Brush Up! 権利の変動編
契約総合の過去問アーカイブス 平成15年・問2 停止条件付契約
Aは,Bとの間で,B所有の不動産を購入する売買契約を締結した。ただし,AがA所有の不動産を平成15年12月末日までに売却でき,その代金全額を受領することを停止条件とした。手付金の授受はなく,その他特段の合意もない。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(平成15年・問2) |
1.「平成15年12月末日以前でこの停止条件の成否未定の間は,契約の効力が生じていないので,Aは,この売買契約を解約できる。 」 |
2.「平成15年12月末日以前でこの停止条件の成否未定の間は,契約の効力が生じていないので,Bは,この売買契約を解約できる。」 |
3.「平成15年12月末日以前でこの停止条件の成否未定の間に,Aが死亡して相続が開始された場合,契約の効力が生じていないので,Aの相続人は,この売買契約の買主たる地位を相続することができない。」 |
4.「Aが,A所有の不動産の売買代金の受領を拒否して,故意に停止条件の成就を妨げた場合,Bは,その停止条件が成就したものとみなすことができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
●停止条件付契約の出題 |
昭和43年・・・停止条件付法律行為の無効 昭和61年・・・危険負担での特則〔535条1項〕 平成11年・・・条件成就未定の間の保護 平成15年・・・条件成就未定の間の保護 ※平成15年では,法令上の制限の問16肢2でも停止条件付売買契約が出題されている。(国土利用計画法の事後届出) |
1.「平成15年12月末日以前でこの停止条件の成否未定の間は,契約の効力が生じていないので,Aは,この売買契約を解約できる。 」 |
【正解:×】 ◆成否未定の間でも,解除するには解除事由が必要。 『条件の成否未定の間は,契約の効力は生じていない』という前半の記述は正しいのですが,契約そのものは有効に成立しています。 いったん成立した契約を解除するには,停止条件付の契約であっても,それなりの解除事由が必要です。理由もなしに解除することはできません。 したがって,A(買主)は成否未定の間でも,理由もなしに解除することはできません。 |
2.「平成15年12月末日以前でこの停止条件の成否未定の間は,契約の効力が生じていないので,Bは,この売買契約を解約できる。」 |
【正解:×】 ◆成否未定の間でも,解除するには解除事由が必要。 買主Aだけでなく,売主Bも,成否未定の間であっても,解除事由なしに解除することはできません。 |
3.「平成15年12月末日以前でこの停止条件の成否未定の間に,Aが死亡して相続が開始された場合,契約の効力が生じていないので,Aの相続人は,この売買契約の買主たる地位を相続することができない。」(類・平成11年・問6の肢4) |
【正解:×】 ◆成否未定の間でも,処分・相続・保存・担保することができる。 条件が成否未定の間であっても,当事者は条件が成就すれば利益が得られると期待しています。民法は,この期待を一定の範囲で保護しています。(期待権;条件付権利) 民法では,条件の成否未定の間でも当事者の条件付権利は,独立した財産権とみなし,普通の契約と同様に,これを処分・相続・保存したり,担保をつけることができるとしました。(129条) したがって,Aが死亡しても,Aの相続人は,この売買契約の買主たる地位を相続することができます。 |
4.「Aが,A所有の不動産の売買代金の受領を拒否して,故意に停止条件の成就を妨げた場合,Bは,その停止条件が成就したものとみなすことができる。」(類・平成11年・問6の肢2) |
【正解:○】 ◆条件の成就を故意に妨げられた場合は,条件が成就したとみなすことができる。 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは,信義則によりそのような者を保護する必要はなく,相手方は,その条件が成就したとみなすことができます。(130条) A所有の不動産の売買代金をAが受領することが停止条件になっていたので,Aがその受領を拒んだということは,Aは条件の成就を意図的に(故意に)妨げたことになります。 この場合,Bは,条件が成就したとみなし,契約の効力が生じたと主張することができます。(形成権) |