宅建業法 実戦篇
宅建業者の過去問アーカイブス 平成3年・問39 免許の基準(欠格要件)−法人−
次に掲げる会社のうち,宅地建物取引業の免許を受けることができるものは,いくつあるか。(平成3年・問39) |
ア |
A社――その政令で定める使用人Bが,2年前にC社が破産手続開始の決定があったことを理由に宅地建物取引業の免許を取り消された当時,C社の取締役であった。 |
イ |
D社――その代表取締役Eが,1年前に業務上過失致傷の罪により罰金10万円の刑に処せられた。 |
ウ | F社――その取締役Gが,3年前に詐欺の罪により懲役1年の刑に処せられた。 |
エ |
H社――その取締役 I が,横領の罪により懲役1年,執行猶予2年の刑に処せられ,執行猶予期間が満了してから1年を経過した。 |
1.「なし」 |
2.「一つ」 |
3.「二つ」 |
4.「三つ」 |
【正解】三つあるので,4
〔本問題のように個数と肢番号が一致しないことがあるので注意してください。〕
ア | イ | ウ | エ |
できる | できる | できない | できる |
ア |
A社――その政令で定める使用人Bが,2年前にC社が破産手続開始の決定があったことを理由に宅地建物取引業の免許を取り消された当時,C社の取締役であった。 |
【正解:免許を受けることができる】 ◆破産手続開始の決定により免許取消となった法人の役員であった者 A社の政令で定める使用人Bが,破産手続開始の決定があったことを理由に宅建業の免許を取り消されたC社の取締役であっても,A社は欠格要件には該当せず,宅建業の免許を受けることができます(宅建業法5条1項2号)。
▼免許取消処分を受けた法人の役員〔取消処分の聴聞の公示日前60日以内〕だった者が免許の欠格要件になるのは,宅建業法66条1項8号又は9号による免許取消処分の場合のみです。 宅建業法66条1項8号・・・不正手段による免許取得による取消 宅建業法66条1項9号・・・(宅建業法違反等で)業務停止処分に該当し情状が特に重いとき,または業務停止処分に違反したとき |
●破産手続開始の決定と免許取消 |
▼宅建業者について破産手続開始の決定があったときは,その破産管財人はその日から30日以内にその旨を免許権者に届け出なければならず(宅建業法11条1項3号),その届出の時点で免許はその効力を失います(宅建業法11条2項)。
免許権者は,破産手続開始の決定があった旨の届出がなくても,その事実が判明したときは,その免許を取り消さなければなりません(宅建業法66条1項7号)。 |
イ |
D社――その代表取締役Eが,1年前に業務上過失致傷の罪により罰金10万円の刑に処せられた。 |
【正解:免許を受けることができる】 ◆業務上過失致傷 法人の役員が傷害罪(刑法204条)で罰金刑に処せられたときは,その刑の執行を終わり,または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しないとその法人は免許を受けることはできません(宅建業法5条1項3号の2,同7号)。 しかし,法人の役員が「業務上過失致傷の罪」(刑法211条1項)で罰金刑に処されても,その法人は欠格要件には該当せず,その法人は免許を受けることができます。
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ウ | F社――その取締役Gが,3年前に詐欺の罪により懲役1年の刑に処せられた。 |
【正解:免許を受けることはできない】 ◆禁錮以上の刑に処せられ,その刑の執行を終えてから5年を経過しないもの 法人の役員が罪名を問わず禁錮以上の刑に処せられたときは,その刑の執行を終わり,または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しないとその法人は免許を受けることはできません(宅建業法5条1項3号,同7号)。
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エ |
H社――その取締役 I が,横領の罪により懲役1年,執行猶予2年の刑に処せられ,執行猶予期間が満了してから1年を経過した。 |
【正解:免許を受けることができる】 ◆執行猶予期間の満了 法人の役員が欠格要件に該当する刑罰を受け執行猶予期間中であるときは,その法人は欠格要件に該当し,免許を受けることはできません(宅建業法5条1項3号,同3号の2,同7号)。 しかし,執行猶予期間が満了すれば,刑の言い渡しの効力が失われ,刑を受けなかったことになるので(刑法27条), I は免許の欠格要件に該当しないことになるとともに,H社も免許の欠格要件に該当しないものとなります。 したがって,H社は免許を受けることができます。
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