Brush Up! 権利の変動編

区分建物の登記の問題4 所有権保存・分離移転登記の禁止など

正解・解説

区分建物の登記の記載例


【正解】

×

 区分建物についての登記に関する次の記述は○か、×か。

区分建物とは、1棟の建物の構造上区分された数個の各部分で、独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができる(区分所有法1条)ものをいいます。

1.「区分建物の所有権保存の登記は,表題部所有者から所有権を取得した者も,

申請をすることができるが,当該建物が敷地権付き区分建物であるときは,当該敷地権

の登記名義人の承諾を得なければならない。」H12-14-4,H8-16-2,H1-16-3

【正解:

 はじめてする所有権の登記をすることのできる者は、原則として“表題部に自己又は被相続人が所有者と記載されている者”又は“確定判決により所有権を有することが確認された者”等です。

 しかし、例えば100戸の専有部分がある分譲前のマンションの場合、通常は表題部の所有者は分譲主等であり、登記手続の簡便化の要請から、例外として、表題部所有者(分譲業者等)から所有権を取得した者も、直接自己名義の所有権保存の登記を申請することができます。

区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。 (不動産登記法・74条2項)

●参考問題
1.「区分建物の所有権保存の登記は、表題部所有者から所有権を取得した者も、申請をすることができる。」H1-16-3

【正解:

 区分建物の登記記録の表題部所有者から所有権を取得した者は,直接自己名義に当該建物の所有権保存の登記を申請することができます。ただし,当該建物が敷地権付き区分建物であるときは,当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければなりません(不動産登記法・74条2項)

2.「敷地権の表示のある区分建物の表題部に記載された所有者Aから所有権を取得したBの相続人Cは、直接自己名義で所有権保存の登記を申請することができない。」

【正解:司法書士・平成2年・問18・肢5改

 区分建物の表題部に記載された所有者A→マンションの分譲業者等

 Aから所有権を取得したB→分譲業者等からマンションを買った人

 本肢は、AもBも所有権保存登記をしないまま、Bが死亡し、Cが相続したケースです。この場合は、Cは不動産登記法74条2項に規定されている保存登記の申請者にはなれません。

 不動産登記法74条2項の保存登記の申請適格者とは、表題部所有者Aから直接取得した者Bに限られており、Bの相続人Cは直接自己名義で所有権保存登記を申請することはできません。(戸建住宅などとは異なります)

 本肢のような場合は、まずB名義で保存登記をして、そのあとC名義で相続の登記をすることになります。

2.「敷地権付き区分建物の登記記録には、その建物のみの売買を登記原因と

する所有権移転の登記を自由にすることができる。」昭和61

【正解:×

◆所有権の分離移転登記の制限

 敷地権付区分建物の登記記録には、その建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権の登記をすることはできません。(不動産登記法73条・3項)

 例外

 ただし、当該建物の敷地権が生じた後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は当該建物のみの所有権についての仮登記若しくは当該建物のみを目的とする質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生じたものは、することができます。

3.「敷地権付き区分建物の登記記録には、その建物のみの所有権に関する

仮登記で、敷地権の生じた日の前に登記原因が生じたものについては、登記すること

ができる。」昭和61

【正解:

◆所有権の分離移転登記の制限の例外

 敷地権付き区分建物であっても、その建物のみの所有権に関する仮登記で、その建物が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものについては、登記することができます。(不動産登記法73条3項)

建物の分離処分禁止の例外 

 敷地権付き区分建物では,原則として区分建物の分離処分は禁止されていますが,以下の場合は例外です。

 ・その敷地が敷地権の目的となる前に登記原因が生じていた所有権に関する仮登記

 ・その敷地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものであれば、抵当権・質権の設定を登記することができます

 このほかには,以下の2つがあります。

 敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権に係る権利に関する登記(所有権・一般の先取特権・質権・抵当権)であって,敷地権の登記をする前に登記されたもの(登記の目的等が敷地権の目的となった土地の権利にされた担保権の登記の目的等と同一の担保権の登記を除く。)

