宅建業法 実戦篇
宅建業者の過去問アーカイブス 平成9年・問33
免許権者・合併による消滅・案内所等の設置・欠格要件(法人の役員)
宅地建物取引業者A (法人) が甲県知事から免許を受けている場合に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。 (平成9年・問33) |
1.「Aが,乙県内で建設業を営んでいる法人B (事務所数1) を吸収合併して,Bの事務所をAの支店とし,そこで建設業のみを営む場合,Aは,国土交通大臣へ免許換えの申請をする必要はない。」 |
2.「Aが合併により消滅した場合,Aの代表役員であった者は甲県知事にその旨の届出をしなければならないが,Aの免許は,当該届出の時にその効力を失う。」 |
3.「Aが,乙県内で一団の宅地建物の分譲を行うため案内所を設置した場合,Aは,国土交通大臣へ免許換えの申請をする必要がある。」 |
4.「Aの役員の1人が,刑法第209条 (過失傷害) の罪により3年前に罰金の刑に処せられ,罰金を納付していることが判明した場合,甲県知事は,Aの免許を取り消さなければならない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
1.「Aが,乙県内で建設業を営んでいる法人B (事務所数1) を吸収合併して,Bの事務所をAの支店とし,そこで建設業のみを営む場合,Aは,国土交通大臣へ免許換えの申請をする必要はない。」 |
【正解:○】 ◆建設業のみを行う支店は,宅建業の事務所に該当しない−事務所の定義 建設業に関する事務所は宅建業法での事務所ではないので,宅建業者Aが乙県内の建設業者を吸収合併して建設業のみを営む支店としても,宅建業法上『従たる事務所』には該当しません(宅建業法・3条1項,2条2号・3号)。 したがって,Aは,国土交通大臣への免許換えを申請する必要はありません。
〔ケーススタディ〕 免許権者の違いに注意!!
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●事務所について |
(免許) 宅建業法・第3条1項 宅地建物取引業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に事務所(本店、支店その他の政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置してその事業を営もうとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない。 |
(法第3条第1項 の事務所) 施行令・第1条の2 法第三条第一項 の事務所は、次に掲げるものとする。 一 本店又は支店(商人以外の者にあつては、主たる事務所又は従たる事務所) 二 前号に掲げるもののほか、継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの |
宅地建物取引業法の解釈と運用の考え方・第3条第1項関係 1 令第1条の2第1号に規定する「事務所」について 本号に規定する「事務所」とは、商業登記簿等に登載されたもので、継続的に宅地建物取引業者の営業の拠点となる施設としての実体を有するものが該当し、宅地建物取引業を営まない支店は該当しないものとする。 なお、登記していない個人にあっては、当該事業者の営業の本拠が本店に該当するものとする。 2 令第1条の2第2号に規定する「事務所」について (1) 「継続的に業務を行なうことができる施設」について 宅地建物取引業者の営業活動の場所として、継続的に使用することができるもので、社会通念上事務所として認識される程度の形態を備えたものとする。 (2) 「契約を締結する権限を有する使用人」について 原則として、「継続的に業務を行なうことができる施設」の代表者等が該当し、取引の相手方に対して契約締結権限を行使(自らの名において契約を締結するか否かを問わない。)する者も該当するものとする。 |
2.「Aが合併により消滅した場合,Aの代表役員であった者は甲県知事にその旨の届出をしなければならないが,Aの免許は,当該届出の時にその効力を失う。」 |
【正解:×】 以下の三つの場合は,届出により免許は効力を失います(宅建業法・11条2項)。⇒ 破産・解散・廃止
しかし,合併により消滅した場合は,免許は,合併により消滅したときに効力を失うので,本肢は誤りです。
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3.「Aが,乙県内で一団の宅地建物の分譲を行うため案内所を設置した場合,Aは,国土交通大臣へ免許換えの申請をする必要がある。」 |
【正解:×】 ◆他の都道府県内に案内所の設置をするのに,国土交通大臣への免許換えは必要ない 宅建業者は,都道府県知事免許のままでも,他の都道府県で,宅建業法での事務所を設置することなく,業務を行うことができます。 したがって,一団の宅地建物の分譲を行うため他の都道府県内に案内所を設置するときでも,契約行為を行うか否かに係らず,国土交通大臣へ免許換えの申請をする必要はありません。 ▼ただし,一団の宅地建物の分譲を行うため他の都道府県内に案内所を設置するときは,免許権者とともに,その案内所の地域を管轄する都道府県知事に50条2項の届出をしなければなりません。(国土交通大臣免許業者の場合は,案内所の地域を管轄する都道府県知事を経由して国土交通大臣に届け出る。) |
4.「Aの役員の1人が,刑法第209条 (過失傷害) の罪により3年前に罰金の刑に処せられ,罰金を納付していることが判明した場合,甲県知事は,Aの免許を取り消さなければならない。」 |
【正解:×】 ◆過失傷害−欠格要件には該当しない 法人の役員が傷害罪(刑法204条)で罰金刑に処せられたときは,その刑の執行を終わり,または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しないとその法人は免許を受けることはできません(宅建業法5条1項3号の2,同7号)。 もし,宅建業を営む法人の役員が傷害罪(刑法204条)で罰金刑に処せられたときは,免許の欠格要件に該当することになるので,免許権者はその法人の免許を取り消さなければなりません(宅建業法66条1項3号,5条1項3号の2)。 しかし,法人の役員が「過失傷害の罪」(刑法209条)で罰金刑に処されても,その法人は欠格要件には該当しないので,本肢は誤りです。
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●刑法209条 過失傷害 |
(過失傷害) 第209条 過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。 2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 |
●罰金刑で欠格要件になるもの | |
免許を申請する法人の<役員や政令で定める使用人>の中に,
がいる場合, その法人は欠格要件に該当し,国土交通大臣又は都道府県知事はその法人に免許をしてはいけません。(宅建業法・5条1項3号の2,7号) |
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