Brush Up! 権利の変動篇

不動産登記 表示の登記のアウトライン 表示の登記の根底事項 改正対応

【類題】 表示の登記の基本問題 昭和56年・問15


表示に関する登記についての次の記述は,○か,×か。

1.「不動産の表示に関する登記は,不動産の物理的状況を公簿上明らかにすることを目的とするものであり,権利の登記と異なって,原則として,所有者に登記申請義務が課せられている。」

2.「不動産の表示に関する登記については,登記官に実地調査権が認められ,また,登記官が職権で表示に関する登記をすることもできる。」

3.「表示に関する登記については,申請人は,必ずしも登記所に出頭して申請する必要はない。」

4.「債権者は,債務者である所有者に代位して,建物の表題登記を申請することはできない。」

5.「真実の所有者でない者を登記簿の表題部に所有者として記載した表示の登記がされている場合であっても,その登記簿の記載を過失なく信頼して表題部所有者からその不動産を買い受けた者は,当該不動産の所有権を取得する。」

6.「新築建物が数人の共有であるときは,共有者の1人が,単独で共有名義の建物の表題登記を申請することができる。」

【正解】

× ×

1.「不動産の表示に関する登記は,不動産の物理的状況を公簿上明らかにすることを目的とするものであり,権利の登記と異なって,原則として,所有者等に登記申請義務が課せられている。」(土地家屋調査士・昭和43)

【正解:

◆申請義務

 権利の登記は,不動産についての権利の変動を第三者に対抗するためのものであり,権利の登記の申請は,利益を享受したい者が任意にすればよく,原則として,公法上の義務として強制されることはありません。

 しかし,表示に関する登記は,権利の登記とは別個に行われるものであり,土地・建物の物理的状況を正確に反映することが要請されています。

 そのため,表示に関する登記の全てに申請義務があるわけではありませんが,原則として,所有者等に申請義務が課されています。

<参考>

 原因発生後1ヵ月以内に登記申請することを義務付け,この義務を怠ると10万円以下の過料の制裁を受けることがあります。(不動産登記法136条)

 また,表示の登記はこのように義務付けられているため,登録免許税は課されません(登録免許税法別表第1)

 → 土地や建物の表示の登記(新築など)が非課税ではあっても,表示に関する登記の全てが非課税というわけではありません。

 http://homepage3.nifty.com/yro-yoshino/p8.html

 土地の表示   土地の表題登記 → 所有者

 土地の地目・地積の変更の登記 → 表題部所有者または
                       所有権の登記名義人

 土地の滅失の登記 → 表題部所有者または
                所有権の登記名義人

 建物の表示  建物の表題登記(区分建物を除く) → 所有者

 区分所有建物の表題登記 → 原始取得者
                    相続人などの一般承継人

 建物の表示の変更の登記 → 表題部所有者または
                    所有権の登記名義人

 建物の合体の登記 → 合体前の所有者,

                表題部所有者または
                所有権の登記名義人

 建物の滅失の登記 → 表題部所有者または
                所有権の登記名義人

2.「不動産の表示に関する登記については,登記官に実地調査権が認められ,また,登記官が職権で表示に関する登記をすることもできる。」(土地家屋調査士・昭和43)

【正解:

◆登記官の実地調査権と職権による表示の登記

 登記官は土地または建物の表示の登記の申請があった場合,又は,職権をもってその登記をする場合に,不動産の現況と登記簿の記載を一致させるため必要があるときは,現地において土地または建物の表示に関する事項を調査することができます。(法29条1項)

 登記官が職権で表示に関する登記(法28条)をしたときは,遅滞なく,その旨を表題部所有者または所有権の登記名義人または共有者の1人に通知することを要します。(法62条)

▼実地調査

 登記官は,事情の許す限り積極的に実地調査を励行し,その結果必要があるときは,職権で表示に関する登記をしなければならない。(準則・60条1項)

