Brush Up! 権利の変動編

区分建物の登記に関する問題2 敷地権

正解・解説

区分建物の登記の記載例


【正解】

× × × ×

▼敷地権

 敷地利用権は、その敷地上にある区分建物の専有部分を所有するための権利であり、この敷地利用権には所有権、地上権、賃借権、使用借権があります。この敷地利用権のうち登記された権利で専有部分と一体化されたものを不動産登記法では敷地権と言います。

不動産登記法上では、敷地権とは、

・区分所有法2条6項に規定する敷地利用権(登記されたものに限る)であり、かつ、

・区分所有者の有する専有部分と分離して処分できない

ものを言います。(不動産登記法44条1項9号)

※敷地権は,区分所有法ではなく,不動産登記法で規定されています。

 つまり、敷地権の場合、区分所有建物(専有部分)と土地の権利を別々に処分することができないようになっています。

 例えば、敷地権である敷地利用権は専有部分とワンセットでなければ第三者に売却できませんし、また専有部分に設定された抵当権の効力は敷地利用権にも及びます。

現実には、敷地権ではない敷地利用権もあります。

・規約に別段の定めがあって、「専有部分と敷地利用権の分離処分」が可能な場合の所有権、地上権、賃借権、

敷地利用権が使用借権の場合〔使用借権は登記できない。〕

この二つの場合敷地権にはなりません。

敷地権の持分の割合は、区分建物の表題部の「敷地権の表示」の欄に記載されます。

 敷地権とは、区分建物の専有部分と一体化され登記された敷地利用権のことです。

●敷地権たる旨の登記まで
 分譲業者などがマンションを新築
  
 表題登記
  
 敷地権の表示
(・1棟の建物の表題部に、「敷地権の目的たる土地の表示」の登記がなされる。
 ・区分建物の表題部に、「敷地権の表示」の登記がなされる。)
  
 敷地権たる旨の登記
(敷地権の表示の登記がなされると、登記官が、敷地権の目的である土地の登記記録の相当区に職権で、登記する。)

 区分建物についての登記に関する次の記述は○か、×か。

1.「区分建物について敷地権の表示が登記されたときは、敷地権の目的たる土地の

登記記録の表題部敷地権である旨の登記がされる。」H13-14-4、類・昭和62

【正解:×本肢は単独問題では毎回出題されている定番の問題です。

◆敷地権である旨の登記→土地の登記記録の相当区

 登記官は、敷地権である旨の登記をするときは、土地の登記記録の、表題部ではなく、相当区、つまり、

・その敷地利用権が所有権に基づく→権利部の「甲区」

・地上権又は賃借権の場合→権利部の「乙区」

に職権で記録しなければなりません(不動産登記法46条,登記規則4条4項,同119条)

▼敷地とは何か…法定敷地・規約敷地・(みなし敷地)

 区分所有法での「建物の敷地」とは、建物が所在する土地、および、5条1項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。(区分所有法2条5項)

法定敷地「建物が所在する土地」(区分所有法2条5項)

規約敷地「建物および法定敷地と一体となって管理または使用される土地」(5条1項)
        庭・通路・広場・駐車場・テニスコート・附属建物等の敷地など。
        必ずしも法定敷地と隣接している必要はない。
        (団地などで)他の建物の法定敷地・規約敷地となっている土地でもよい。

●参考問題
1.「建物について敷地権の表示を登記したときは、敷地権の目的である土地の登記記録中の権利部の相当区に、敷地権たる旨の登記をしなければならない。」H1-16-2,昭和61

【正解:

2.「登記官は、区分建物について敷地権の表示の登記をしたときは、敷地権の目的たる

土地の登記記録の表題部に敷地権の目的となった旨の登記をしなければならない。」

H8-16-4

【正解:×

 上の問題と同工異曲の問題です。

 登記官は、区分建物(専有部分)について敷地権の表示の登記をしたときは、敷地権の目的たる土地の登記記録の相当区に敷地権の目的となった旨の登記をしなければいけません。

