宅建業法 実戦篇
宅建業者と取引主任者の過去問アーカイブス 平成3年・問38 届出
宅建業者の「変更の届出」,取引主任者の「死亡等の届出」
宅地建物取引業法上の届出に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成3年・問38) |
1.「国土交通大臣の免許を受けている宅地建物取引業者A社が新たに政令で定める使用人を設置した場合,A社は,その日から30日以内に,本店の所在地を管轄する都道府県知事を経由してその旨を国土交通大臣に届け出なければならない」 |
2.「甲県知事の免許を受けている宅地建物取引業者B社が建設業の許可を取得して建設業を営むこととなった場合,B社は,その日から30日以内にその旨を甲県知事に届け出なければならない。」 |
3.「乙県知事の登録を受けている取引主任者Cが成年被後見人となった場合,その後見人Dは,その日から30日以内にその旨を乙県知事に届け出なければならない。」 |
4.「丙県知事の登録を受けている取引主任者Eが死亡した場合,その相続人Fは,その事実を知った日から30日以内にその旨を丙県知事に届け出なければならない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
1.「国土交通大臣の免許を受けている宅地建物取引業者A社が新たに政令で定める使用人を設置した場合,A社は,その日から30日以内に,本店の所在地を管轄する都道府県知事を経由してその旨を国土交通大臣に届け出なければならない」 |
【正解:○】 ◆政令で定める使用人の設置 ⇒ 30日以内に変更の届出 新たに政令で定める使用人を設置した場合は,宅地建物取引業者の登載事項の変更〔政令で定める使用人の氏名〕に該当し,30日以内にその旨を免許権者に届け出なければいけません(宅建業法9条)。 また,「変更の届出」を国土交通大臣にするときは,主たる事務所を管轄する都道府県知事を経由しなければなりません(宅建業法78条の3第1項)。
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2.「甲県知事の免許を受けている宅地建物取引業者B社が建設業の許可を取得して建設業を営むこととなった場合,B社は,その日から30日以内にその旨を甲県知事に届け出なければならない。」 |
【正解:×】 ◆宅建業以外に行っている事業の種類 宅地建物取引業者名簿には,登載事項として,<宅建業以外の事業を行っているときはその事業の種類>がありますが(宅建業法8条2項8号,施行規則5条2号),変更の届出対象にはなっていないため(宅建業法9条),本肢は誤りです。
▼下記の表で※のマークのあるものが「変更の届出」義務のある登載事項。
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●宅建業者の「変更の届出」と取引主任者の「変更の登録」 |
宅建業者の「変更の届出」は<30日以内に>届出義務,
取引主任者(註)の「変更の登録」は<遅滞なく>申請する義務。 (註) 厳密には,<登録を受けている者>であることに注意。取引主任者証の交付を受けていない者でも該当する場合は変更の登録を申請しなければなりません。 |
3.「乙県知事の登録を受けている取引主任者Cが成年被後見人となった場合,その後見人Dは,その日から30日以内にその旨を乙県知事に届け出なければならない。」 |
【正解:○】 ◆成年被後見人になった 登録を受けている者〔取引主任者資格登録簿に登録されている者〕が成年被後見人となった場合〔後見開始の審判を受けた場合〕,その後見人は,その日から30日以内に,登録を受けている都道府県知事に届け出なければなりません(宅建業法21条1号)。
▼宅建業者〔個人業者〕が成年被後見人となった場合〔後見開始の審判を受けた場合〕,免許権者に届出義務はありませんが,免許権者は,宅建業者〔個人業者〕が成年被後見人となった場合は,その免許を取り消さなければなりません(宅建業法66条1項1号)。 |
●取引主任者〔厳密には,登録を受けている者〕の死亡等の届出 (宅建業法・21条)
いつ届け出るか | 届け出る人 | |
死亡した | 事実を知った日から30日以内 | その相続人 |
成年被後見人になった 被保佐人になった |
その日から30日以内 | その後見人 その保佐人 |
営業に関して成年者と 同一の能力を有しなくなる |
本人 | |
破産手続開始の決定があった | ||
業者の免許を取り消された | ||
禁錮以上の刑に処せられた | ||
宅建業法違反・傷害等の罪で 罰金刑に処せられた |
4.「丙県知事の登録を受けている取引主任者Eが死亡した場合,その相続人Fは,その事実を知った日から30日以内にその旨を丙県知事に届け出なければならない。」 |
【正解:○】 ◆死亡 登録を受けている者〔取引主任者資格登録簿に登録されている者〕が死亡した場合,その相続人は,その事実を知った日から30日以内に,登録を受けている都道府県知事に届け出なければなりません(宅建業法21条1号)。
▼宅建業者〔個人業者〕が死亡した場合も,その相続人は,その事実を知った日から30日以内に,免許権者に届け出なければなりません(宅建業法11条1項1号)。宅建業者〔個人業者〕が死亡した時点で,その者に与えられていた免許は効力を失うと考えられています。 |
●宅建業者の廃業等の届出 (宅建業法・11条)
いつ届け出るか | 届け出る人 | |
死亡した | 事実を知った日から 30日以内 |
その相続人 |
法人が合併により消滅 | その日から30日以内 | その法人を代表する役員 であった者 |
破産手続開始の決定があった※ | その破産管財人 | |
法人が合併・破産以外の理由で
解散※ |
その清算人 | |
宅建業を廃止した※ | 宅建業者であった個人
法人を代表する役員 |
※の届出があったとき,免許はその効力を失う。この届出がなくても,その事実が判明したとき
は,免許権者は免許を取り消さなければならない。
●「11条の届出(廃業等の届出)」と「21条の届出(死亡等の届出)」の違い | ||||||||||||||||||
1.届出義務の違い
取引主任者〔厳密には登録を受けている者〕が,<成年被後見人・被保佐人になった>場合,<禁錮以上の刑に処せられた>場合,<宅建業法違反・傷害等の罪で 罰金刑に処せられた>場合には届出義務がありますが,宅建業者では届出義務がないことに注意しましょう。
2.届け出る人の違い 取引主任者について破産手続開始の決定があったときは本人が届出ますが,宅建業者について破産手続開始の決定があったときはその破産管財人が届出ることに注意してください。
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