宅建業法 実戦篇

自ら売主の制限の過去問アーカイブス 平成9年・問41 瑕疵担保責任の特約の制限


宅地建物取引業者が,自ら売主として,宅地建物取引業者でないと建物の売買契約を締結した場合の瑕疵担保責任 (以下この問において単に「担保責任」という) に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法及び民法の規定によれば,正しいものはどれか。なお,建物の引渡しの日は,契約締結の日の1月後とする。 (平成9年・問41)

1.「『が担保責任を負う期間は建物の引渡しの日から2年間とし,は,その期間内に,契約を解除することはできないが,損害賠償を請求することができる』 旨の特約は無効である。」

2.「『建物に隠れた瑕疵があった場合でも,その瑕疵がの責めに帰すものでないとき,は担保責任を負わない」』旨の特約は有効である。」

3.「『が担保責任を負う期間は契約締結の日から2年間とし,は,その期間内に瑕疵修補請求権も行使できる」』旨の特約は有効である。」

4.「『が担保責任を負う期間は建物の引渡しの日から1年間とする』旨の特約は無効であり,は,引渡しの日から2年間担保責任を負う。」

【正解】

× × ×

 善意無過失の買主は何ができるか  損害賠償の請求,
 契約の目的が達成できないときは,契約の解除
 売主の帰責事由  売主の無過失責任

 (売主は過失がなくても担保責任を負う。)

 売主が担保責任を負う期間  引渡しから2年以上とする特約をすることができる。

 (これより買主に不利な特約は無効で,
 その場合は買主が知ってから1年以内になる。)

1.「『が担保責任を負う期間は建物の引渡しの日から2年間とし,は,その期間内に,契約を解除することはできないが,損害賠償を請求することができる』 旨の特約は無効である。」

【正解:

◆損害賠償請求と契約解除

●本肢での特約
1) 担保責任を負う期間は建物の引渡しの日から2年間。

2) 買主は,瑕疵担保責任を追及する権利行使期間内に,契約を解除することはできないが,損害賠償を請求することができる。

 1) は,宅建業法では,権利行使期間を引渡しの日から2年以上とする特約をすることができるのでいいのですが,2) が正誤判定のポイントになります。

 民法では,買主は瑕疵について善意無過失ならば,損害賠償の請求をすることができ,かつ,瑕疵のために契約の目的を達成できないときは契約の解除をすることができるとしています(民法570条,566条1項)

 民法では,瑕疵担保責任は任意規定のため,当事者間で民法の規定と異なる特約をすることができるはずですが,宅建業法では,一般の消費者〔宅建業者ではない買主〕を保護するため,宅建業者が自ら売主で,宅建業者ではない者が買主となる場合は,民法の瑕疵担保責任の規定よりも買主に不利な特約は無効としました(宅建業法40条1項,2項)→ただし,権利行使期間を引渡しの日から2年以上とする特約については例外的に認められています。

 したがって,本肢の<買主は損害賠償を請求することはできても,契約の解除をすることはできない>という特約は,民法の規定よりも買主に不利な特約なため,無効になります。

●瑕疵担保責任の特約の制限
 民法の規定よりも買主に不利な特約をすることができるのは,<権利行使期間を引渡しの日から2年以上とする特約>だけ。

2.「『建物に隠れた瑕疵があった場合でも,その瑕疵がの責めに帰すものでないとき,は担保責任を負わない」』旨の特約は有効である。」

【正解:×
◆瑕疵担保責任は,売主の無過失責任

 民法では,瑕疵担保責任は売主の無過失責任とされています〔売主に帰責事由がなくても,買主は瑕疵担保責任を追及できる。〕。また,宅建業法40条では,民法の規定よりも買主に不利な特約をすることはできず,無効です。

 したがって,本肢の<瑕疵が売主の責めに帰すものでないとき,は担保責任を負わない>旨の特約は無効です。

3.「『が担保責任を負う期間は契約締結の日から2年間とし,は,その期間内に瑕疵修補請求権も行使できる」』旨の特約は有効である。」

【正解:×

◆担保責任を負う期間

    売買契約を締結      引渡し
 ――――――――――――――――――――――――――――――→
                   契約締結から1ヵ月後

 2年間に惑わされてはいけません。担保責任を負う期間の起点に着目してください。

 <担保責任を負う期間を契約締結の日から2年間とする特約>は,引渡しの日より2年に満たないことになるので無効です。→ 引渡しから2年以上であれば有効。

 この場合,民法の原則に立ち返り,売主が担保責任を負う期間は<買主が瑕疵の事実を知ったときから1年以内>になります。

瑕疵修補請求権の行使については民法では明文化されていません。

4.「『が担保責任を負う期間は建物の引渡しの日から1年間とする』旨の特約は無効であり,は,引渡しの日から2年間担保責任を負う。」

【正解:×

◆担保責任を負う期間

 本肢では,担保責任を負う期間に着目してください。

 『が担保責任を負う期間は建物の引渡しの日から1年間とする』旨の特約は,引渡しの日より2年に満たないので無効です。→ 引渡しから2年以上であれば有効。

 この場合,民法の原則に立ち返り,売主が担保責任を負う期間は<買主が瑕疵の事実を知ったときから1年以内>になります。

▼民法の<買主が知ったときから1年以内>が適用された場合

 瑕疵担保責任による損害賠償請求権は10年の消滅時効にかかりますが,判例では,売買の目的物の引渡し時点から進行するとしています(最高裁・平成13.11.27)

 → 瑕疵担保責任による損害賠償請求権は引渡しから10年経過すると,消滅時効の規定が適用される(民法167条1項)


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