Brush Up! 権利の変動篇

無効と取消しの過去問アーカイブス 昭和43年

停止条件付法律行為〔不法な停止条件・既成条件・不能の条件〕


次の記述のうち,法律行為が無効でないものはどれか。(昭和43年)

1.「に,の所持している宝石を盗んだら土地を売ると約束した。」

2.「に,を殴打することを思いとどまったら土地を売ると約束した。」

3.「に,が宅地建物取引主任者資格試験に合格していたら土地を売ると約束した。ただし,ABは知らなかったが既には宅地建物取引主任者資格試験に合格していた。」

4.「に,太陽が西から上ったら土地を売ると約束した。」

【正解】

無効 無効 有効 無効

●条件付法律行為
◆停止条件付法律行為

 ・・・条件が成就することにより法律行為の効力が発生する。

   条件成就
 ========●――――
     効力発生

 条件成就までは停止していることで、成就したらGO!! (法律行為の効力発生)

◆解除条件付法律行為

 ・・・条件が成就することにより現在効力のある法律行為が消滅する。

   条件成就
 ――――●========
     効力消滅

 条件が成就したらSTOP!!  (法律行為の効力の消滅)

註 『〜ならば・・・する。』 ⇒ 停止条件か解除条件かの判断は,「〜ならば」を見るのではなく,「・・・する」で判断します。「・・・する」が「法律行為の効力が消滅すること」を意味している場合は解除条件になります。

●条件付法律行為の条件(及びその成否)による効果

 法律行為の目的は,可能・確定・適法かつ社会的妥当性のあるものでなければいけません。そのうちの一つでも欠くとその法律行為は無効となります。

 法律行為に条件〔停止条件・解除条件〕が付されている場合には,条件によってもその効力は影響を受けます。

(1) 条件に親しまない行為 

 ・身分行為〔婚姻・養子縁組・相続の承認や放棄〕に条件を付けても無効。

 ・単独行為〔取消・追認・解除・相殺など〕には,原則として条件はつけられない。
   ex.『詐欺による意思表示の取消には条件をつけられない。』

(2) 条件そのものによって法律行為が無効になる場合

 ・既成条件 過去の確定していた事実当事者が知らない間に交わした法律行為。

   既に条件の成就が確定(131条1項)→ 停止条件 法律行為が無条件になる
                           解除条件 法律行為が無効になる

   既に条件の不成就が確定(131条2項)→ 停止条件 法律行為が無効になる
                            解除条件 法律行為が無条件になる 

     条件の成就が確定  条件の不成就が確定
 停止条件付法律行為  無条件  無効
 解除条件付法律行為  無効  無条件
     

 ・不法な条件を付した法律行為は,原則として無効(132条前段)
  ただし,法律行為全体として不法性・反社会性を有しない場合は無効にならない。
   ex.『もし私が不倫したら妻である君に慰謝料をあげよう。』

 ・不法行為をしないという条件を付した法律行為無効(132条後段)
  ただし,法律行為全体として不法性・反社会性を有しない場合は無効にならない。
   ex.『もし君が私との不倫をやめてくれるのなら手切金を払うよ。』

 ・不能の停止条件を付した法律行為は無効(133条1項)
   ex.『太陽が西から上ったら1億円をあげよう。』
     →条件の成就はありえないのだから,贈与契約の効力は発生しない。

 ・不能の解除条件を付した法律行為は無条件とされる。(133条2項)
   ex.『1億円をあげるけど,太陽が西から上ったら金を返してくれ。(贈与がなかつたことにする。)』
     →条件の成就はありえないのだから,贈与契約の効力は失われない。

 ・停止条件が単に債務者の意思のみにかかっているときは無効(134条)
   ex.『私の気が向いたら君に100万円をあげよう。』→約束していないのに等しい。
   
注意1.『債権者の意思のみにかかる場合は停止条件・解除条件のどちらでも有効になる。』
        ex.『君が100万円を欲しいと思うのならば100万円をあげよう。』
(大審院・大正7.2.1)
   注意2.『品質がよいと思ったら代金を払うという売買契約』は,債務者の意思のみによる停止条件
         ではないので無効ではない。
(最高裁・昭和31.4.6)
   注意3.『100万円をあげるけど私の気が変わったら返してもらう(贈与がなかつたことにする)』という
        贈与契約は,解除条件付法律行為なので債務者の意思のみにかかっていても有効。

     債務者の意思  債権者の意思
 停止条件付法律行為  無効  有効
 解除条件付法律行為  有効  有効

1.「に,の所持している宝石を盗んだら土地を売ると約束した。」

【正解:無効

◆不法な停止条件

  の所持している宝石を盗んだら → 不法な停止条件付法律行為は無効。

2.「に,を殴打することを思いとどまったら土地を売ると約束した。」

【正解:無効

◆不法行為をしないことを停止条件

 を殴打することを思いとどまったら → 不法行為をしないことを停止条件としている
                          のでその法律行為は無効。

3.「に,が宅地建物取引主任者資格試験に合格していたら土地を売ると約束した。ただし,ABは知らなかったが既には宅地建物取引主任者資格試験に合格していた。」

【正解:有効

◆既に成就している停止条件の場合 〔既成条件〕

 が宅建試験に合格していたら → 当事者ABとも過去の事実を知らなかったこと,
                       かつ,合格していたこと〔成就〕から
                       その法律行為は有効。

ex.『昨夜のプロ野球の試合でヤクルトが勝っていたら昼食をおごってやるよ。』

 実はヤクルトは勝っていた。(成就)→ その法律行為は無条件になる。おごる
 実はヤクルトは負けていた。(不成就)→ その法律行為は無効になる。…おごらない

4.「に,太陽が西から上ったら土地を売ると約束した。」

【正解:無効

◆不能の停止条件

 太陽が西から上ったら → 絶対に起こり得ない不可能な自然現象なので
                  その法律行為は無効。

●停止条件付契約の出題
 昭和43年・・・停止条件付法律行為の無効
 昭和61年・・・危険負担での特則〔535条1項〕
 平成11年・・・条件成就未定の間の保護
 平成15年・・・条件成就未定の間の保護

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