宅建業法 実戦篇
自ら売主の制限の過去問アーカイブス 平成6年・問44
自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限・広告開始時期の制限・
重要事項の説明・手付金等の保全措置
宅地建物取引業者Aが自ら売主となって造成工事完了前の宅地を買主Bに分譲する契約(価額5,000万円,手付金1,000万円)を平成6年10月1日締結した場合に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定に違反するものは,どれか。(平成6年・問44) |
1.「Aが当該宅地の所有権を所有権者Cから停止条件付きで取得する契約を同年5月1日締結したが,同年10月1日現在その条件が未だ成就されていない場合において,Bが宅地建物取引業者であるとき。」 |
2.「Aが当該宅地の開発許可を同年9月1日取得し,同年9月10日その分譲のパンフレットをBに郵送した場合において,Bが宅地建物取引業者でないとき。」 |
3.「Aが同年9月25日重要事項説明を行った際,造成工事完了時の当該宅地の形状・構造を説明したが,当該宅地に接する道路の構造・幅員を説明をしなかった場合において,Bが宅地建物取引業者であるとき。」 |
4.「Aが同年10月1日手付金を受領する際,手付金等の保全措置を講じなかった場合において,Bが宅地建物取引業者であるとき。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
違反しない | 違反しない | 違反する | 違反しない |
1.「Aが当該宅地の所有権を所有権者Cから停止条件付きで取得する契約を同年5月1日締結したが,同年10月1日現在その条件が未だ成就されていない場合において,Bが宅地建物取引業者であるとき。」 |
【正解:違反しない】 ◆自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限 (他人物) 5/1 停止条件成就せず 10/1 停止条件付 宅建業者と契約締結 当該宅地又は建物を取得する契約(予約を含み、その効力の発生が条件に係るものを除く。)を締結しているときでなければ,宅建業者は自ら売主として,宅建業者でない者と,自己の所有に属しない宅地建物について,売買契約を締結することはできません(宅建業法・33条の2第1号)。 停止条件が成就していない場合は,宅建業者でない者と売買契約を締結することはできないはずです。 しかし,この規定は宅建業者間の取引には適用されず,本肢の買主は宅建業者なので,停止条件が成就していなくても,本肢の場合は宅建業法には違反しません(宅建業法・78条2項)。 |
2.「Aが当該宅地の開発許可を同年9月1日取得し,同年9月10日その分譲のパンフレットをBに郵送した場合において,Bが宅地建物取引業者でないとき。」 |
【正解:違反しない】 ◆広告開始時期の制限 9/1 9/10 10/1 開発許可 広告郵送 宅建業者でない者と契約締結 宅建業者は,工事完了前は,当該工事に必要とされる開発許可等の処分があった後でなければ,宅地建物の売買,売買の媒介・代理,貸借の媒介・代理に関する広告をすることはできません(宅建業法・33条)。 本肢では,開発許可のあった後に,宅地の分譲のパンフレットを郵送しているので,宅建業法には違反しません。 ▼広告開始時期の制限や売買契約の締結時期の制限は,宅建業者間相互の取引でも適用されるので,注意してください。 |
3.「Aが同年9月25日重要事項説明を行った際,造成工事完了時の当該宅地の形状・構造を説明したが,当該宅地に接する道路の構造・幅員を説明をしなかった場合において,Bが宅地建物取引業者であるとき。」 |
【正解:違反する】 ◆重要事項説明 9/25 10/1 重要事項説明 宅建業者と契約締結 35条の重要事項として,<造成工事完了時の当該宅地の形状・構造>を説明しなければなりませんが〔図面が必要なときは図面も交付する〕,工事完了前の宅地では,<当該宅地に接する道路の構造・幅員>も説明しなければなりません(宅建業法・35条1項5号,施行規則16条)。 宅建業者相互間の取引では,自ら売主の8種制限の規定は適用されませんが,それ以外の規定は適用され,35条の重要事項も宅建業法に定められたものを,35条書面を交付して説明しなければなりません。 本肢は,説明すべきものを説明していないので,宅建業法に違反します。 |
4.「Aが同年10月1日手付金を受領する際,手付金等の保全措置を講じなかった場合において,Bが宅地建物取引業者であるとき。」 |
【正解:違反しない】 ◆手付金等保全措置 宅建業者は自ら売主として,宅建業者でない者と売買契約を締結する際に,手付金等保全措置が必要なのに講じなかった場合は,宅建業法に違反します(宅建業法・41条,41条の2)。 しかし,本肢では,宅建業者間相互の取引なので,この規定は適用されず,宅建業法に違反することはありません(宅建業法・78条2項)。
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