宅建過去問 権利の変動篇
抵当権の過去問アーカイブス 平成21年・問6 抵当権消滅請求
民法第379条は、「抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。」 と定めている。これに関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。(平成21年・問6) |
1 抵当権の被担保債権につき保証人となっている者は、抵当不動産を買い受けて第三取得者になれば、抵当権消滅請求をすることができる。 |
2 抵当不動産の第三取得者は、当該抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生した後でも、売却の許可の決定が確定するまでは、抵当権消滅請求をすることができる。 |
3 抵当不動産の第三取得者が抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に民法第383条所定の書面を送付すれば足り、その送付書面につき事前に裁判所の許可を受ける必要はない。 |
4 抵当不動産の第三取得者から抵当権消滅請求にかかる民法第383条所定の書面の送付を受けた抵当権者が、同書面の送付を受けた後2か月以内に、承諾できない旨を確定日付のある書面にて第三取得者に通知すれば、同請求に基づく抵当権消滅の効果は生じない。 |
<コメント> |
各肢とも抵当権消滅請求の基本事項であり,難易度が高いとはいえません。しかし,正答率は極端に低く,受験者の学習不足が明らかになりました。
近年の改正点でまだ未出題の学習事項についても,きちんと学習しておく必要があります。 ▼当サイトでは,出題が予想されるものとして抵当権消滅請求について1000本ノックで扱っていました。⇒ http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/teitou-b-ans62.html |
●出題論点● |
(肢1) 抵当権消滅請求をすることができるのは抵当不動産を取得した第三者に限る。
(肢2) 抵当権消滅請求は,抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前にしなければならない。 (肢3) 抵当権消滅請求の送付書面について事前に裁判所の許可を受ける必要はない。 (肢4) 抵当権者が,抵当権消滅請求に基づく抵当権消滅を回避するには,書面の送付を受けた後,2箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしなければならない。 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
正答率 | 31.4% |
1 抵当権の被担保債権につき保証人となっている者は、抵当不動産を買い受けて第三取得者になれば、抵当権消滅請求をすることができる。 |
【正解:×】初出題 抵当権消滅請求をすることができるのは,抵当不動産の所有権を取得した第三者に限られます(民法379条)。 主たる債務者・保証人〔承継人も含む〕は,抵当不動産を買い受けても,抵当権消滅請求をすることはできないので(民法380条),本肢は誤りです。⇒ 主たる債務者・保証人及びその承継人は,債務の全額を弁済すべきで,債務の弁済をしないで抵当権消滅請求することは許されない〔競売の売価は抵当権の被担保債権金額より安くなることが多い〕。 ※ただし,第三者でも,停止条件つきの契約で取得した者は,停止条件が成否未定の間は抵当不動産の所有権を取得するのが確定していない〔期待権をもつにとどまる〕ので,抵当権消滅請求をすることはできません(民法381条)。 |
2 抵当不動産の第三取得者は、当該抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生した後でも、売却の許可の決定が確定するまでは、抵当権消滅請求をすることができる。 |
【正解:×】初出題 抵当不動産の第三取得者は,抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に,抵当権消滅請求をしなければなりません(民法382条)。 競売による差押えの効力が発生した後では,売却の許可の決定が確定していなくても,抵当権消滅請求をすることはできないので,本肢は誤りです。 |
3 抵当不動産の第三取得者が抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に民法第383条所定の書面を送付すれば足り、その送付書面につき事前に裁判所の許可を受ける必要はない。 |
【正解:○】初出題 抵当不動産の第三取得者は,抵当権消滅請求をするときに,登記をした各債権者に対し,民法383条で規定する所定の書面を送付しなければなりませんが,その送付書面について事前に裁判所の許可を受ける必要はありません。 |
●抵当権消滅請求の書面の記載事項 | |
抵当不動産の第三取得者が抵当権消滅請求をするときは,登記をした各債権者に対し,下記を記載した書面を送付しなければなりません(民法383条)。
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4 抵当不動産の第三取得者から抵当権消滅請求にかかる民法第383条所定の書面の送付を受けた抵当権者が、同書面の送付を受けた後2か月以内に、承諾できない旨を確定日付のある書面にて第三取得者に通知すれば、同請求に基づく抵当権消滅の効果は生じない。 |
【正解:×】初出題 抵当権者が,抵当権消滅請求に基づく抵当権消滅を回避するには,書面の送付を受けた後,2箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしなければなりません。この申立てがなければ,抵当権消滅請求を承諾した※とみなされるからです(民法384条1号)。 承諾できない旨を確定日付のある書面にて第三取得者に通知しただけでは抵当権消滅請求に基づく抵当権の消滅を回避することはできません。 ※抵当不動産の第三取得者が書面で提示した代価または金額を承諾したものとみなされる。 ▼抵当権者が競売の申立てをするときは,抵当権消滅請求の書面の送達を受けた日から2ヵ月以内に,債務者及び抵当不動産の譲渡人に通知しなければいけません(民法385条)。 |