この「敷地権たる旨の登記」がなされると、

・区分建物のみの所有権移転登記や抵当権の設定登記

・敷地権のみの移転登記や抵当権の設定登記

などはできなくなります。(分離処分の禁止)(不動産登記法73条)

3.「敷地権があるときは、敷地権の表示は、専有部分の表題部に記載される。」昭和60改

【正解:

◆敷地権の表示の登記=区分建物の表題部

 敷地権(敷地利用権のうち、専有部分と分離して処分できず、かつその旨の登記があるもの)の表示の登記は、区分建物の表題部に記載されます。

土地の登記記録の権利部の相当区に、「敷地権たる旨の登記」がなされるのと混同しないようにしましょう。

4. 「敷地権の目的たる土地の表示は、1棟の建物の表題部に記載される。」

【正解:

◆敷地権の目的たる土地の表示=1棟の建物の表題部

 1棟の建物の表題部は、次のものから構成されています。

1棟の建物の表示
(専有部分の家屋番号の一覧、所在、建物の名称、構造、床面積、登記の日付など)

敷地権の目的たる土地の表示
(土地の符号、所在及び地番地目地積、登記の日付)

▼敷地権に関連する登記は三つあります。間違えやすいので注意!!

▼敷地権たる旨の登記  敷地権の目的である土地の登記記録の
 権利部の相当区

 (敷地権が所有権→甲区、

  敷地権が地上権・賃借権→乙区)

▼敷地権の目的たる土地の表示  表題部(1棟の建物の表題部)
▼敷地権の表示の登記  表題部(区分建物の表題部)

5.「敷地権の目的たる土地について、区分地上権設定の登記の申請は、することが

できない。」

【正解:×

◆敷地権の目的たる土地に区分地上権を設定できる

 専有部分と敷地利用権とは原則として分離処分ができません。(不動産登記法73条、区分所有法22条1項)

 しかし、ここでいう「分離処分」とは、売買や差押え、担保物権の設定などによる分離処分を意味します。このため、「事実行為」(時効・収用など)や「区分地上権の設定」などは含まれません。

 また、「専有部分に賃借権を設定」する場合も、この分離処分禁止の原則は働かないとされています。

 敷地権の目的たる土地に区分地上権を設定することは、この分離処分には該当しないため、区分地上権設定の登記を申請できます。

区分地上権

 地下や空間の上下の範囲を区切って特定の層のみを対象にした区分地上権が昭和41年に民法に追加されました。これにより、地下や空間の上下の範囲の各層の並行的・効率的・立体的な利用が可能になりました。(民法269条の2)

●分離処分禁止の原則に反する処分
 敷地権があるとき、つまり、一体化が公示されている専有部分と敷地利用権のどちらか一方だけを処分しても、その処分は無効です。登記記録を見れば、分離処分が禁止されていることは容易にわかるので、それを調べなかった人を保護する必要はないと考えられます。

 しかし、分離処分禁止の登記がされておらず、分離処分禁止になっていることを知らないで、専有部分または敷地利用権を買い受けた者にまでこの規定をあてはめることは取引の安全を害することにもなります。

 そこで、区分所有法では、

専有部分の登記簿敷地権の表示の登記がなされる以前に

土地の登記簿その土地が敷地権の目的になっている旨の登記がなされる以前に

 専有部分または敷地利用権の処分がなされた場合で、その処分の相手方が分離処分禁止の目的物であることを知らなかったときは、その処分の無効(売買契約などの無効)を相手方に主張できないとしています。(区分所有法23条) 

6.「専有部分の全部を所有し、敷地の所有権を単独で有する者は、専有部分の床面積

割合と異なる割合により所有権を敷地権として表示する区分建物の表題登記の申請

は、することができない。」(土地家屋調査士・H5-4-イ・改)

【正解:×

◆敷地権を専有部分の床面積割合と異なる割合で登記申請

 敷地権の割合を公正証書による規約で、専有部分の床面積割合と異なる割合で定めて、区分建物の表示の登記を申請することは、区分所有法22条2項但書、3項によりすることができます。たとえば、各専有部分の価格割合によって敷地利用権の割合を定めることもできます。

