Brush Up! 権利の変動篇
不動産登記 登記名義人の氏名等の変更登記 (権利の更正登記) 改正対応
登記名義人の氏名等の変更登記に関する次の記述は,○か,×か。 |
1.「氏名の変更による登記名義人の表示の変更の登記の申請は,登記名義人が単独ですることができる。」 |
2.「所有権の登記名義人が住所を移転した場合,所有権の登記名義人は,住所を移転した時から1ヵ月以内に,登記名義人の氏名等の変更の登記の申請をしなければならない。」 |
3.「権利の更正の登記は,既存の登記について,当初から錯誤若しくは遺漏があり,又は後発的に実体関係に変化があったため,登記されている事項の一部が実体関係と一致しない場合に,これを訂正するためになされる登記である。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 |
○ | × | × |
●定義 (不動産登記法・2条10号〜13号) |
■表題部所有者 所有権の登記がない不動産の登記記録の表題部に、所有者として記録されている者をいう。 ■登記名義人 登記記録の権利部に、次条各号に掲げる権利について権利者として記録されている者をいう。 ■登記権利者 権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に利益を受ける者をいい、間接に利益を受ける者を除く。 ■登記義務者 権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に不利益を受ける登記名義人をいい、間接に不利益を受ける登記名義人を除く。 |
1.「氏名の変更による登記名義人の氏名等の変更の登記の申請は,登記名義人が単独ですることができる。」(平成5年・問15・肢2) |
【正解:○】 ◆登記名義人の氏名等の変更の登記または更正の登記 登記名義人とは,登記記録の権利部に(所有権・地上権・永小作権・地役権・先取特権・質権・抵当権・賃借権・採石権の九つのうちの)権利者として記録されている者利に関する登記簿上の名義人のことです(不動産登記法・2条11号,3条)。 登記名義人の氏名・住所(法人)名称に変更や更正するべきものがあるときは,他の人にその了解を得る必要はないので,登記名義人が単独で申請できます(不動産登記法64条,大正2.10.29民975号回答)。 登記名義人の氏名・名称・住所の変更(更正)登記は付記登記によって記録します(不動産登記規則3条1号)。⇒ 主登記によって記録すると,変更の登記までに,別の権利者が登記した場合に,権利の順位に変動を生じてしまうからです。 ▼変更の例 結婚・離婚・養子縁組・離縁による改姓,裁判・帰化による改名,住所の変更,住居表示の実施,町名地番変更etc, |
【権利部 (甲区)】 (所有権に関する事項) | ||||
【順位番号】 | 【登記の目的】 | 【受付年月日・受付番号】 | 【原因】 | 【権利者その他の事項】 |
1 | 所有権保存 | ・・ | 余白 | 所有者 毛利元就 |
2
付記1号 |
所有権移転 | ・・ | 年月日 売買 |
所有者 東京都港区赤坂・・ ---------------- 豊臣秀吉・・ |
2番登記名義 人表示変更 |
・・ | 年月日 住所移転 |
住所 東京都文京区本郷・・ |
*下線のあるものは抹消事項であることを示す。
2.「所有権の登記名義人が住所を移転した場合,所有権の登記名義人は,住所を移転した時から1ヵ月以内に,登記名義人の氏名等の変更の登記の申請をしなければならない。」(平成9年・問14・肢2) |
【正解:×】 ◆登記名義人の氏名等の変更(更正)登記は任意 表題部所有者の氏名・名称・住所の変更登記又は更正登記は表題部所有者以外の者は申請することができません(不動産登記法31条)が,任意であり,義務化されてはいませんでした。 権利の登記でもやはり,登記名義人の氏名等の変更登記,更正登記は義務化されていません(不動産登記法64条)。 ▼任意であるといっても,では,全くしなくても問題がないかというと違います。 例えば,不動産を売買するときの所有権移転登記ではその不動産の所有者が登記義務者ですが,申請情報の内容である登記義務者の氏名・名称・住所が登記記録と合致しないときはその登記申請は却下されます(不動産登記法25条7号)。
