都市計画法

 都市計画制限と都市計画事業のまとめ

●位置付け●

都市計画施設の区域・市街地開発事業の施行区域での制限(53条,55条,57条の3)都市計画施設・市街地開発事業の都市計画が告示(20条1項)されてから都市計画事業の認可・承認の告示(62条)が出るまでの過渡的な規制。その後は都市計画事業の事業地としての制限(65条)に移行する。

 都市計画施設・市街地開発事業に関する都市計画の告示(20条1項)
        ↓
 都市計画施設・市街地開発事業の制限(53条,55条,57条の3)
        ↓
 「都市計画事業の認可・承認」の告示(62条)
        ↓
 「都市計画事業の事業地」の制限(65条)

【関連】公有地の拡大の推進に関する法律

 都市計画区域内に所在する土地で,かつ,都市計画施設の区域内にあるものを所有する者は,その土地を有償で譲り渡そうとするときは,原則として,その土地の所在および面積,譲渡予定価格,譲り渡そうとする相手方等の主務省令(総務省令・国土交通省令)で定める事項を,当該土地の所在する市町村長を経由して,都道府県知事(市の区域内では市長)に事前に届け出なければいけません(公有地の拡大の推進に関する法律4条1項)

市街地開発事業等予定区域での制限(52条の2)は,都市計画施設の区域・市街地開発事業の施行区域(53条,55条,57条の3)または都市計画事業の事業地(65条)としての制限に移行するまでの過渡的な規制。

 予定区域に関する都市計画の告示(20条1項)
        |告示があった日から3年以内に,市街地開発事業又は都市施設に
        ↓関する都市計画を定めなければならない(12条の2第4項)

 予定区域の制限(52条の2)〔買占めや無秩序な開発などの防止と回避〕
        ↓
 「市街地開発事業に関する都市計画」または「都市施設に関する都市計画」が決定
        ↓
 「市街地開発事業に関する都市計画」または「都市施設に関する都市計画」の告示
        ↓告示の日から2年以内
 都市計画事業の認可・承認の申請(60条の2)

●傾向と対策●

都市計画施設の区域・市街地開発事業の施行区域内での都市計画制限は,厳密には,三つある。しかし,特に問題文に指定のない限り,53条での制限を考えればよい。

施行予定者の有無 条文での表現 条文No.
施行予定者が定められていない場合 都市計画施設の区域・

市街地開発事業の施行区域

 53条 
事業予定地

・都市計画施設の区域内の土地で
知事から指定された区域

・市街地開発事業の施行区域
〔土地区画整理事業・新都市基盤整理事業を除く〕

 55条 
施行予定者が定められている場合 施行予定者が定められている
都市計画施設の区域・
市街地開発事業の施行区域
 57条の3

  1) 各区域での制限の違い〔超重要〕

 55条の事業予定地の許可基準は53条と同じ54条55条の事業予定地では,『54条基準を満たしていても都道府県知事等が許可をしないことができる』という点が違うだけ。

 53条55条57条の3の違いは,53条55条建築物の建築に許可が必要,57条の3建築物の建築のほかに,工作物の建設・土地の形質の変更にも許可が必要になること。⇒ 57条の3の制限は『市街地開発事業等予定区域』の制限(52条の2)と同じ。

 都市計画事業の事業地の制限(65条)では,施行の障害のおそれのあるものは,建築物の建築,工作物の建設,土地の形質の変更物件の設置・堆積等について許可が必要になる。

 2) 過去問での出題状況 

 55条57条の3をダイレクトに出題されたのは近年にはなく,55条57条の3を問題文の背景として出題したものがある程度。→平成3年問19肢3

 補足 昭和50年の問題文中では,「施行予定者は定められていない」,「事業予定地を除く」が明示されていたが,出題の大半にはこのような指定はなかった。〔建築物の建築については,三つのうちどの区域も原則として許可が必要〔ただし,区域により許可不要の範囲が異なる〕なので,建築物の建築についての問題では問題文中に指示する必要がなかったためと思われる。〕→ 昭和50年の問題

建築物の建築〔新築・改築・増築・移転〕は,原則として,どの区域でも許可が必要。

 昭和50年代以降の出題の大半が,建築物の建築について許可が必要であるかどうかをたずねている。どの区域でも建築物の建築について許可が必要なので,特別な対策は無用。

 (施行予定者が定められていない)都市計画施設の区域・市街地開発事業の施行区域内での『工作物の建設』(昭和45年),『土地の形質の変更』(昭和45年,昭和50年)について,許可が不要であることを問う問題は,近年では出題されていない。

 → 昭和45年の問題昭和50年の問題

階数が2以下で,かつ,地階を有しないものの建築は,原則として,どの区域でも許可が必要。(最頻出問題)

