宅建業法 実戦篇

宅建業者の過去問アーカイブス 昭和60年・問38 

免許を受けている県以外の業務・株式会社の設立・変更の届出(所在地)・
破産手続開始の決定の届出


宅地建物取引業法上の届出に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和60年・問38)

1.「県知事の免許を受けている宅地建物取引業者が,県内に事務所や案内所等を設置することなく県の区域内で業務を行おうとする場合は,あらかじめその旨を国土交通大臣に届け出なければならない。」修正

2.「県知事の免許を受けている個人の宅地建物取引業者が,従前と同一事務所で宅地建物取引業を営む目的で株式会社を設立し,がその代表取締役となって業務を行う場合は,その旨を県知事に届け出なければならない。」

3.「県知事の免許を受けている宅地建物取引業者が,その事務所の所在地を変更しようとするときは,その30日前に,その旨を県知事に届け出なければならない。」

4.「県知事の免許を受けた宅地建物取引業者について破産手続開始の決定があった場合は,その破産管財人は,その日から30日以内に,その旨を県知事に届け出なければならない。」

【正解】

× × ×

1.「県知事の免許を受けている宅地建物取引業者が,県内に事務所や案内所等を設置することなく県の区域内で業務を行おうとする場合は,あらかじめその旨を国土交通大臣に届け出なければならない。」

【正解:×

◆他の都道府県の区域内で業務を行う

 都道府県知事の免許を受けている宅建業者が,他の都道府県の区域内で,事務所を設置して業務を行うには,国土交通大臣の免許に免許換えしなければなりませんが,

 他の都道府県の区域内で,事務所を設置することなく業務を行う場合には,国土交通大臣への免許換えは必要ではありません。

 ただし,他の都道府県の区域内で,案内所等 (註)を設置して行う場合は,業務を開始する10日前までに,免許権者である都道府県知事,その案内所等の所在地を管轄する都道府県を管轄する都道府県知事の双方に,直接届出をしなければいけません。

(註)案内所等・・・(一団の宅地建物の分譲,又はその媒介・代理を案内所を設置して,契約の締結や買受の申込を受ける場合の) 案内所や展示会場等 ⇒ 国土交通省令で定める事務所以外の場所

知事免許業者が他の都道府県の区域内で業務を行う

事務所を設置して業務を行う  国土交通大臣への免許換えをしなければならない。
事務所を

設置しない

案内所等を
設置して
業務を行う。
 50条2項の届出をしなければならない。
案内所等を
設置しない
業務を行う。
 50条2項の届出は必要ではない。

念のため

 契約行為等を行う案内所等は,免許を受けている都道府県の区域内で設置する場合にも届出が必要で,免許を受けていない知事の管轄する他の都道府県に設置する場合にのみ,50条2項の届出が必要なわけではない。

 KEY  

 案内所等の届出 (50条2項)

 知事免許の業者 案内所等の所在地を管轄する知事
             免許権者の知事双方に,直接届け出る

 国土交通大臣免許業者  案内所等を管轄する知事と,
                 その知事を経由して,国土交通大臣に届け出る
                  ↓
 罰則 50万円以下の罰金 (両罰規定) 

●原題
1.「県知事の免許を受けている宅地建物取引業者が,県内に事務所を設置することなく県の区域内で業務を行おうとする場合は,あらかじめその旨を建設大臣に届け出なければならない。」
【正解:×】事務所を設置することなく,免許を得ている都道府県以外の区域内で,営業活動をする場合は,契約の締結や買受の申込を受ける案内所等を設置するかどうかで,上記のように50条2項の届出を要するか要しないかの2つに分かれる。原題では,その場合分けの輪郭がボケているので,鮮明にさせるため上記では改題した。

2.「県知事の免許を受けている個人の宅地建物取引業者が,従前と同一事務所で宅地建物取引業を営む目的で株式会社を設立し,がその代表取締役となって業務を行う場合は,その旨を県知事に届け出なければならない。」

【正解:×

◆個人業者が法人として宅建業を行う ⇒ 法人としての免許が必要

 法人が宅建業の業務を行うには,その法人は宅建業の免許を受けなければならない。

 個人業者・法人業者は別扱いになっています。<個人業者が代表取締役となる法人>が宅建業を営もうとする場合,個人業者の免許とは別に改めて,法人業者としての免許を受けなければなりません。届出ですむ話ではありません。

3.「県知事の免許を受けている宅地建物取引業者が,その事務所の所在地を変更しようとするときは,その30日前に,その旨を県知事に届け出なければならない。」

【正解:×

◆変更の届出

 事務所の変更の届出は,30日前ではなく,変更後30日以内なので,誤りです。

 事務所の所在地が変更になったときは,30日以内に,免許権者に,その旨の届出をしなければいけません(宅建業法・9条,8条2項5号)

 KEY 

 変更後,30日以内に届出

届出をしなかったり,虚偽の届出をすると
 罰則 50万円以下の罰金 (両罰規定) 

●変更の届出 をしなければならないもの
・商号又は名称
・<法人である場合>その役員の氏名,政令で定める使用人があるときは,その者の氏名
・<個人である場合>その者の氏名,政令で定める使用人があるときは,その者の氏名
・事務所の名称及び所在地
・事務所ごとに置かれる専任の宅地建物取引主任者の氏名

4.「県知事の免許を受けた宅地建物取引業者について破産手続開始の決定があった場合は,その破産管財人は,その日から30日以内に,その旨を県知事に届け出なければならない。」

【正解:

◆破産手続開始の決定

 宅建業者について破産手続き開始の決定があったときは,その日から30日以内に,破産管財人がその旨の届出をしなければなりません(宅建業法・11条1項3号)

破産手続開始の決定 (宅建業法・11条1項3号,21条2号)

   いつ届け出るか  誰が届け出るか
 宅建業者  その日から30日以内  その破産管財人
 取引主任者  その日から30日以内  本人

宅建業者の廃業等の届出 (宅建業法・11条)

   いつ届け出るか  届け出る人
 死亡した  事実を知った日から
 30日以内
 その相続人
 法人が合併により消滅  その日から30日以内  その法人を代表する役員
 であった者
 破産手続開始の決定があった  その破産管財人
 法人が合併・破産以外の理由で

 解散

 その清算人
 宅建業を廃止した  宅建業者であった個人

 法人を代表する役員

の届出があったとき,免許はその効力を失う。この届出がなくても,その事実が判明したとき
は,免許権者は免許を取り消さなければならない。

取引主任者の死亡等の届出 (宅建業法・21条)

   いつ届け出るか  届け出る人
 死亡した  事実を知った日から30日以内  その相続人
 成年被後見人になった
 被保佐人になった
 その日から30日以内  その後見人
 その保佐人
 営業に関して成年者と
 同一の能力を有しなくなる
 本人
 破産手続開始の決定があった
 業者の免許を取り消された
 禁錮以上の刑に処せられた
 宅建業法違反・傷害等の罪で
 罰金刑に処せられた

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