申請情報の登記義務者の表示が登記簿上の表示と異なっている場合は,移転登記をする前提として,登記名義人の氏名等の変更登記または更正登記が必要になってくるのです。このように,任意だからどうでもいいというわけにはいきません。(権利の登記の申請の全てで登記名義人の変更・更正登記が必要というわけではありません。) ▼必ずしなければならない変更登記 以下のものに変更があったときは,表題部所有者または所有権の登記名義人は1ヵ月以内に表示の変更の登記を申請しなければなりません。 建物の表題部の変更の登記 (建物の所在する市・区・町・村・字・土地の地番,種類・構造及び床面積,建物の名称, 附属建物の種類・構造及び床面積等。)(不動産登記法44条1項) 土地の地目地積の変更登記 (地目,地積)(不動産登記法37条1項) |
3.「権利の更正の登記は,既存の登記について,当初から錯誤若しくは遺漏があり,又は後発的に実体関係に変化があったため,登記されている事項の一部が実体関係と一致しない場合に,これを訂正するためになされる登記である。」(平成4年・問15・肢3) |
【正解:×】 ◆権利の更正の登記 「更正(×更生)登記」とは、登記に“誤字”又は“脱字”等の「錯誤又は遺漏」があったときの訂正や補充の登記のことをいいます(不動産登記法・66条)。
▼『当初から錯誤若しくは遺漏』・・・登記官の過誤と申請人の過誤と二通りあります。登記官の過誤の場合は,法務局長または地方法務局長の許可を得て登記官が職権で登記の更正(登記上の利害関係を有する第三者がいるときはその承諾を得る。)をしますが(不動産登記法・67条2項),申請人の過誤による場合は,更正登記の申請がなければ,登記官は登記の更正はできません。 ▼『後発的に』・・・登記した後で生じたという意味です。 ▼権利の更正の登記・権利の変更の登記で利害関係のある第三者の承諾を証する情報を提供して申請する場合(当該第三者がいない場合も)は付記登記によって記載し(不動産登記法・66条),(変更・更正の対象である主登記の)前の登記事項を抹消する記号を記録することになっています(不動産登記規則・150条)。
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●権利の変更の登記 |
1.「権利の変更の登記は,すべて付記登記によることになり,その順位は主登記の順位による。」(宅建・昭和53年) |
【正解:×】 |
(権利の変更の登記又は更正の登記) (登記の更正) 2 登記官は、前項の場合において、登記の錯誤又は遺漏が登記官の過誤によるものであるときは、遅滞なく、当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長の許可を得て、登記の更正をしなければならない。ただし、登記上の利害関係を有する第三者(当該登記の更正につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この項において同じ。)がある場合にあっては、当該第三者の承諾があるときに限る。 3 登記官が前項の登記の更正をしたときは、その旨を登記権利者及び登記義務者に通知しなければならない。この場合においては、第一項ただし書の規定を準用する。 4 第一項及び前項の通知は、代位者にもしなければならない。この場合においては、第一項ただし書の規定を準用する。 |
▼この記載例では持分の記載が誤っていたために更正されています。
【権利部 (甲区)】 (所有権に関する事項) | ||||
【順位番号】 | 【登記の目的】 | 【受付年月日・受付番号】 | 【原因】 | 【権利者その他の事項】 |
1 | 所有権保存 | ・・ | 余白 | 所有者 豊臣秀吉 |
2
付記1号 |
所有権移転 | ・・ | 年月日 相続 |
所有者 茶々2分の1 ---------- 豊臣秀頼 2分の1 ---------------- |
2番所有権 更正 |
・・ | 年月日 錯誤 |
所有者 茶々3分の1 豊臣秀頼 3分の2 |
*下線のあるものは抹消事項であることを示す。