Brush Up! 権利の変動篇

不動産登記の過去問アーカイブス 平成元年・問15 改正対応

一件一申請主義の例外・建物の滅失登記・印鑑証明書・当事者出頭主義の廃止


不動産登記に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成元年・問15)

1.「同一の登記所の管轄に属する数個の不動産に関する登記を申請する場合,登記原因および登記の目的が同一であるときに限り,同一の申請情報で登記を申請することができる。」

2.「建物が滅失したときは,表題部所有者又は所有権の登記名義人は,その滅失の日から1月以内に当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。」

3.「所有権の登記名義人が登記義務者として登記を書面申請する場合に提出する印鑑証明書は,その作成後6カ月以内のものでなければならない。」

4.「不動産の権利に関する登記の申請,不動産の表示に関する登記の申請とも,登記所に出頭しなくてもすることができる。」

【正解】

×

1.「同一の登記所の管轄に属する数個の不動産に関する登記を申請する場合,登記原因および登記の目的が同一であるときに限り,同一の申請情報で登記を申請することができる。」

【正解:

『権利ごとに申請』(一件一申請主義)の例外

 登記の申請は,登記の目的及び登記原因に応じ,1不動産に関する1個の権利ごとにするのが原則です(登記令・4条1項本文)

 しかし原則に従えば,例えば,から同一の登記所の管轄内にある10筆の土地を取得して登記の申請をするとき,土地の表示以外はまったく同一内容の申請書を10通作成しなければならないことになります。

 このような場合,申請者及び登記官の事務処理上の要請により,同一の登記所の管轄内にある数個の不動産に関する登記を申請する場合,“登記原因及び登記の目的が同一のときに”同一の申請情報をもって登記の申請ができます(登記令・4条1項但書)

●用語の整理 −電子申請と書面申請−
■不動産登記令 (申請情報の作成及び提供)
第4条
 申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。

■不動産登記法 (受付)
第19条
 登記官は、前条の規定により申請情報が登記所に提供されたときは、法務省令で定めるところにより、当該申請情報に係る登記の申請の受付をしなければならない。

2  同一の不動産に関し二以上の申請がされた場合において、その前後が明らかでないときは、これらの申請は、同時にされたものとみなす。

3  登記官は、申請の受付をしたときは、当該申請に受付番号を付さなければならない。この場合において、同一の不動産に関し同時に二以上の申請がされたとき(前項の規定により同時にされたものとみなされるときを含む。)は、同一の受付番号を付するものとする。

■通達 (電子申請の受付後の処理)
第2 1(1)
 電子申請については,申請情報が登記所に到達した時(登記所に申請情報等が到達するのは,登記所の開庁日の午前8時30分から午後5時までに限られる。)に自動的に受付番号が付され,不動産所在事項の記録がされる。

2.「建物が滅失したときは,表題部所有者又は所有権の登記名義人は,その滅失の日から1月以内に当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。」

【正解:

◆建物の滅失の登記

 本肢は,条文ソノママの問題文です。(不動産登記法・57条)

 建物が滅失したときは,表題部所有者又は所有権の登記名義人は,1カ月以内に『建物の滅失の登記』を申請しなければなりません。

表示に関する登記の目的は,権利の目的物である土地や建物の物理的形状等を常に登記簿の上に明確にしておいて取引の安全と円滑性に役立てるためにあります。登記官の職権でもこの登記はすることができます(第28条)

1ヵ月以内に申請義務のある表示に関する登記

 建物の新築のときの表題登記(47条),建物の表題部の変更〔所在・建物の種類・構造・床面積etc〕の変更(51条),建物の合体(49条),建物の滅失(57条),新たに土地が生じたとき又は表題登記のない土地の所有権を取得したときの表題登記(36条),地目又は地積の変更(36条),土地が滅失したとき(42条)に,それぞれ1カ月以内に申請しなければいけません。

