Brush Up! 権利の変動篇
契約総合の過去問アーカイブス 契約解除の小問集合・平成2年・問8
●メッセージ |
本問題は,消去法で解く問題です。 |
契約の解除に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか。(平成2年・問8) |
1.「不動産の売主は,売買契約と同時にした買戻しの契約によって,買主が支払った代金及び契約の費用を返還して,その売買契約を解除することができる。」 |
2.「売主が契約の当時その売却した権利が自己に属さないことを知らない場合において,その権利を取得して買主に移転することができないときは,売主は,損害を賠償して契約を解除することができる。」★ |
3.「無償の委任契約においては,各当事者は,いつでも契約を解除することができ,その解除が相手方のために不利な時期でなければ,その損害を賠償する必要はない。」 |
4.「請負契約において請負人が仕事をしない間は,請負人は,損害を賠償して契約を解除することができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | ○ | × |
1.「不動産の売主は,売買契約と同時にした買戻しの契約によって,買主が支払った代金及び契約の費用を返還して,その売買契約を解除することができる。」 |
【正解:○】 ◆買戻し契約の解除 → 買戻し 買戻しとは、『売主が売買契約と同時に買戻しの特約をつけておけば、買主の支払った代金と契約の費用を返還して(利息は特約があるとき)、その不動産を買い戻すことができる』制度です。(民法579条) 判例では,この買戻しは,特約による解除権の留保と解されています。(最高裁・昭和35.4.26) つまり,売買契約を解除することによって,『買い戻す』ことになります。 |
2.「売主が契約の当時その売却した権利が自己に属さないことを知らない場合において,その権利を取得して買主に移転することができないときは,売主は,損害を賠償して契約を解除することができる。」★ |
【正解:○】 ◆他人物売買:善意の売主からの解除 → 担保責任 この肢は他人物売買の問題です。問題文にはありませんが,この場合の買主は「他人物売買について善意」であることを前提としています。〔消去法で,このように判断せざるを得ない。〕 他人物売買では,売主が売買の目的物が他人の物であることを知らないで,買主に権利移転できなかった場合,善意の売主からも解除することができます。(562条)
▼本問題は,「誤りはどれか」という設定ですが,肢4が明らかに誤りなため,肢3は○として設定していたものと思われます。 |
3.「無償の委任契約においては,各当事者は,いつでも契約を解除することができ,その解除が相手方のために不利な時期でなければ,その損害を賠償する必要はない。」 |
【正解:○】 ◆委任契約解除での損害賠償 → 委任 委任契約は、解除権放棄の特約がなければ、当事者のどちらからでも、またいつでも、何ら特別の理由がなくても、解約できます。(民法651条) しかし、当事者の一方が相手方にとって不利な時期に委任契約を解除したときは、原則としてその損害を賠償しなければなりません。(651条2項) |
4.「請負契約において請負人が仕事をしない間は,請負人は,損害を賠償して契約を解除することができる。」 |
【正解:×】 ◆解除 → 請負 注文者はその仕事が不要となっても契約をした以上は解除できないとすると、注文者は相当な不利益を被ることになります。 民法では、注文者は、請負人が仕事を完成するまでは、請負人に損害賠償をしていつでも解除できることになっています。 (民法641条) ▼仕事が完成すれば、目的物の引渡しがなくても解除することはできません。(大審院・昭和7.4.30) ▼給付が可分で、その給付が当事者に利益を有するならば、すでに完成した部分については解除はできません。(大審院・昭和7.4.30)
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●関連問題 |
請負契約において,請負人は,仕事の完成するまでの間,いつでも,注文者の受ける損害を賠償すれば,その契約を解除することができる。(司法試験択一・昭和58年) |
【正解:×】 請負の仕事が完成するまで,損害賠償することにより,理由を問わず,いつでも解除できるのは注文者であって請負人ではありません。 |