Brush Up! 権利の変動篇

不動産登記法の過去問アーカイブス 昭和61年・問15 改正対応

地上権・賃借権の登記・表題部の記載事項・写しの交付の手数料・共同申請


不動産登記に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和61年・問15)

1.「地上権又は賃借権に関する登記事項は,登記記録中の権利部の甲区に記録される。」

2.「建物の登記記録中,表題部には建物の評価額も登記される。」

3.「登記事項証明書の交付を請求する場合の手数料の納付は,収入印紙をもってしなければならない。」

4.「権利に関する登記の申請は,原則として登記権利者及び登記義務者が共同して行わなければならない。」

【正解】

× ×

1.「地上権又は賃借権に関する登記事項は,登記記録中の権利部の甲区に記録される。」

【正解:×

◆賃借権・地上権の登記

 賃借権・地上権の登記の登記事項は乙区に記録されます。

賃借権設定の登記は,賃借人を登記権利者,賃貸人を登記義務者として共同申請します。賃借権を登記する場合,賃料は必ず記載することに注意してください(不動産登記法・81条1号)

 賃貸人は,特約がない限り,賃借権の登記をする義務を負うものではありません(大審院・大正10.7.11)

類題「賃借権に関する登記事項は,登記記録中の権利部の甲区に記載される。」(昭和58年・問15)

●番外知識・地上権の登記

地上権設定の登記は,地上権者を登記権利者,地上権設定者を登記義務者として共同申請します。

 地上権はその登記をすることによって第三者に対抗できます。(民法177条)

 地上権設定の目的は必ず記載します(不動産登記法・78条1号)→地上権は『工作物・竹木を所有するための権利』。(民法265条1項)→参照・地上権

 約定があるときには,存続期間・地代・地代の支払時期を記載します。

存続期間

 建物所有を目的とした地上権は,借地借家法で定めている最短期間を下回ることはできません。

 存続期間を永久にすることもでき,その場合は「永久」または「永代」と記載します。

地代

  民法では,特約のある場合に限り,地上権者は地代の支払い義務を負います。(民法266条)特約がない場合は無償とされます。

区分地上権(民法269条の2)・・・「工作物所有」を目的としてのみ設定できる。建物・トンネル・道路・送電線・橋梁などを設置するため土地の地上・地下に設定。区分地上権の範囲も登記事項。

 このため一筆の土地に通常の地上権区分地上権が登記されていることがあり得る。

法定地上権・・・競売の買受人が法定地上権の登記をすることもできます。この場合は買受人が代金を納付した年月日に基づいて,登記原因欄に「○年○月○日法定地上権設定」と記載されます。(昭和55.8.28民三5267号通達)

2.「建物の登記記録中,表題部には建物の評価額も登記される。」

【正解:×

◆建物の表題部の記載事項

 建物の登記記録の表題部には建物の評価額は記載されません(類・昭和57年)

 建物の登記記録の表題部は,物理的現況を表示するためのものであり建物の評価額とは馴染まないものです。以下のものが記載されています(不動産登記法・27条,44条)

不動産番号

建物の所在地番 (郡,市,区,町,村,字,地番) 原則として都道府県は不要。

家屋番号 (地番家屋番号登記所が決めます)

建物の種類 (主たる用途により区分される)

建物の構造 (構成材料・屋根の種類階数)

建物の床面積 (各階ごと。地階も記載します。)

建物の名称があるときはその名称 (家屋番号とは違い建物の所有者が利用上建物の特定のため定めたときに登記事項として申請できます。)

附属建物があるときはその地番・種類・構造・床面積

登記原因及びその日付

登記の年月日

所有権の登記がない場合(所有権保存登記または所有権移転の登記がない)
 には所有者の氏名・名称・住所 (共有のときはその持分)

 → 所有権保存登記がされると表題部所有者に関する登記事項は、職権で登記官によって抹消する記号が記録されます。(登記規則・158条)

 → 逆にいえば、表題部所有者が抹消されないでいるということは、まだ所有権保存の登記がされていないことを意味します。

不動産番号 (登記規則90条)

 登記官は,(法27条4号の)不動産を識別するために必要な事項として,一筆の土地又は一個の建物ごとに番号,記号その他の符号を記録することができる。

 ⇒ 電子申請の指定庁とは関係なく,準備の調った登記所から導入されていきます。

3.「登記事項証明書の交付を請求する場合の手数料の納付は,収入印紙をもってしなければならない。」

【正解:

◆交付

 誰でも,登記事項証明書(登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面)の交付,地図等登記簿の附属書類中の土地所在図等の閲覧とそれらの全部又は一部の写しの交付を請求することができます(不動産登記法・119条1項,120条,121条)

 ※登記簿の附属書類中の土地所在図等以外の閲覧は,利害の関係ある部分に限られています。

 ※登記簿の附属書類中の土地所在図等以外の写しの交付は,できません。

 ※手数料の納付は,原則として,収入印紙をもってしなければなりません(不動産登記法・119条4項)

   地図等 (地図・建物所在図・地図に
 準じる図面) 

 登記簿の附属書類中の
 政令で定める図面 (土地所在図等)

登記簿の附属書類中の
 
政令で定める図面以外のもの

 閲覧    ○ 利害の関係ある部分に限る
 写しの

 交付

  全部若くは一部  × 
 写しの

 送付

  全部若くは一部  × 

4.「権利に関する登記の申請は,原則として登記権利者及び登記義務者が共同して行わなければならない。」

【正解:

◆共同申請

 権利に関する登記は,法令に別段の定めがある場合を除き,登記権利者及び登記義務者が共同してしなければなりません(不動産登記法・60条)

 両当事者に申請させることにより,実際に権利の変動が生じたのだということを明確にし,登記事項が真実であることを確保しています。

 権利に関する登記  表示に関する登記
 申請  申請・嘱託がなければ
 原則として登記されない
 (職権による登記は限られる)
 申請・嘱託がなくても職権に
 より登記されることがある
 申請義務  任意

 対抗要件を取得したい
 者が申請すればよい

 義務 (罰則 : 過料×科料)

 物理的現況を明確にする
 1ヵ月以内

 登記官の審査権  形式的審査権  実質的審査権
 対抗力  物権変動の公示  原則としてはない
 〔例外〕
 ・規約共用部分の登記
 ・借地上の建物の表示に
  関する登記


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