【例外】

1) 施行予定者が定められていない「都市計画区域の区域・市街地開発事業の施行区域」内では,『階数が2以下で,かつ,地階を有しない木造の建築物改築・移転』は許可不要。

2) 施行予定者が定められている「都市計画区域の区域・市街地開発事業の施行区域」内では,『(既存の建築物の敷地内で行う車庫・物置等)階数が2以下で,かつ,地階を有しない木造の附属建築物の建築は許可不要。⇒ 『市街地開発事業等予定区域』でも同じ。

市街地開発事業は,どの区域に定めるか?   (平成6年問17肢2)

 市街地開発事業は,『市街化区域』又は『区域区分が定められていない都市計画区域』内において,一体的に開発し,又は整備する必要がある土地の区域について定める。(都市計画法13条1項12号)

 『市街化調整区域』,『準都市計画区域』,『都市計画区域及び準都市計画区域外の区域』内には定めることができない。

市街地開発事業に関する都市計画は,規模・種類により,都道府県・市町村が定める。(平成8年問19肢2)

 市街地開発事業に関する都市計画は,原則として都道府県が定めるが,政令で定める小規模の土地区画整理事業・市街地再開発事業・住宅街区整備事業・防災街区整備事業についての都市計画は市町村が定める。(都市計画法15条1項6号)

都市計画事業とは何か (平成16年問17肢3)

 市街地開発事業だけでなく,都市計画施設の整備に関する事業も『都市計画事業』です。(都市計画法4条15号)

 都市計画事業は,「都道府県or国土交通大臣の認可」又は「国土交通大臣の承認」を受けて行われるものです。

●都市計画制限の出題歴●

都市計画施設の区域 昭和56年・問19,57年・問28公,59年・問20,60年・問18,
60年・問27公,62年・問17,
平成3年・問19,7年・問18,9年・問17,12年・問18
市街地開発事業の施行区域 昭和56年・問19,62年・問17,
平成3年・問19,7年・問18,9年・問17,12年・問18
市街地開発事業等予定区域 昭和59年・問28,62年・問17,平成3年・問19,
都市計画事業の事業地 昭和56年・問19,平成10年・問17,12年・問18,16年・問17

公・・・公有地の拡大の推進の法律の出題

●都市計画制限の一覧●

 ⇒ この図表のみをプリントアウトしたい方はこちらのページで。

   施行予定者が定められていない場合 施行予定者が定められている場合

(市街地開発事業等予定区域も同じ)

 (57条の3/52条の2)

都市計画事業

の事業地

 (65条)

都市計画施設の区域

市街地開発事業の施行区域

 (53条)

事業予定地

 (55条)

建築物の建築  × 許可要

 54条の許可要件に該当する
 ときは許可をしなければ
 ならない。(以下のもの)↓

 【54条の許可要件】

 ・都市計画に適合,
 支障がないもの等。 

 ・階数が2以下で,かつ,
 地階を有しないもの
で,
 主要構造部が
木造・鉄骨造・
 コンクリートブロック造などの
 
容易に移転・除却できるもの

× 許可要

許可要件は
左記と同じ
54条

ただし,54条の
許可要件を
満たしていても
許可をしない
ことができる。

→53条との違いは
 これだけ。

 × 許可要 × 許可要
許可不要 : 階数が2以下で,かつ,地階を有しない
木造の建築物
改築・移転
許可不要 : 既存の建築物の敷地内
で行う車庫・物置等の
附属建築物
の建築
(階数が2以下で,かつ,
地階を有しない木造のものに限る)
工作物の建設   許可不要 許可不要  × 許可要 × 許可要

許可不要 : 1)仮設工作物の建設

2)既存の建築物の敷地内で行う
附属する工作物の建設

土地の
形質の変更
  許可不要 許可不要  × 許可要

 (区画の変更は含まれない)

× 許可要

許可不要 : 既存の建築物・
工作物の管理のため必要な
土地の形質の変更など。

物件の
設置・堆積
  許可不要 許可不要   許可不要 × 許可要

(移動の容易でない
物件(5トンを超える)
の設置・堆積)
(施行令40条)

許可不要  建築物の建築には許可が必要。
 しかし,以下の場合は許可不要。

 ・政令で定める軽易な行為〔上記参照〕
 
(施行令37条)

 ・非常災害の場合の応急措置として行う行為

 ・都市計画事業の施行として行う行為,
  又はこれに準じる行為で政令で定めるもの
 
(施行令37条の2)

・通常の管理行為,軽易な行為
で政令で定めるもの〔上記参照〕
(施行令36条の2)

 ・非常災害の場合の応急措置
として行う行為

 ・都市計画事業の施行として
行う行為,又はこれに準じる行為
政令で定めるもの
(施行令36条の3)

許可不要の規定は
特にない。

施行の障害のおそれ
のあるものは
許可必要


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