民法クローズ・アップ
  判例による意思表示の研究
 意思の欠缺 / 意思表示・第1回・出題履歴を見てみよう

 民法についてのご質問のメールが何件か来ています。基本書に載っていないも

のはどうすればわかるかというものもあり、今回はそのお話から始めたいと思い

ます。

ある基本書では

無権代理人と契約した相手方が無権代理人に

ア契約の履行請求

イ損害賠償請求

をする要件として、次の3つを掲載しています。

1無権代理人が代理権の存在を証明できないこと

2本人の追認を得られないこと

3相手方が無権代理について善意無過失であること

この箇所は、他の本では、このほかに2つ書いているものがあります。

4相手方が取消権を行使していないこと

5無権代理人が制限行為能力者ではないこと(無権代理人が能力者であること)

→無権代理人が「制限行為能力者」の場合は、無権代理人に、

契約の履行請求・損害賠償請求を請求できない。

(ただし、未成年者・被保佐人が法定代理人の同意を得て無権代理行為を

したときは適用されず、責任を負う。)

本来、この箇所は民法117条に書いてあることで(4は117条に記載はない)、

掲載しなかったのは基本書の著者の判断であり、学習者はそれに文句を言う筋合

いのものではないのですが、このように条文に書いてあるのに基本書に書いてな

いものはあり得ることです。

どの基本書にも、「他の本では載っているのに…」という箇所はあると思います。

これに余り気を取られていると、本来の重要事項や頻出事項の学習が疎かになりま

すから、必要以上にお気になされないことをお勧めします。掲載していないのは

親心ということもありますから。(補充は後でもできます)

●どうしても納得できない方に

 どうしても気になる方は、民法に関しては全部の条文と判例のまとめが掲載して

ある本をお手元に置かれることをお勧めします。本屋さんにいけば、いろいろあり

ます。他の法令と違い、民法は、判例や通説などが条文以上に必要であるため、

ある程度の解説は必要かと思います。(要件と効果を簡潔にまとめたもの。\2,000程度)

例えば、自由国民社の「択一式受験六法・民法編」などは、ある程度民法を学習

したことのある方ならば使いこなせると思います。基本書や問題集などで疑問点が

生じたときに、辞書かわりに読むという使い方が考えられます。ただし、余り深入りは

するべきではないと思います。重要な論点のみに留めるべきと考えます。

(類似した本は他にもありますが、あくまでも辞書代わりで読むべきで、

全くの初心者にはお勧めできません。くれぐれもこのことにはご注意下さい)

●意思表示出題の傾向

 さて、本題に入ります。意思表示はどの基本書でも最初にあります。

ここは民法の物権編や債権編のところと関係が深く、民法でも重要な分野です。

次回から意思表示の判例や通説を含めた解説をしていくのですが、とりあえず、

本試験での傾向を見てみます。

2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年
未成年
被保佐人
心裡留保
通謀虚偽表示
錯誤
詐欺
強迫
公序良俗
代理
時効
物権変動

錯誤、詐欺、強迫などは複合的に、代理・債権・物権変動でも出題されており、

近年はこの種の複合出題が目立ちます。

そうは言っても、昨年の通謀虚偽表示のように、ある程度詳しく知っていないと

解答を即決できないものもあり、また基本と言う意味でも、意思表示は固め

ておく必要があります。

基本書では意思表示は冒頭である為、簡潔に記していることが多く、債権や物権

でもついでに説明している場合もあります。(始めから詳しく説明したら、

読者が読む気を無くしてしまうことへの配慮もあると思います)

この連載では、意思表示を一通り学習した方が整理するために読む

という前提でまとめていきたいと思います。

代理、債権や物権変動で意思表示のカラムもの

も当然射程範囲にはいっています。


引き続き、意思表示のガイダンス・1回目を読む

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