3.「所有権の登記名義人が登記義務者として登記を書面申請する場合に提出する印鑑証明書は,その作成後6カ月以内のものでなければならない。」

【正解:×

◆登記義務者が提出する印鑑証明書は作成後3ヵ月以内

 書面申請(磁気ディスクをもって申請書を提出する場合を除く。)では,申請人(又は,その代表者・代理人)は,申請情報を記載した書面に記名押印して,法務省令で定める場合を除いて,記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書(作成後3月以内)を添付しなければなりません(登記令・16条2項)

印鑑に関する証明書 (登記令・16条2項)

 住所地の市町村長(特別区の区長を含むものとし、指定都市では、市長又は区長。)
     又は
 登記官

 が作成するものに限る。

 なお,印鑑証明書が作成後「3ヵ月以内」のものに限られているのは,印鑑証明書が作成されてから長期間経過している場合,印鑑の紛失事故その他によって改印されることもあるからです。

●用語の整理
書面申請 法第18条第2号 の規定により申請書(申請情報を記載した書面をいい、法第18条第2号 の磁気ディスクを含む。)を登記所に提出する方法による申請をいう。

法18条2項・・・申請情報を記載した書面(法務省令で定めるところにより申請情報の全部又は一部を記録した磁気ディスクを含む。)を提出する方法 。

●用語の整理 −電子申請と書面申請−
(申請の方法)
第18条
 登記の申請は、次に掲げる方法のいずれかにより、不動産を識別するために必要な事項、申請人の氏名又は名称、登記の目的その他の登記の申請に必要な事項として政令で定める情報(以下「申請情報」という。)を登記所に提供してしなければならない。

一  法務省令で定めるところにより電子情報処理組織(登記所の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下この号において同じ。)と申請人又はその代理人の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用する方法

  ⇒ 電子申請 (登記規則・1条3号)

二  申請情報を記載した書面(法務省令で定めるところにより申請情報の全部又は一部を記録した磁気ディスクを含む。)を提出する方法

  ⇒ 書面申請 (登記規則・1条4号)

●不動産登記令 −書面申請−
(申請情報を記載した書面への記名押印等)
第16条
 申請人又はその代表者若しくは代理人は、法務省令で定める場合を除き、申請情報を記載した書面に記名押印しなければならない。

2  前項の場合において、申請情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書(住所地の市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法第二百五十二条の十九第一項 の指定都市にあっては、市長又は区長とする。次条第一項において同じ。)又は登記官が作成するものに限る。以下同じ。)を添付しなければならない。

3  前項の印鑑に関する証明書は、作成後三月以内のものでなければならない。

4  官庁又は公署が登記の嘱託をする場合における嘱託情報を記載した書面については、第二項の規定は、適用しない。

5  第12条第1項及び第14条の規定は、法務省令で定めるところにより申請情報の全部を記録した磁気ディスクを提出する方法により登記を申請する場合について準用する

(電子署名)
第12条
 電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請するときは、申請人又はその代表者若しくは代理人は、申請情報に電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律 (平成12年法律第102号)第二条第一項 に規定する電子署名をいう。以下同じ。)を行わなければならない。

2  電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請する場合における添付情報は、作成者による電子署名が行われているものでなければならない。

(電子証明書の送信)
第14条
 電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請する場合において、電子署名が行われている情報を送信するときは、電子証明書(電子署名を行った者を確認するために用いられる事項が当該者に係るものであることを証明するために作成された電磁的記録をいう。)であって法務省令で定めるものを併せて送信しなければならない。

4.「不動産の権利に関する登記の申請,不動産の表示に関する登記の申請とも,登記所に出頭しなくてもすることができる。」

【正解:

◆改正により,権利に関する登記申請で,当事者の出頭義務は廃止

 不動産の権利に関する登記の申請,不動産の表示に関する登記の申請のどちらも,申請情報や添付情報を郵送使者によって提出することができます。


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