●区分所有法の条文チェック
(分離処分の禁止)

第22条 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない

前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第14条第1項から第3項までに定める割合による。

 ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による

 (複数の専有部分を所有する区分所有者が各専有部分を処分する場合に、各専有部分の敷地利用権を決めるときの規定)

前2項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。

 (分譲主が分譲する場合に、各専有部分の敷地利用権を決めるときの規定)

(共用部分の持分の割合)

第14条 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。

前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有する者があるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれの区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。

前3項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。

<番外知識>土地のみ、区分建物のみに登記できるもの
●区分地上権と賃借権

 土地のみについては区分地上権、区分建物(専有部分)のみについては賃借権が登記できます。不動産登記法上では、担保物権の登記については制限がありますが、土地の用益物権や専有部分の賃借権の登記については制限がないためです。(通達 昭和58.11.10-6400)←いわゆる、「先例」と言われているものです。

●敷地権が地上権のときの「土地のみの所有権移転登記」

 敷地利用権が地上権の場合は、敷地利用権である地上権と専有部分の分離処分はできないものの、土地のみの所有権移転の登記は可能です。どういうものかというと次のような場合です。

 土地の所有者が、「敷地利用権が地上権であるマンションの敷地」になっている土地を譲渡することはありうる話です。

 この例のように、敷地利用権〔地上権〕と両立し得るものであるならば、土地のみの所有権移転の登記は可能です。<地上権=乙区、所有権=甲区 であることに注意>

●敷地の基本チェック―区分所有法の復習
1.「建物が1筆の土地の一部の上に建築された場合には、建物の存する部分のみが、法定敷地となり、その余の部分は、規約敷地とみなされる。」

【正解:×

 建物が1筆の土地の一部にある場合でも、その1筆の土地全部が法定敷地になります。(区分所有法・2条6項)

2. 「ある1棟の建物の法定敷地となっている土地を、重ねて他の1棟の建物の規約敷地とすることはできない。」

【正解:×

 ある1棟の建物の法定敷地又は規約敷地となっている土地でも、重ねて他の1棟の建物の規約敷地にすることができます。(昭和58.11.10 通達)

 団地などでは、このようになっていることがあります。

3. 「法定敷地と隣接していない土地も規約敷地とすることができる。」 

【正解:

 規約敷地は、法定敷地と隣接していることが要件にはなっているわけではなく、法定敷地と隣接していなくても、建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用することができるものであれば(駐車場、庭園、通路など)、規約敷地にすることができます。(昭和58.11.10 通達)

 このとき、既に登記されている区分建物の規約敷地とした場合は、その区分建物の表示の変更の登記を申請することができます。

4. 「数筆の土地にまたがって所在する建物の一部が滅失したことにより建物が所在しない土地を生じた場合には、その土地は、当然に建物の敷地から除外される。」

【正解:×

 建物の一部滅失により建物が所在しない土地が生じた場合は、その土地は規約敷地とみなされます。(区分所有法・5条2項)→ みなし敷地

 当然に、建物の敷地から除外されるわけではありません。

5.「敷地利用権に対する区分所有者の持分割合については,区分所有法に直接の定めはない。」(管理業務主任者H14-32-3)

【正解:

 間違いやすいのですが、敷地利用権に対する区分所有者の持分割合については,区分所有法では直接の規定はありません。⇔区分所有法・22条2項・3項

6.「敷地の共有持分は,共有者間で別段の定めがない限り,専有部分の面積比による。」(マンション管理士H14-1-1)

【正解:×

区分所有者全員が敷地全体を共有または準共有する場合において、その敷地利用権に対する区分所有者の持分割合(または準共有持分の割合)をどう定めるかについては、区分所有法では直接の規定はありません。(共用部分の共有持分割合は規約で定まります)⇔区分所有法・22条2項・3項

実務的には、「敷地利用権の共有持分割合は、原則として、各専有部分の床面積割合によって算定されると解するのが妥当(管理業務主任者の知識・平成13年版、p.77)とされていますが、上の区分所有法・22条二項や三項とのニュアンスの厳密な違いも押さえておく必要があります。


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