 登記官は,表示に関する登記のうちで申請をすべき事項で申請のないもの(準則で定めた一定のもの)を発見したときは,直ちに職権でその登記をすることなく,申請の義務のある者に登記の申請を催告するものとする。(準則・63条)

不動産の表示に関する登記は,登記官が職権ですることができる。(不動産登記法・28条)

【不動産登記法・39条】分筆

2  登記官は、分筆の登記申請がない場合であっても、一筆の土地の一部が別の地目となり、又は地番区域(地番区域でない字を含む。)を異にするに至ったときは、職権で、その土地の分筆の登記をしなければならない

3  登記官は、分筆・合筆の申請がない場合であっても、第14条第1項の地図を作成するため必要があると認めるときは、第一項に規定する表題部所有者又は所有権の登記名義人の異議がないときに限り、職権で、分筆又は合筆の登記をすることができる

3.「表示に関する登記については,申請人は,必ずしも登記所に出頭して申請する必要はない。」(土地家屋調査士・昭和50)

【正解:

◆当事者出頭の適用除外

 申請書や添付書類は郵送使者によって提出することができます。

●宅建試験出題の類題

1.「不動産の表示に関する登記は,申請人が登記所に出頭する必要はない。」(昭和63年・問16)【正解:

2.「不動産の権利に関する登記や不動産の表示に関する登記の申請は,登記所に出頭しなくてもすることができる。」(平成元年・問15)【正解:

4.「債権者は,債務者である所有者に代位して,建物の表示に関する登記を申請することはできない。」(土地家屋調査士・昭和50)

【正解:×

◆債権者による代位の表示登記

 債権者〔債務者である所有者に対して特定の登記請求権を有する者〕は,債務者である所有者に代位して,その建物の表示に関する登記を申請することができます

表示に関する登記の全てが債権者代位によってすることができるわけではありません

●類題

「債権者が所有者に代位して建物の表示の登記を申請する場合には,申請書にその所有者の承諾書を添付しなければならない。」(土地家屋調査士・昭和54年)

【正解:×

 債権者が代位権を行使するのに債務者の承諾を要するわけではないのでその承諾書を添付する必要はありません。(民法423条)

5.「真実の所有者でない者を登記記録の表題部に所有者として記録した表題登記がされている場合であっても,その登記記録の記録を過失なく信頼して表題部所有者からその不動産を買い受けた者は,当該不動産の所有権を取得する。」(土地家屋調査士・平成7年)

【正解:×

◆登記には公信力はない

 不動産登記では,権利の登記にも公信力はなく,判例上も認められていません。登記は物権変動の対抗要件にはなりますが,公信力とは別な話です。

 したがって,表題部所有者が真実の所有者でない場合は,その者から買い受けても当該不動産の所有権を取得するとは言えません。

6.「新築建物が数人の共有であるときは,共有者の1人が,単独で共有名義の建物の表題登記を申請することができる。」(土地家屋調査士・平成7年)

【正解:

◆共有者の1人からの申請

  共有の建物の表題登記は,共有物の保存行為に属しており,共有者の1人から単独で申請することができます。(民法252条但書) 

共有者の1人から単独で申請できるか問う問題は宅建試験ではよく出題されています。

●表題登記がなされないまま,売買・相続されたとき
 土地や建物の原始取得者が表題登記を申請するのが原則ですが,時にはこの原始取得者が表題登記をしないうちに譲渡されたり相続になったりすることがあります。

 このような場合は,売買・相続により取得した者も,直接,表題登記を申請することができます。

 (表題登記がなされないまま)土地の所有者の変更があったときは新所有者はその変更があった日から1ヵ月以内に土地の表題登記を申請することを要する。(法36条)

 (表題登記がなされないまま)建物の所有者の変更があったときは新所有者はその変更があった日から1ヵ月以内に建物の表題登記を申請することを要する。(法47条) → 区分建物では1ヵ月以内という期限がない。


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