Brush Up! 権利の変動篇  過去問のSummary

担保責任 : 他人物売買−問題を解く視点とKEY


アウトライン−善意・悪意に関係なく,買主は,解除することができる

     買主  解除  損害賠償  除斥期間
 全部他人物売買  善意      なし
 悪意    ×  なし

 ⇒ 上記は,他人物の所有権移転ができないときに,売主に故意or過失がないときの原則です。売主に故意or過失があるときは,買主が悪意でも,買主は債務不履行責任の追及をすることができるので,債務不履行としての損害賠償請求をすることができます。(415条,543条,最高裁・昭和41.9.8)

全部他人物で移転できないときの担保責任の考え方

 善意・悪意の買主・解除できる
                └ 買主が善意ならば,損害賠償請求できる

⇔ 一部他人物との比較

    買主  代金減額  解除  損害賠償  除斥期間
 一部他人物売買  善意        知ったときから1年
 悪意    ×  ×  契約時から1年

どんなときに売主は担保責任を負うか

 売主は,他人から取得して買主に移転する義務(560)があり,
 売主が買主に移転できないとき(561)

 (いったん買主に移転登記しても,権利を主張する者が出現
 して,最終的に所有権を取得できなかった場合も含む。

 契約成立時に売主が所有権をもっていても登記がなく,
 最終的に買主に所有権を移転できなかった場合も含む。 )

 〔判例〕 (最高裁・昭和25.10.26)

 他人物売買で所有権を移転できなくなったことによる担保責任の規定は,
 原始的(契約成立前),後発的(契約成立以降)を問わず
 また債務者に帰責事由があるかないかを問わず,適用され,
 『所有権を移転できなくなったこと』のみで買主は解除できる。

 解除 買主は善意・悪意どちらでも解除できる

 善意ならば,損害賠償請求もできる。

■他人物売買の単独問題の出題

昭和48年昭和54年平成11年(2肢出題)・・・・・

■他人物売買での所有権移転の時期

 当事者に特約がなければ,売主が,所有者から目的物を取得する契約を締結したと同時に,所有権は直ちに買主に移転します。(大審院・大正8.7.5)

●チェック1

1.「他人の所有物を目的とする売買は有効であり,その売主は,その目的物の所有権を取得して買主に移転する義務を負う。」(行政書士・平成9年)

【正解:民法560条 

●チェック2
 他人の権利を売買の目的とした場合において,売主がその権利を取得して,買主にこれを移転できなかったときは,買主が善意であった場合に限り,買主は,契約を解除することができる。(司法書士・平成4年・問3)
【正解 : ×】売主がその権利を取得して,買主にこれを移転できなかったときは,善意・悪意の買主とも解除できる。民法561条

善意の売主の解除権 昭和48年,昭和54年,平成2年,平成11年出題

売主が,契約当時,売却した権利が自己の権利ではないことを知らなかったときに,その権利を取得して買主に移転できない場合は,売主から解除することができます。(562条)

 買主の知・不知  他人物であること善意の売主ができること  根拠条文
 買主が善意のとき  損害賠償して,売主から解除できる。

 解除+損害賠償

 562条1項
 買主が悪意のとき  権利移転できなかったことを通知して売主から解除

 できるが,損害賠償は不要

 562条2項
●チェック
 AB間で土地・甲の売買契約が結ばれた。買主は売主に対して手付金を支払った。契約当時,土地・甲が所有であることを知っていたは,土地・甲をから取得できないことを理由に売買契約を解除することができる。(司法試験択一・平成7年)
【正解 : ×

 (売主)・・・・(真の所有者)
 |
 (買主)

 他人物売買では,売買の目的物が自分のものではないと知らなかった場合に限り,売主は,契約を解除することができます。

 売主が悪意の場合は,解除することはできません。

 → 宅建試験の平成11年・問10では,売主の善意・悪意だけではなく,買主の善意・悪意も絡めたさらにイジワルな問題になっています。


他人物売買の過去問セレクションを見る

担保責任のトップに戻る

Brush Up! 権利の変動に戻る