 ・敷地権が生じた後にその登記原因が生じたもの(分離処分が禁止されていない場合に限る。)

敷地権付き区分建物の登記記録にはその建物のみを目的とする所有権の移転登記一般の先取特権の保存,質権または抵当権の設定の登記はすることができない。(不動産登記法・73条3項)

4. 「敷地権が土地の所有権である場合において、敷地権たる旨の登記をしたときでも、

土地の所有権に関する仮登記でその土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が

生じたものの場合は、その土地の登記記録に所有権の移転の登記をすることができる。」

【正解:

◆所有権の分離移転登記の制限

 敷地権が土地の所有権である場合において、敷地権たる旨の登記をしたときは、その土地の登記記録には所有権の移転の登記をすることができません。

 例外

 ただし、当該土地が敷地権の目的となった後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は敷地権についての仮登記若しくは質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものは、することができます。 (不動産登記法73条2項)

土地の分離処分禁止の例外 

 敷地権たる旨の登記をした後は原則として土地の分離処分は禁止されていますが,以下の場合は例外です(不動産登記法・73条2項但書)

 ・その土地が敷地権の目的となる前に登記原因が生じていた敷地権に関する仮登記

 ・その土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものであれば、抵当権・質権の設定を登記することができます平成元年出題

 ・当該土地が敷地権の目的となった後にその登記原因が生じたもの(分離処分が禁止されていない場合に限る。)

●分離処分禁止の原則に反する処分
 敷地権があるとき、一体化が公示されている専有部分と敷地利用権のどちらか一方だけを処分しても、その処分は無効です。登記簿を見れば、分離処分が禁止されていることは容易にわかるので、それを調べなかった人を保護する必要はないと考えられます。

 しかし、分離処分禁止の登記がされておらず、分離処分禁止になっていることを知らないで、専有部分または敷地利用権を買い受けた者にまでこの規定をあてはめることは取引の安全を害することにもなります。

 そこで、区分所有法では、

分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることを登記した後

 専有部分または敷地利用権の処分がなされた場合で、その処分の相手方が分離処分禁止の目的物であることを知らなかったときは、その処分の無効(売買契約などの無効)を相手方に主張できないとしています。(区分所有法23条) 

●区分所有法
(分離処分の禁止)
第22条  敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。

2  前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第14条第1項から第3項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。

3  前2項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。

(分離処分の無効の主張の制限)
第23条  前条第1項本文(同条第3項において準用する場合を含む。)の規定に違反する専有部分又は敷地利用権の処分については、その無効を善意の相手方に主張することができない。ただし、不動産登記法 (平成16年法律第123号)の定めるところにより分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることを登記した後に、その処分がされたときは、この限りでない。

5.「敷地権の表示を登記した専有部分についてされた所有権に関する登記で建物のみ

に関する旨の附記のないものは、敷地権について同一の登記原因による相当の登記たる

効力を有する。」昭和61

【正解:

◆区分建物(専有部分)の登記記録に記載された登記の敷地権への効力

 敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権(一般の先取特権、質権又は抵当権をいう。)に係る権利に関する登記は、原則として、敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有する。

 敷地権付き区分建物では、専有部分の登記記録に記録される登記の効力は敷地権にも及びます。

 (専有部分と敷地権の一体的処分に関する登記は、建物の登記記録のみで行い、「敷地権も専有部分と同時に処分され、敷地権の処分の登記がなされた」ものとして扱い、土地の登記記録への登記を省略し、登記の簡略化を図っています。)

 例えば、敷地権付き区分建物(専有部分)について売買による所有権移転登記がなされたときは、敷地権について登記がなされなくても、敷地権が移転した旨の登記がなされたのと同じ効力が生じます(不動産登記法・73条1項)


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