宅建業法 実戦篇
宅建業者の過去問アーカイブス 平成7年・問44
免許権者と事務所・案内所での標識・従業者名簿の閲覧・免許換え
次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成7年・問44) |
1.「甲県知事の免許を受けている宅地建物取引業者Aが,自己の所有する建物を不特定多数の者に賃貸するため,新たに乙県内に事務所を設けることとなった場合,Aは,国土交通大臣の免許を申請しなければならない。」 |
2.「甲県知事の免許を受けている宅地建物取引業者Bが,区分所有建物一棟(20戸)を分譲するために,案内のみを行う現地案内所を開設した場合,Bは,当該案内所に宅地建物取引業者の標識を掲げる必要はない。」 |
3.「宅地建物取引業者Cが本店及び支店の全ての従業者に従業者証明書を携帯させている場合,Cは,本店以外の事務所に従業者名簿を備え,取引の関係者に閲覧させる必要はない。」 |
4.「甲県に本店,乙県に支店を有して宅地建物取引業を営むDが,甲県の本店のみで宅地建物取引業を営むこととなった場合,Dは,甲県知事に直接,免許換えの申請をする必要があるが,乙県知事に廃業の届出をする必要はない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「甲県知事の免許を受けている宅地建物取引業者Aが,自己の所有する建物を不特定多数の者に賃貸するため,新たに乙県内に事務所を設けることとなった場合,Aは,国土交通大臣の免許を申請しなければならない。」 |
【正解:×】 ◆事務所の定義 賃貸業に関する事務所は宅建業法での事務所ではないので,宅建業者Aが乙県内に設ける事務所は,宅建業法上『従たる事務所』には該当しません(宅建業法・3条1項,2条2号・3号)。 したがって,Aは,国土交通大臣への免許換えを申請する必要がないので,本肢は誤りです。
〔ケーススタディ〕 免許権者の違いに注意!!
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●事務所について |
(免許) 宅建業法・第3条1項 宅地建物取引業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に事務所(本店、支店その他の政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置してその事業を営もうとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない。 |
(法第3条第1項 の事務所) 施行令・第1条の2 法第三条第一項 の事務所は、次に掲げるものとする。 一 本店又は支店(商人以外の者にあつては、主たる事務所又は従たる事務所) 二 前号に掲げるもののほか、継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの |
宅地建物取引業法の解釈と運用の考え方・第3条第1項関係 1 令第1条の2第1号に規定する「事務所」について 本号に規定する「事務所」とは、商業登記簿等に登載されたもので、継続的に宅地建物取引業者の営業の拠点となる施設としての実体を有するものが該当し、宅地建物取引業を営まない支店は該当しないものとする。 なお、登記していない個人にあっては、当該事業者の営業の本拠が本店に該当するものとする。 2 令第1条の2第2号に規定する「事務所」について (1) 「継続的に業務を行なうことができる施設」について 宅地建物取引業者の営業活動の場所として、継続的に使用することができるもので、社会通念上事務所として認識される程度の形態を備えたものとする。 (2) 「契約を締結する権限を有する使用人」について 原則として、「継続的に業務を行なうことができる施設」の代表者等が該当し、取引の相手方に対して契約締結権限を行使(自らの名において契約を締結するか否かを問わない。)する者も該当するものとする。 |
2.「甲県知事の免許を受けている宅地建物取引業者Bが,区分所有建物一棟(20戸)を分譲するために,案内のみを行う現地案内所を開設した場合,Bは,当該案内所に宅地建物取引業者の標識を掲げる必要はない。」 |
【正解:×】 ◆案内所での標識 宅建業者が一団の宅地又は建物を分譲するために開設した案内所は,契約行為等を行うか否かに係らず,標識を掲げなければなりません(宅建業法・50条1項,施行規則19条1項3号)。つまり,案内のみを行う案内所でも,標識を掲げる必要があるので,本肢は誤りです。
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3.「宅地建物取引業者Cが本店及び支店の全ての従業者に従業者証明書を携帯させている場合,Cは,本店以外の事務所に従業者名簿を備え,取引の関係者に閲覧させる必要はない。」 |
【正解:×】 ◆従業者名簿の閲覧 宅建業者は,従業者に従業者証明書を携帯させなければ業務に従事させてはならず,また,その事務所ごとに,従業者名簿を備えなければなりません(宅建業法・48条1項,3項)。 宅建業者は,取引の関係者から請求があったときは閲覧させなければならないので(宅建業法・48条4項),本肢は誤りです。
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●従業者証明書・従業者名簿 |
(証明書の携帯等) 第48条 宅地建物取引業者は、国土交通省令の定めるところにより、従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、その者をその業務に従事させてはならない。 2 従業者は、取引の関係者の請求があつたときは、前項の証明書を提示しなければならない。 3 宅地建物取引業者は、国土交通省令で定めるところにより、その事務所ごとに、従業者名簿を備え、従業者の氏名、住所、第一項の証明書の番号その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならない。 4 宅地建物取引業者は、取引の関係者から請求があつたときは、前項の従業者名簿をその者の閲覧に供しなければならない。 |
4.「甲県に本店,乙県に支店を有して宅地建物取引業を営むDが,甲県の本店のみで宅地建物取引業を営むこととなった場合,Dは,甲県知事に直接,免許換えの申請をする必要があるが,乙県知事に廃業の届出をする必要はない。」 |
【正解:○】類・平成10年・問33・肢1, ◆免許換えで廃業の届出の規定はない
免許換えをするときに,それまでの免許権者や従たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事に廃業の届出をしなければならないという規定はありません。 Dは,国土交通大臣免許業者から,甲県知事免許業者になるだけの話なので,宅建業を廃止するわけではないからです。 |
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