Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

被保佐人に関する問題     


【正解】

× ×

1.「被保佐人は,保佐人の同意を得なくても,一時使用の目的で3ヵ月間,他人の

建物を賃借することができる。」(昭和51年)

【正解:

建物の賃貸借は3年以下は、保佐人の同意は不要

 確かに,602条に定めた期間を超える賃貸借をする場合には、保佐人の同意が必要です。(13条1項9号)

 しかし,『建物を3ヵ月間賃借する』のは,この同意は不要です。建物の賃貸借は3年を超えるものが、保佐人の同意が必要になります。

●同意が必要な賃貸借 (602条)

 山林10年、宅地5年、建物3年、動産6ヵ月超えるもの

●過去問から類題
1.「被保佐人が,保佐人の同意を得ずに,建物の建築工事を業者に請け負わせた場合,この請負契約は無効である。」(昭和59年・問2・肢2)
【正解:×

 新築,改築,増築又は大修繕をする場合には、保佐人の同意が必要です。(13条1項8号)

 保佐人の同意なくして被保佐人がしたものは、無効なのではなく、取り消すことができます。(12条4項)

 したがって,『請負契約は無効』というのは×になります。

2.「は,所有の土地を購入する契約をと締結した。が被保佐人であり,

保佐人の同意を得ずに当該契約を締結した場合,は,当該契約の締結には

の同意がないとして,その無効を主張することができる。」(平成6年・問2・肢4)

【正解:×

土地の購入契約の締結をするには保佐人の同意が必要

 不動産その他重要なる財産に関する権利の得喪を目的とする行為(例えば本肢のような土地の購入契約を締結)をする場合には、保佐人の同意が必要です。

  保佐人の同意なくして被保佐人がしたものは、無効なのではなく、取り消すことができます。(13条4項)

 取り消すのは、保佐人・被保佐人ともできます(120条1項)

保佐人の同意が必要な法律行為の例 13条1項

不動産その他重要なる財産に関する権利の得喪→ 出題・昭和49,61年、平成6年

602条に定めた期間を超える賃貸借をする→ 出題・昭和51年、昭和59年

 (山林10年、宅地5年、建物3年、動産6ヵ月超えるもの)

新築,改築,増築又は大修繕をする→ 出題・昭和59年

・借財または保証をすること。→ 出題・昭和54年

・訴訟行為

・相続の承認、放棄、遺産分割

・贈与、和解、仲裁合意〔改正前は仲裁契約。平成16年3月1日施行〕

・贈与・遺贈の拒絶、負担付の贈与や負担付の遺贈を受諾すること

・元本を領収し,これを利用すること

保佐人の同意が必要だと審判で認められたもの 13条2項

・上記以外で,『保佐人の同意が必要だと審判で認められたもの』

保佐人に代理権が付与されている場合

 家庭裁判所の審判で、保佐人に特定の法律行為について『代理権』が与えられる場合があります。(876条の4第2項)

●本人の利益を害するおそれがないのに,保佐人・補助人が同意しないとき
 本人の利益を害する恐れがないにもかかわらず,保佐人・補助人が同意しないときは,本人の請求により、家庭裁判所は、「同意に代わる許可」を与えることができます。(13条3項,17条3項)

 この結果,被保佐人・被補助人は,「同意に代わる許可」を与えられた法律行為を単独で行うことができるようになります。

3.「被保佐人が,保佐人の同意を得ずして,と不動産の売買契約を結んだ

場合,はその契約締結後にの同意を得れば,その契約を追認することが

できる。」(昭和61年・問3・肢4)

【正解:

◆追認

  保佐人の同意なくして被保佐人がしたものは、保佐人は、取り消すことができますが(13条4項)追認することによって、その法律行為を初めから有効なものにすることもできます。(122条)

 被保佐人が追認するには,保佐人の同意を必要とします。

制限行為能力者の相手方の催告の詳細

4.「被保佐人は,委託を受けて代理人として本人のために不動産の売買契約をする

ことができるが,当該被保佐人の保佐人の同意がなければ,代理行為による効果を

本人に帰属させることができない。」(昭和51年)

【正解:×

◆被保佐人と代理

  (依頼者本人)
 |
 (被保佐人,代理人) (相手方)

 代理人は,意思能力さえあればよく,行為能力者でなくてもよいので(102条),制限行為能力者を代理人にすることもできます。代理人が本人のために行った契約は、本人に帰属します。

 また,被保佐人は,代理人になるのに,法定代理人の同意は必要ではありません

 したがって,『保佐人の同意がなければ,代理行為による効果を本人に帰属させることができない』という本肢は×になります。

●参考問題
被保佐人は,保佐人の同意を得ずに遺言することができる。(昭和54年・問3)
【正解:

制限行為能力者の遺言

 遺言者は、遺言をするときに遺言能力を有しなければなりません。(963条)
遺言能力は、行為能力とは別のもので、意思能力を必要とします

1) 満15才に達した者は遺言をすることができます。(961条)
  → 満15才未満の者の遺言は無効。

2) 遺言には、制限行為能力者制度の適用がありません。(962条) 
→ 
5条(未成年)、9条(成年被後見人)、13条(被保佐人),17条(被補助人)は,遺言には適用しない。つまり,制限行為能力者が遺言をするのに保護者の同意は不要です。

 したがって、本肢の被保佐人も遺言をすることができます。


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