Brush Up! 権利の変動篇

借地借家法の過去問アーカイブス 平成11年・問14

借家権 敷金関係の承継・取壊し予定の建物の賃貸借


賃貸人と賃借人との間の居住用建物の賃貸借契約に関する次の記述は、借地借家法の規定及び判例によれば、○か×か。(平成11年・問14)

1.「『は、が建物に造作を付加することに同意するが、は、賃貸借の終了時に、に対してその造作の買取の請求をしない』旨の特約は有効である。」

2.「が死亡した場合で、その当時の相続人ではない事実上の配偶者がこの建物で同居していたとき、は、当該建物の賃借権に限っては、相続人に優先しての賃借人としての地位を承継する。」

3.「この建物が、その敷地の売却に伴い2年後に取り壊されることが明らかな場合に、『建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する』旨の特約をAB間の賃貸借契約に定めるときは、公正証書によってしなければならない。」

4.「に敷金を交付していた場合に、がこの建物をに売却し、賃貸人としての地位をに承継したときでも、の承諾がない限りの敷金返還債務は承継されず、は、に対してのみ敷金の返還請求をすることができる。」

【正解】

× × ×

1.「『Aは、Bが建物に造作を付加することに同意するが、Bは、賃貸借の終了時に、Aに

対してその造作の買取を請求しない』旨の特約は有効である。」

【正解:造作買取請求権

 造作買取請求権に関する規定は任意規定で、『賃貸借の終了時に、賃貸人に対してその造作の買取の請求をしない』旨の特約は有効。(37条) 

→ 平成7年・問13・肢1参照 、平成3年・問13・肢1も参照して下さい。

2.「Bが死亡した場合で、その当時Bの相続人ではない事実上の配偶者Cがこの建物で

同居していたとき、Cは、当該建物の賃借権に限っては、相続人に優先してBの賃借人と

しての地位を承継する。」

【正解:×居住用建物の賃貸借の承継

 相続人がいる場合には、その借家権は相続人が相続します。この場合、事実上の配偶者には、借家権の承継はできません。(借地借家法36条)

→ 平成7年・問13・肢3の補説参照

3.「この建物が、その敷地の売却に伴い2年後に取り壊されることが明らかな場合に、『建

物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する』旨の特約をAB間の賃貸借契約に定める

ときは、公正証書によってしなければならない。」

【正解:×取壊し予定の建物の賃貸借

 「取壊し予定の建物の賃貸借」の旨の特約は、建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければなりませんが、公正証書にしなくてもかまいません。(借地借家法39条)

●類題
「借地人が定期借地権に基づき建てた家屋を賃貸する場合は,借家人との間で 「賃貸借は,定期借地権の期間満了に伴い家屋を取り壊すこととなる時に終了し,更新はしない」 とする契約を締結することができる。」(平成7年・問12・肢2)
【正解:
●取り壊し予定の建物の賃貸借

 法令または契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すことが明らかな場合に賃貸借をするときは,『建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する』旨の特約をすることができます。この特約は『取り壊すべき事由』を記載した書面によってすることになっています。(借地借家法39条)

 『取り壊すべき事由』の具体的なものとしては,以下のものです。〔建物所有者が法令や契約に関係なく,単にいずれ取り壊そうと思っている建物を賃貸しようとする場合には適用されないことに注意。〕

定期借地権に基づいて建てられた建物を賃貸する場合
 一般定期借地権事業用定期借地権が設定された借地の上の建物は借地契約期間の満了時には取り壊し,土地は更地で地主に返すことになっています。そのときまでに建物の賃借人には退去してもらう必要があります。(平成7年・問12・肢2)

建物を取り壊して土地を売却する契約を締結しているときにその建物を賃貸する場合
 売却のときまでに建物を撤去して更地で引渡すので,そのときまでに建物の賃借人には退去してもらう必要があります。(平成11年・問14・肢4)

法令に基づいて建物が除去・収用・移転されることが決定しているときにその建物を賃貸する場合
 
土地収用法,都市計画事業の施行,都市再開発法,土地区画整理法など。

4.「BがAに敷金を交付していた場合に、Aがこの建物をDに売却し、賃貸人としての地位

をDに承継したときでも、Dの承諾がない限りAの敷金返還債務は承継されず、Bは、Aに

対してのみ敷金の返還請求をすることができる。」

【正解:×敷金関係の承継

 Bは、Dに敷金の返還を請求できます。

 賃貸人が変更した場合、当事者間に特約がない限り、敷金関係は賃貸人となったDに承継されます。(最高裁・昭和44.7.17)

≪自習≫転貸の場合の敷金関係では、どうなるか調べてみましょう。

●類題
1.「Aは、BからB所有の建物を賃借して、居住しているが、Bがその建物をCに売却して登記も移転した。AがBに敷金を差し入れていた場合、Cは、Bからその敷金を受領していない限り、Aに対する敷金返還債務を引き継がない。」(H2-13-2)
【正解:×

 新賃貸人Cが前の賃貸人Bから敷金を受領していなくても、敷金の返還債務はCに引き継がれます。


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