Brush Up! 権利の変動篇

不動産登記 表示の登記のアウトライン 建物の合併・分割・合体の登記 改正対応


建物の表示に関する登記の次のそれぞれの記述は,○か,×か。

1.「抵当権設定の登記のある2個の建物については,その抵当権設定登記の登記原因,その日付,登記の目的及び受付番号が同じであっても,合併の登記をすることができない。」

2.「建物の分割の登記は,表題部所有者又は所有権の登記名義人の申請によるほか,登記官が職権ですることもできる。」

3.「合体による登記の申請は,既に登記された建物とまだ登記されていない建物とが合体する場合には,することができない。」

【正解】

× × ×

●表示に関する登記申請で,登記識別情報が必要な場合
 表示に関する登記で,登記識別情報が必要なのは,以下の三つです(登記令・8条1項1号〜3号,同2項)

・所有権の登記がある土地の合筆の登記⇒合筆に係る土地のうちいずれか一筆の土地の所有権の登記名義人の登記識別情報

・所有権の登記がある建物の合体の登記⇒合体に係る建物のうちいずれか一個の建物の所有権の登記名義人の登記識別情報

・所有権の登記がある建物の合併の登記⇒合併に係る建物のうちいずれか一個の建物の所有権の登記名義人の登記識別情報

1.「抵当権設定の登記のある2個の建物については,その抵当権設定登記の登記原因,その日付,登記の目的及び受付番号が同じであっても,合併の登記をすることができない。」(平成6年・問15)

【正解:×

◆抵当権のある建物の合併−原則としてはできないが

●(附属)合併とは・・・
 【附属合併】表題登記がある建物を登記記録上他の表題登記がある建物の附属建物とする登記(不動産登記法・54条1項3号)

※合併には「附属合併」と「区分合併」があります。(登記規則132条〜138条,準則86条)
⇒区分合併とは,区分建物どうしの合併のことです。

 「所有権の登記」以外の「権利に関する登記」のある建物については原則として合併登記はできません。(本肢では,抵当権が設定されているので,本来ならば合併はできない。)

 しかし,例外的に,その抵当権設定登記の登記原因その日付登記の目的及び受付番号が同じであれば,合併後の建物を目的とする一個の担保物権等にしても不都合にはならないため,合併の登記をすることができます。(不動産登記規則・131条)

抵当権設定のある複数の土地の合筆についても同じことが言えます。(不動産登記規則・105条2号)

▼「所有権の登記」以外の「権利に関する登記」のある土地どうしの合筆は原則としてできませんが(不動産登記法・41条6号),承役地についてする地役権の登記がある場合(不動産登記規則・105条1号)や,担保権設定登記の登記原因その日付登記の目的及び受付番号が同一のものが登記されている場合であれば,合筆の登記をすることができます(不動産登記規則・105条2号)

建物の合併の登記の制限 (不動産登記法・56条)

表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる建物の合併の登記はすることができない。(法56条2号)

表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする建物の合併の登記はすることができない。(法56条3号)

所有権の登記以外の権利に関する登記がある建物は合併できない。(法56条5号)

所有権の登記のない建物所有権の登記のある建物の合併はできない。(同・4号)

・合併しようとする建物が主たる建物と附属建物の関係にないときは、合併の登記をすることができない。(準則・86条(1))

●附属合併 
 (建物に物理的な変更を加えることなく)別個の建物として登記されている2個以上の建物を登記記録上で1個の建物とする登記手続のことをいう。

合併により,特定の1棟の建物を主たる建物とし,それ以外は附属建物として記載。

 合併によって建物を建物の付属建物とする場合は,建物の登記記録中の表題部の附属建物欄に建物は記載されることになり,それまでの建物の登記記録は閉鎖されます。

●準則78条1項 〜建物の個数の基準〜
 効用上一体として利用される状況にある数棟の建物は,所有者の意思に反しない限り,一個の建物と扱うものとする。

 → 一登記記録に『主たる建物』と『その附属建物』として記載するということを意味する。

●準則86条 〜合併の禁止〜
 建物の合併の登記は,法第54条1項3号に定めるもののほか,次の場合には,することができない。

1 附属合併にあっては,合併しようとする建物主たる建物と附属建物の関係にないとき

2 区分合併にあっては,区分された建物が互に接続していないとき。ただし,主たる建物と附属建物の関係にあるときを除く。

2.「建物の分割の登記は,表題部所有者又は所有権の登記名義人の申請によるほか,登記官が職権ですることもできる。」(平成6年・問15)

【正解:×

◆建物の分割・合併の登記は職権ではできない

 不動産の表示に関する登記は,登記官が職権でもできます(28条)

 しかし,「建物」の分割や合併の登記の場合は,あくまでも建物所有者(表題部所有者または所有権の登記名義人)の意思によってなされるべきものであり,職権ではできません(54条)

●建物の分割
 建物の分割の登記とは,建物の附属建物として登記されている建物を,建物とは別個の独立した建物として分離する登記のことをいい,分離した建物には,それまで附属建物として記載されていた登記用紙とは別の一登記記録が新たに設けられ,それに記録されます。(法54条1項)

土地の分筆に似ています。

●準則60条1項 〜実地調査〜
 登記官は,事情の許す限り積極的に不動産の実地調査を励行し,その結果必要があるときは,職権で,表示に関する登記をしなければならない。

3.「合体による登記の申請は,既に登記された建物とまだ登記されていない建物とが合体する場合には,することができない。」(平成9年・問15)

【正解:×

◆建物の合体

 「建物の合体」とは,『数個の建物が,増築等の工事により構造上1個の建物となる』ことをいいます。(平成5.7.30.民三5320号通達)(第93条の4の2)

 この合体前の建物には,いろんなケースが考えられます。

未登記の建物表示の登記のみの建物
未登記の建物所有権の登記のある建物 
表示の登記のみの建物所有権の登記のある建物
表示の登記のみの建物どおしの場合
所有権のある建物どおしの場合
合体前の各建物の所有者が異なっていてもよい

 数個の区分建物の隔壁を除去する工事などにより区分性を失って一つの建物とした場合なども「建物の合体」に含まれており,正にナンデモアリの世界。

 したがって,『既に登記された建物まだ登記されていない建物とが合体することはできない』とする本肢は×です。

□既に登記された建物・・・表示の登記のみ or 所有権の登記のある建物

□所有権の登記のある建物・・・所有権保存登記のある建物

・物理的な変更を加えない・・・合併 (数個の建物を一登記記録で扱う)
・物理的な変更を加える・・・・・合体 (構造上一個の建物となり一登記記録)

合併は数個の建物をまとめて登記簿上1個の建物として扱い,主たる建物と附属建物の関係として一登記記録に記載する。

原則として,建物の合体後1ヵ月以内に,合体による建物の表題登記及び合体前の建物の表題部の登記の抹消を申請することになっています。(法49条1項)

平成5年の不動産登記法の改正により,建物の合体の登記手続の規定が新設。


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