。

●善意の第3者も、無効を主張できるのか?

―(虚偽表示)―

            |

           (善意)

 善意の第3者が現れたからと言って、虚偽表示による当事者間の無効が有効に

なるわけではないしたがって、Cからも無効を主張するのは自由

 (民法総則、後藤巻則/山野目章夫、弘文堂、p.85)

●虚偽表示を撤回したら?

―(虚偽表示)―

           |

          (善意)

 虚偽表示をAが撤回するには、撤回する旨の意思表示を行っただけでは不十分で

Aはまず、虚偽の外形を取り除く必要があります。(登記をAに戻すことなど)

 もし、虚偽表示の外形(虚偽表示によってBに登記が移転したまま)が取り除かれ

ないうちに、善意の第3者Xが現れたら(Bが登記があることをいいことにXに売却)

94条2項が適用され、AはXに無効を主張できず、対抗できません

(民法総則、後藤巻則/山野目章夫、弘文堂、p.85-86)

●判例で94条2項の保護されるべき善意の第3者にはならないとされた例

 土地の仮装譲受人がその土地の上に建物を建築し、その建物を賃貸した場合の

建物賃借人(最高裁・昭和57.6.8)

 ―(虚偽表示)―(土地の仮装譲受人。建物を建築、建物の賃貸人)

             |

            (善意、建物の賃借人) 

 このケースは、Cには残念ですが、Aが無効を主張したらCは建物の収去をせざ

るを得ません。

  →CはBに対して建物賃貸借契約の履行不能を主張して、契約を解除し、

   損害賠償を請求することになります。

(判例で94条2項の保護されるべき善意の第3者になるとされた例は

通謀虚偽表示の第1回 を参照して下さい。

●善意の第3者には対抗できない(94条2項) ポイントその4)


引き続き、通謀虚偽表示の4回目を読む

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